📿￤28歳の誕生日に、平賀源内と安田顕さんを想う

こんにちは、2月にも半分が過ぎましたね。はなです。
僭越ながら、本日、誕生日を迎えました。28歳です。歳を重ねることに、特に抵抗はないのですが、「28歳」というのはわたしにとって大切な数字です。
以前のnoteで恋人が別れた当てつけに自死をしたと触れたことがありました。もう9年も前の話です。
当時わたしは19歳でした。そして、その恋人が亡くなった歳が「28歳」のことだったのです。
9年かけて嫌な気持ちに蓋をしてきましたし、一時期はそれを笑い話に昇華していたこともありました。時折、恋人が吸っていた「ウィンストン・キャスター・ホワイト・5」を吸い、思い出にふけっていたことも。

今日は「平賀源内」について書きたいと思う。
本当は「宍戸岩男」について書いていたのだが、あまりにも思想が強い記事になってしまったので、お蔵入りにしようかと思っている。

わたしは、「平賀源内」という男が好きだ。

本草学者であり　蘭学者であり浄瑠璃作家であり戯作者でありの 希代の才人と名高い　平賀源内大先生…。

べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～（２）吉原細見『嗚呼（ああ）御江戸』より　
-厠の男（演：安田顕さん）

これほどまでに、「何でも屋」という言葉が似合う男はいるのだろうか。
ちなみに、平賀源内に関して調べると「本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家」らしい、この肩書の長さに、わたしは「チーム・バチスタシリーズ」の「白鳥圭輔（演：仲村トオルさん）」の肩書きを連想した。

「厠の男」から発せられたこの言葉にわたしは「平賀源内」という男についてもっと知りたいと思った。

作中の「平賀源内」は安永6年（1777年）あたり、つまり彼が、49歳のときと推察される。
これは、第6話にて、徳川家重の17回忌が来年行われるというところから推察した。この情報は、NHK2025年大河ドラマ『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜』完全読本の137ページに記載されている。

そして、もし仮にそれが当たっていたとすれば、瀬川菊之丞が亡くなって4年後のことなので、彼は想い人が亡くなった直後も絶やすことなく商売を続けていたのである。
それがどんなに酷なことであるか、わたしはよく分かる。4年という月日が経過しても、なかなか受け入れられないものがある。
当時の自分は、新しいことに挑戦することで、喪失感を紛らわせようとしていた。
確かに、「平賀源内」は当時のわたしより遥かに年上だし、尚且つ、わたしとは違う人間だ。しかし、想い人を亡くすというのは計り知れない悲しみがあったであろう。

安田顕さんは、そんな「平賀源内」を見事に演じきっている。第2話で花の井（演：小芝風花さん）が瀬川菊之丞に扮し、舞を踊るシーンで、彼は煙管を加えながら、さみしげな瞳で見つめるのだ。目頭を熱くし、涙をいっぱいに浮かべる。

その瞬間、わたしの心はチクリと痛み、同時にドキリとした。

「平賀源内」は有名な男色である。男の人しか愛せない。
現代ではジェンダーレスへの理解が深まりつつある。一方、江戸時代の男色文化は確立していたが、個人の恋愛観には複雑な事情が絡んでいただろう。
彼は飄々と自分自身の性的指向を発するだろう、それが誰かに受け入れられなくとも。
それを理解してくれて恋仲になっていた瀬川菊之丞のことをどれだけ愛していたか。現代においても、江戸時代においても、同性愛というものは中々お相手も見つからなければ理解者も見つからない。
ただ、想い人が亡くなっただけではない、きっと彼にとっては、同時に理解者も亡くしているのだ。

それを理解したとき、わたしはどうにもならない気持ちを抱えた。
うまく言葉に表せないのが、もどかしいが、「想い人」「理解者」が亡くなっても、商いに身を投じていた「平賀源内」という男のことをもっと理解したくなった。

「平賀源内」という男は「早すぎた偉人」と称賛される反面「大山師（大うつけの馬鹿野郎）」と嘲罵されていた。評価が真っ二つに割れている。

「早すぎた偉人」という点に重きを置いてみようと思う。この評価を知り、わたしはある人のことを思い出す。
それはスペインの建築家、アントニオ・ガウディだ。ガウディは今もなお建築作業が進められているサグラダ・ファミリアの建設に関わった人だ。

