オーストラリア2400km自転車旅27日目🚴♂️
27日目「ナナコ」
今日も仕事。
今日は添木を抜き取って行く作業。これが土の中にがっちり刺さってるもので、けっこう力がいる。
俺はずぼらな性格だから、抜かずに折っちゃえばいいやと。その方が力もいらず俄然早い。
そうしてボキボキボキボキ折り始めた。
ボスのテンは朝少し顔を見せたっきりどっかに行ってしまったもんだから気兼ねはない。
そんな俺を見てタケさんは言った。
「ヒロさっきからボキボキ鳴ってるけど、折ってるやろ!?」
「うん折ってる。ボスおれへんし、このほうが早いっすよ」
この仕事は歩合性なので早く終わらせた方がいい。
「それもそうだな」
そうして二人でボキボキやっていた。
そろそろ昼休憩しようかと、二人で座ってトマトを食っていると、テンとは違うべトナム人がこっちにやってきた。
少し小太りで七三分け、エロそうな髭が生えている。
彼はテンの知り合いのようだ。
その彼が話し掛けてきた。
「君たちここのファームの仕事が終わったら、次はうちのファームで働かないか?」
この時期は年末ということもあって労働者が不足しているのだろうか?
彼は続けた。
「やることはここと同じで給料はここの2倍出そう。それからキャラバン(キャンピングバン)を提供してあげるから、宿代は無料だ。君たちの頑張り次第では週1000ドル(約7万円)も可能だ。いい話だと思うから考えてみてくれないか」と言いながら終始自分の髭をなでている。
良い話。
でも言い方がうさんくさい。
オージーだったら仕事内容、給料、その他条件だけ言って、働くか働かないか決めてくれ、と言う。
このおっさん怪しい。
とりあえずその場では、考えさせて下さい、
と言って保留させてもらい、その日の仕事を再会した。しかしいい感じに仕事の話が繋がってきた。
残金が少ないから、もうしばらくこの街で働いた方がいいな、という気がした。
となるとどうも正月までにパースに着けそうもない。
シュンはもうパースに着いているだろうか、たんまりロブスターを堪能したんだろうか、
そんなこと考えながら午後は働いた。
添木を全部抜き(折り)終わると、あとはその抜いた木を束ねてこの仕事は完了するが、それはまた明日にしようと決めた。BPまで今日は送ってもらえずタラタラ1時間歩き、
案の定タケさんは犬に吠えられた。
晩飯はまたナナコ、タケさんと一緒に食べた。何かいろいろ話したような気もするし、何にも話していないような気もする。
俺はあまりおもしろくなかった。
早めにシャワー浴びてべッドに横になった。
二段べッドの下の方に横になり、上のべッド底の格子をボーッと見つめていた。
「パース・・・もちょっと待っててくれよ。」
早く向かいたい。あと何日働こうか。。。
結局金が少ない自分が悪い。
イライラするような、仕事が繋がって良かったような。
ナナコも部屋に入ってきて、俺の上のべッドに登り横になった。
別にナナコはデブではないが、ギシッとべッドの格子がきしんだ。
しばらく沈黙があって
・・・・
「オーストラリアに来てから何人かの同世代の男の子と会ったけど、ヒロは彼らと違って大人な感じがするなぁ」
そう言った。そう言われた瞬間
ナナコの見え方が変わった。
『偶然出会った以前の知り合い』
から
『かわいい女の子』に。。。
あぁ・・・俺の頭は、、、
見えないけど何かが出たんだろう、
そういう脳内物質が。
段違いのベッドとは言え、すぐそこに女の子が寝ている。。。
今まで何も思わなかったのに、なんかソワソワするな。。。
「大人な気がする?・・・ロ数が少ないからそういう風に見えたのかな?」
脈拍が上がったせいか、標準語で返答していた。
『見えたのかな?』って今までの人生でそんな話し方したことねーだろ!と思う。
そのあとも、少し会話しながら、心の中はウズウズしている。
体の芯が痒いな、、、会話が入ってこねーし。
その痒さと眠さは別モンらしく・・・
結局俺は寝た。。。
その夜、俺はナナコにキスされた。
・・・夢だったかも知れない。
唇が触れた。やわらかいなぁ、、、
『あーキスされたのか・・・』
あぁー、、、あったけぇ。。。
体の芯の痒かったやつ、掻いてくれたんだな。
ただその状況を意識の底から見上げているようで、
体は動かなかった。