
「アグレッシブ烈子」サンリオが作ったドメスティックな『社畜』アニメは意外にもインターナショナルだった
by 輪津 直美
海外では「Aggretsuko」として配信され、非常に好評を博していると聞き、興味本位でちら見するつもりが、イッキ見してしまった。
主人公は、真面目で保守的で人目を気にしがちな典型的日本人(見た目はレッサーパンダだけど)の25歳OL「烈子」。パワハラ上司や意地の悪いお局に悩まされるが、そのストレスは一人カラオケでデスメタルを歌うことで解消している。
このアニメ、出てくるキャラがみんな何らかの動物なのだが、そんなのは気にならなくなるくらい、日本の会社あるあるをうまいこと描写している。会社員歴が4年しかない私でも、昔の会社生活を懐かしく思い出したほどだ。作者はきっとサラリーマン経験がある人だろう。私はふとイギリスのドラマ「The Office」を思い出した。
「The Office」は、天才コメディアン、リッキー・ジャーヴェイスの出世作で、イギリスで大ヒットの後、アメリカでもリメイクされた。ジャーヴェイスの実体験が元となっていると言われ、登場人物が非常にリアルで、ドキュメンタリーのような演出方法で撮られている(モキュメンタリーというらしい)。イギリスらしく皮肉が効いたセリフとシチュエーションが満載、主人公のデヴィッドも嫌なヤツで感情移入ができるキャラクターではない。非常にイギリスらしいドラマで、好き嫌いがはっきり分かれるだろう。
一方「アグレッシブ烈子」はアニメということもあってかなり誇張した描写になっていて、流れる音楽はデスメタル、登場「人物」はみな動物と、一瞬奇をてらっているように思えるが、ストーリー自体は「烈子の成長物語」でオーソドックスだし、烈子も共感できるキャラクターだ。これは非常に日本的だと思う。私はアニメにそれほど詳しくないが、ドラえもんとか宮崎アニメとか、世界的に人気のある日本のアニメは、着想が突拍子もないものでもストーリーは案外普遍的で、キャラクターにも感情移入ができるものが多いように思う。普段アニメを見ない私が「烈子」を一気見してしまったのも、脚本とキャラ作りがしっかりしているからだろう。
海外の批評を読んでいると、烈子に共感するという声が非常に多い。「ブラック」な環境で苦労しているのは日本だけではないのだな、と妙に安心する。シーズン2が待ちきれない人が大勢いるようだが、どうやら私もその一人に加わったようだ。
プロテイン!