オーストラリア2400Km自転車旅29日目🚴♂️
29日目 「ほっぺた」
早朝、約束通り迎えに来てくれた。
髭のファームに着くと俺たちはさっそく働きはじめた。午前中に4列のトマトを倒していった。昼休憩に俺はシュンがよく作ってくれたサンドイッチを真似して作った。
この日はベリーハングリーを感じ、食パン6枚分も作ってしまった。
それを 食い終わると少し昼寝した。気持ち良かった。
午後はなかなかペースに乗らなかった。
ひたすら同じ動作、だんだん力が入らなくなってくる。倒しても倒しても一向に進んでいる気がしない。。。
しまいに日も落ちてくる。
タコは5時半で作業を切り上げた。俺は、今日は10列やると決めていたから、どうしてもやり切りたい。
おかげさんで日も沈み午後8時、真っ暗で目が利かなくなってきた頃、どうにか終えた。
晩御飯を食べるために髭の家に入った。
母屋に入る時は、玄関ではなく、リビングの大きな窓から出入りすように言われていた。
中は広いリビングで、独特な飾りものや、大きな振り子時計がある。
風が良く抜ける家で涼しく、何だか懐かしい匂いがした。
さばの缶詰が今日の晩飯。
飯を食っているとどこかに出かけていたらしい髭の家族が帰ってきた。キッチンを勝手に使っていいと言われていたものの、何か気まずい・・・
「こんばんは」とぎこちなく挨拶をした。
髭は軽く相槌を打つだけで見るからに機嫌が悪そう。おそらく昨日の件でワイフのおばちゃんがいろいろ愚痴ったのだろう。
ワイフに関しては目も合わそうとしない。
昨日通訳してくれた娘さんらしき子と目が合った。。。
「良かったら家の中で寝てもいいですよ。キャラバンには電気ないでしょ、暗すぎると思うから。」
そう言って水まで入れてくれた。。。
とても優しい子だった。
髭んちで寝るのは気持ちが休まらないので、お礼を言って断った。
小学生くらいの男の子とさらにもっと小さい女の子もいた。3人兄弟なのだろうか。
その小さい2人にジュース飲む?と薦めてみた。
妹の方は、体のわりに大きな頭でこくりと一度うなずいた。ふふっ
お兄ちゃんの方はそんな妹を睨み付けている。この人とはロを聞きなさんなと言われている感じだ。妹はそんなこともすっかり忘れてしまっていたのだろう。髭夫妻はさっさと部屋に入ってしまったのでこっそり妹にジュースを入れた。小さな両手で大きなコップをつかんでおいしそうに飲んだ。ほっぺたいっぱいにジュースを含んだ顔が、かわいい。
仕方ない、そのほっぺをつまむとするか。
「おいしい⁈」と聞いたら、
何も答えなかった。
俺と口を聞いてはいけない忠告を忘れてた訳ではなかったのか。目は嬉しそうだった。
どういたしまして、の代わりにもう一度ほっぺをつまんだ。ふふっ、かわいい!
・・・俺は使った食器を洗い、そこを出てキャラバンに入った。
タコは気持ち良さそうにいびきをかいている。
月明かりで、口が開いているのが分かる。
「・・・開いてますよ」
一応言った。
ベリースリーピーを感じ、俺も寝た。