サウンドトラック『愛の不時着』を語りたい

Netflixで配信している韓国ドラマ『愛の不時着』にドボン!と派手に音の立つレベルで景気良く沼入りしてから2週間、先日ついに全16話を完走した。
財閥令嬢の主人公・セリはパラグライダーの飛行テスト中に竜巻に巻き込まれ、あろうことか北朝鮮に不時着してしまう。そこで出会った北の軍人・ジョンヒョクに助けられ、なんやかんやあって匿ってもらうことに…などとまあ物語の導入は荒唐無稽だが、家族の愛憎・恋の波乱・仲間との絆、み〜〜んな大好きなテーマをギャグありシリアスありの特盛りサービスで提供してくれる、笑って泣けるヒューマンドラマです。
なにより映像が綺麗!すべてに金がかかっている!美しい人がたくさん出てくるのに嫌味のない素朴さがあって素敵!
まだまだ言いたいことたくさんあるけど、ストーリー展開や好きなキャラクターの話をひとつひとつしていくと本題に辿り着くまえに年越しそうなので割愛。とはいえ予習・復習したい人向けにあらすじ&人物紹介のリンク貼っとこ。でもどうだろうな、Wikipediaの方が詳しいかもしれない。

https://www.cinematoday.jp/page/A0007313

以下、タイトルまま。
なにを隠そうわたしはサントラオタクなので、映像作品をみたあとはサウンドトラックを聴いておさらいするのが習慣になっていて、曲を流しては頭のなかで該当シーンを再生しつつ余韻に浸ることで、一度の鑑賞で二度美味しいってやつを実践しています。
そもそも場面ごとに流れた曲にタイトルがついてるの、めちゃめちゃアツくない?その全部に意図があってつけられてるんだよ…映像作品の表面では語られなかった内包された思いや事情がここではじめて分かるみたいなことがままあるから、サントラを聴くのは映画の特典映像やオーディオコメンタリーをみるのと似ている。
愛の不時着のサウンドトラックもその例に漏れず、登場人物の名前がつけられた曲や、作品中繰り返し使われるメロディに様々なバリエーションをつけた曲がぜんぶ収録されていて想像の余地が無限大だったので最高でした。ここからはお気に入りの曲のここが好き!ポイントを取り上げたい。

・メインテーマ『sigriswil』

これは毎回オープニングでショートver.が流れるので、ファンなら誰もがハイハイこれね、わかる!となる曲。
タイトルにはロケ地のひとつであるスイスはジーグリスヴィル(景色が素晴らしいのでぜひ検索してください、というかドラマ観て)の名前が付けられています。『愛の不時着』は舞台が朝鮮半島なのでほとんどのシーンが北朝鮮およびソウルの風景なんだけど、メインテーマにこれを持ってくるのがまずいい。
この場所はセリとジョンヒョクにとっての人生の岐路として何度も登場するキープレイスになっていて、スイスの穏やかで雄大な自然を想起させるとっても耳触りのいいサウンド。睡眠導入剤としても使える。音楽のジャンルでいえばワールド系というべきか、例えるならエンヤっぽさがあってこの地の持てる運命的な力がバシバシ伝わってくる。
そしてsigriswilには英語の歌詞がついており、この歌詞がまたいい。物語そのまんまじゃん…これドラマ見終わる前にちゃんと歌詞読んだらネタバレなんないかな…こんな…あ〜〜。泣く。すぐ泣く。ふたりが幸せであってくれればそれでいいんだ、ありがとう。まずはこれをフルver.で聴いて。話はそれから。

