松の視線
今月の23日から24日かけて、
所用があって急遽、一泊で福島に行ってきました。
1年ぶりに訪れた相馬駅前は閑散としていて、
クリスマス・イブの喧騒から遠く離れています。
寒さを覚悟していましたが、それほどでもありませんでした。
用事オンリーだったので、
23日の夜、ビジネスホテルに一泊して、
翌日必要なことを済ませると、すぐ帰りの電車の時間になるというスケジュールでした。
行きたいところにも行けず、会いたい人の誰にも会えない、
とても静かな一泊旅行でした。
帰りの電車に乗るために、駅前で時間調整をしました。
車も人通りも少なく、とても静か。横浜とはたいした違いです。
駅の改札の前に、松の木があります。
駅舎から道路側に向って斜めに生えている、
樹齢100年くらいでしょうか。
震災を経て生きている老木です。
こんなに静かでいいんだろうか、などと思いながら、
青々とした葉の下に立ってぼんやりしていると、
始まりはいつも静かである。
何も起こっていないように感じられるときこそ、
始動のときなのだ。
と、心中に湧いてきました。
視線を感じて見上げると、松の葉が揺れています。
中心に、茶色い果実が、
きらりと光った目のように見えます。
視線を合わせると、
水面下で起こっていることに、焦点を合わせよ
と再び、心の中に聞こえてきました。