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『ハイ・ライフ』 みんなハイでご機嫌なら、世界は平和で居心地がよい

by キミシマフミタカ

南国の首都で暮らしていたときのこと。よく晴れた午後、ソファで寝転んでいると、よく友だちの友だちが、乾燥した葉っぱが詰まった靴箱を抱えて遊びにきた。ビールを飲みながら、葉っぱを回す。そんな日常、いま考えれば天国のような日々だった。

ラジオから流れる能天気な音楽が、キラキラした粒になって部屋の中を漂い、笑いがとまらなくなる。友だちとはテレパシーが通じたし(何語で会話していたのか覚えていない)、ハイになって繰り出す夜の街は、まるでフェリーニの映画のように幻想的だった。

なので、もちろん法治国家である今の日本では許されないが、高樹沙耶さんが築こうとしていたユートピア世界への希求も、わからなくはない。「ハイ・ライフ」は、そんな彼女に是非見てもらいたいドラマである(もう見ているかも)。

キャシー・ベイツは、マリファナが合法化された(という設定の)米国で、“マリファナ薬局”を営む女主人である。こんなハマり役があるのかと思うくらい、ハマっている。従業員たちはみんなご機嫌で、共同経営者である息子だけが、チェーン展開しようとしゃかりきになっている。でもご機嫌なみんなは、面倒くさいだけだ。だって、楽しければ今のままでいいじゃない? 

チェーン展開の計画を熱く語る息子。その計画をじっと聞いている従業員。「で、君の意見はどうだい?」と聞かれた従業員の答えは、「ごめん、聞いてなかった」。葉っぱの世界はそんなふうに率直で、限りなく平和だ。たぶん、戦争なんて起こらないだろう。

世の中が(たとえラリっていても)みんなご機嫌ならば、世界は居心地がいいはずだ。世間というものが、しかめっ面で、怖い顔だから、いろいろなトラブルが起こり、人々は心の病を抱えるのだ。人の話を聞いてなくても、ご機嫌な人々と仕事するほうが、絶対に楽しいに違いない。今の世の中にはたぶん、葉っぱが足りないのだ。

と、いうようなことを夢想してしまうドラマであり、個人的には日本のキャシー・ベイツ、樹木希林さんに、千駄ケ谷辺りで“マリファナ薬局”を開いてもらいたい。そしたら毎週通うだろうな。いつか、そんなご機嫌な世の中になることを願う。ラブ&ピース。

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