・亡き兄に捧げるピアノソナチネ『The song for my brother』

これ聴いてゾワらない人いる?
ゾワゾワするよ…そりゃあセリだって一度聴いたら忘れられなくなりますよね!わたしも毎日頭のなかで流れてるもの。
ジョンヒョクが兄・ムヒョクのために自作したというこの曲、ドラマのなかでは尺の都合上だいたい一部分だけ使われるんだけど、フルで聴くとすごい。景色がみえる。
ディズニーの『FANTASIA』の影響がモロに出ており、日頃クラシックを聴くと脳内で映像を作り出してしまうので、この曲を聴いたときにも景色が浮かんだ。かすかに霞がかった茫洋な湖に浮かぶ小舟が風もなく鏡面の水上を滑るように筋を引いて進む。櫂の先から垂れる雫、緩やかに広がる波紋。静かでゆったりとした時間に包まれる慈愛を感じる。兄さんのことが大好きだったんだね。中盤ちょっと切ない変調が入ったりして、ムヒョクの悲しい最期を予期しているかのようなところも味わい深くて本当に名曲です。ジョンヒョク、生まれも育ちも良くてピアノはプロの腕前、しかも作曲できるなんて万能すぎる。ショパンのノクターンが好きって設定だったしな…優雅だ。
そしてこの曲はピアノソロver.も大好きなんだけど、後に出てくるオーケストラver.があまりにも良くて痺れた。オケが入ると、湖に風が吹きます。なにを言っているか分からないと思うので、とりあえず聴いてくれ。ピアノソロのあとにオーケストラを聴いてくれ。
兄の死をきっかけに心を閉ざしていたジョンヒョクが、櫂を止めていた小舟が、風に押されて動き出すんだよな…ストーリー上でもまさに運命が大きく動き出すタイミングでオーケストラver.が流れるので、この編曲は紛れもなく天才の所業だなと思いました。

・戦略的なポップサウンド『Seri's Choice』

これ、正直どのシーンで流れていたかあまり思い出せなくてドラマもう一回みないとな…と思わされたんだけど、軽快な調子で可愛くて好き。タイトルのSeri's Choiceは主人公のセリが経営する企業名です。
一般的な話、なにかしらの企てをしているシーンのBGMってこういう跳ねる感じの音が使われること多くない?そもそもこのテイストの曲が好きなので、始まりの部分からおっ!てなる。さらにキレの良いヴァイオリンの音が入ってきたり、高めのキュートな機械音が入ったりして賢さのなかに可愛らしさがある戦略的で抜け目ないセリの性格を思わせる作りになっていて好みだった。ちょっとゲームサウンドみがあって聴いていて楽しいのでおすすめ。
企てシーンの曲といえば『YoungAe and Villagers』という、ジョンヒョクの住む北朝鮮の村民たちのテーマソングもあった。これもなかなか良いんだけど、キレのある高音の有無でこんなにもコミカルに変わるものかと感心する。村民が出てくるシーンはだいたいギャグパートなので、そのへんを踏まえてSeri's Choiceと聴き比べるとBGMによって人物の印象が大きく決定づけられることが実感できて面白いかも。

・不遜な美女の登場曲『Seo Dan』

これはタイトルに名前を冠すとおり、ジョンヒョクの婚約者・ダンのテーマソング。この曲が流れるとワクワクする。不遜とか言ってごめんね…誤解のないよう申し上げておくとわたしはダンが大好き。
彼女は平壌のデパート経営者の娘で、家柄も申し分なく容姿端麗で何不自由ない暮らしをしているお嬢様という役柄なので、初見ではスーパー高飛車で鼻持ちならない女という印象なんですが、ストーリーが進むにつれて視聴者全員がダンに幸せになってほしいんじゃ〜〜!お願い神様!と心変わりすること必至の魅力的なキャラクターです。
全く隙がなく常に懐疑的な眼差しで主人公たちと関わっていく普段の性格とは裏腹に、酒癖が悪かったり人に頼られると放っておけない優しさを垣間見せたり、元来の高貴な存在感をそのままにチャーミングな部分も併せ持ったダンのイメージにぴったりの曲なのでぜひチェックを。

ここまで山鳥の尾の如く長々と書いてきたけど、歌詞の入ってる曲もたくさんあるからもう語り尽くせない。韓国語の歌詞がわからないのでどんな歌なのかニュアンスでしか掴めていないけど、ちゃんと歌詞を調べたらまた新しい発見があるんだろうな。挿入歌のなかでは『Flower』と『Like You』が好き。

それではみんなもサウンドトラック聴いてください。そして愛の不時着、語ろう。わたしは全16話をとりあえずもう一周します。

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