彼の作品の中に、グエル公園というものがある。
グエル公園はもともと、グエル伯爵とガウディの夢が詰まった分譲住宅の予定で建設が進められていた。
彼らの夢は「人々が自然と芸術に囲まれて暮らせる新しい住宅街をつくる」というものだった。
しかし、完成してみたものの、あまりにもデザインが奇抜すぎて、買い手がつかず、グエル伯爵とガウディの二人しか住んでいなかった。
今は、観光地となっている。気になった方はぜひ画像検索をしてみてほしい。モザイクアートで作られたトカゲの噴水がとてもかわいい。

わたしはガウディの生涯を知ったとき、彼と平賀源内には通じるものがあると感じた。
彼ら二人の共通点は「あまりにも突飛なことをして、周りから受け入れられず、没後評価される」というもの。
わたしは、中学生の時にガウディを知り、彼の芸術性に惚れたと同時に人生観についても学んだ。それが時を経て、平賀源内にも同じ想いを馳せていることを。とても嬉しく思うのだ。

安田顕さんは、平賀源内を演じるにあたり、香川県さぬき市にある平賀源内記念館を見学したとインタビューで仰っていた。
わたしは安田顕さんを好きになってまだ間もないのだが、彼の好きなところに「役に対して、熱心に取り組み、その方の人生まで調べ尽くす」がある。

心が女の人の役をしたときには、「月のものが来ないことが悔しい」「剃るのが習慣になってクランクアップしたあとでも剃ろうとしてしまった」と…ここまで熱心に取り組める人にわたしは初めて出会ったし、同時に尊敬の念を持った。

安田顕さんは、役を、そのキャラクターの人生を演じる役者だと思っている。
それ故に、菊之丞が亡くなって4年の月日が経過した「べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～」の世界であそこまで哀愁漂う演技をしてくれたことが本当に嬉しく、自身も救われたと思った。
安田顕さん自体が本当に恋人を亡くされた経験があるのかと思わせるほどに、その演技に身震いをした。

恋人を亡くすということは、人生が本当に変わってしまうというもの。
わたしは、死生観も、人生も何もかもが変わってしまった。
9年。長い旅路にようやくピリオドが打てそうな気がする。
まさか、自分が安田顕さんの演技の一つで9年の旅路を終えることができるだなんて思ってもみなかった。

平賀源内のセリフで好きなものが2つある。

親とか生まれとか家、義理人情。 けど、そんなものは顧みずに 自らの思いに由ってのみ 「我が心まま」に生きる。 我儘に生きることを 自由に生きるっつうのよ。 我儘を通してんだから、きついのはしかたねえや。

べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～（５）「蔦（つた）に唐丸因果の蔓（つる）」
-平賀源内（演：安田顕さん）

このセリフに関しては安田顕さん本人も言及されていて、みんなの心に響いたであろう。
まだ5話しか放送されていないのに、すでに名言の宝庫だ。これが本当に嬉しい。
わたしは、特に「我儘を通してんだから、きついのはしかたねえや」という一節が本当に大好きなのである。
わたしは好きなことでご飯を食べている。それ故の苦悩や辛いこともあるけれど、源内先生のように「きついのは仕方がない」と割り切って生きていきたいと思った。

いや、人の値打ちだって、そうですよ。 「俺ぁ先祖が偉いんだ」って まくしたてたって、通じませんし。通じたとこで「はあ　それで？」 ってな話でしょう。 やつらが相手にしてくれる、そんな値打ちがあるのは、話ができるやつです。 由緒ってのは、屁みたいなもんだって、分かりまさね。

べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～（５）「蔦（つた）に唐丸因果の蔓（つる）」
-平賀源内（演：安田顕さん）

これも第5話のセリフである。田沼意次（演：渡辺謙さん）との対話のシーン。
家柄やそんなの関係なしに、人の値打ちが決まる。人柄というのは対話をするうえでとても大切なものなのだと感銘を受けた。
わたしは常日頃から「推しが素敵な人間なのだから、自分も素敵な人間でありたい」と強く願っている。
安田顕さんが優しい人であり、慈愛に満ち。物腰も柔らかく、とても丁寧な人で思慮深い…そんな人でいてくれるからこそ、自分自身も素敵な人間でありたいと思う。

平賀源内が亡くなるまで、あと3年。彼の死に関しては諸説が多い。「べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～」の世界でどのように表現されるのか、また安田顕さんがどのように演じるのか今から楽しみなのである。

さて、わたしは今日「man-hole」を鑑賞しようと思う。安田顕さんが28歳の時に初主演映画として参加した作品だ。28歳の安田顕さんが、どのように「小林正義」を初主演として演じるのか、また51歳の安田顕さんが「平賀源内」として魅せる新たな世界を。

その変遷を心に焼き付けながら、彼と作品を味わい、愛したい。