PDFのアクセシビリティチェックツールってどんなのある?
こんにちは。例年、ニッチなアクセシビリティについての記事を、JSTではないタイムゾーンで当日と言い張って書いている_feu_と申します。
今年も昨年に続いてドイツ/EUの法律の何かしらを書こうかなと思っていたのですが、調べていたら沼に行き当ってしまったため、予定を変更してPDFのチェックツールについて取りとめなく書いてみることにしました。
ぐぐってみた
有料のものを含めるとまだまだあるけれど、今回は無料のものに絞ってあげてみる。
Adobe Acrobat Pro のアクセシビリティチェックツール
Acrobatに組み込まれているアクセシビリティチェックツール。
PDF/UAに準じたチェックができる(※)。
※https://community.adobe.com/t5/acrobat-discussions/difference-between-accessibility-checker-and-pdf-ua-checker/m-p/10251301#M127249
※ちなみにこのスレッドはまるごと確認すると吉。
そのため、WCAG 2.0/2.1によるチェックが必要な場合は
「アクセシビリティ対応の PDF の作成および検証」(https://helpx.adobe.com/jp/acrobat/using/create-verify-pdf-accessibility.html#check_accessibility_of_PDFs)の「WCAG と PDF/UA のマッピング」の項目を参照して確認することになる。
どうでもよくないんですけど、InDesignからPDFを書き出すときのオプションにPDF/UAって2022年も追加されないのか、わたし、気になります!
(多分追加されないのだろうなと思いつつ)
PAC 2021
https://pdfua.foundation/en/pdf-accessibility-checker-pac
PDF/UA Foundationが2021年8月にリリースしたPDF Accessibility Checker。
PDF/UAとWCAG 2.1 AAそれぞれの規格によるチェックを実施することができる。チェック結果を複数の方法でグラフィカルに表示できるのはさまざまな層のユーザーに状況を伝えやすくてよいと思う。
一方でファイル選択のインターフェースはなんでこうしたんでしょ、というわかりにくさ。ヘルプ見ればいいんだけど、ほかはインターフェース見たらわかるので惜しさがある。
veraPDF
https://www.pdfa.org/resource/verapdf-test-suite/
Windows/Mac/UNIXで動く、PDF association によるテストスイート。PDF/A-1, A-2, A-3, UA-1それぞれのチェックが可能。
CLI(CUI)/GUIどちらも利用でき、結果はXML/HTMLで出力する。説明は以下のヘルプを見るとわかりやすいと思うので割愛。
GUI版ヘルプ: https://docs.verapdf.org/gui/
CLI版ヘルプ: https://docs.verapdf.org/cli/
veraPDF使ってみた
テスト対象として頼りになる「駒留市」さん、ぬかりなく問題のあるPDFをありがとう。
駒瑠市〜アクセシビリティ上の問題の体験サイト〜
https://a11yc.com/city-komaru/
上記サイトからうきうきでPDFをお借りして、veraPDFでチェックする。
実行すると、次のスクリーンショットのようなレポートが出力される。
#ファイルがPDF/UAで作成されていたら
#PAC 2021とveraPDFで比較するところなのだけど、
#それはまたいずれどこかで
PDFのタイプは自動検出とした。ファイルは PDF 1.4 (Acrobat 5.x)で作成されているのでもちろん問題ないし、Validation Informationの検出結果のRule "Specification: ISO 19005-1:2005, Clause: 6.7.11, Test number: 1"は
https://github.com/veraPDF/veraPDF-validation-profiles/wiki/PDFA-Part-1-rules#rule-6711-1 へリンクされていて、RequirementとError detailsが確認できる。
しめくくり
PDFがタグなし、画像がPDF化されたものなので、チェック結果が適正かどうかといった点や、PDFにある問題をどこまでチェックできているかという点までは踏みこめていないが、手元で別のPDF/UAのファイルをチェックしたところでは、PAC 2021とveraPDFでは検出項目や数に違いがあるものが見受けられたので、細かくみていくと面白そうである。
おまけ
いくつかある中で以下をとりあげておこうと思う。
PDFのアクセシビリティチェックツールがいくつかある、という状態がすでに当たり前になりつつある、そんなありがたみを味わいつつためらいなくおまけ行きにした。贅沢。
PDF VALIDATOR
https://commonlook.com/accessibility-software/pdf-validator/
Acrobat のプラグイン。"Only PDF checker that tests against Section 508, WCAG 2.0 AA, PDF/UA and HHS standards" は、HHSが入っているのでぎりぎりOnlyと言える感。
HHS Standards
https://www.hhs.gov/web/section-508/accessibility-checklists/index.html
のチェックリストはマニュアルでPDFチェックをするひとには参考になると思う。
Accessibility Compliance Checklists | HHS.gov
https://www.hhs.gov/sites/default/files/hhs-508-pdf-checklist.xlsx
Tingtun Checker
http://checkers.eiii.eu/en/pdfcheck/
オンラインでチェックするツールはいくつか見かけたが、少し変わったところでは、PDFの達成方法(https://waic.jp/docs/WCAG-TECHS/pdf.html)の一部に基づいてチェックするものがあった。その意味でのみの紹介。利用はオンラインのみ。
HTML Checkerのチェック基準でWCAG 1.0があったりするのと、チェックを実施したい対象の状態によっては、公開後のファイルでないとチェックできないだろうということで、あまりおすすめはしない。
以上。
それではみなさま、よい年末をお迎えください。そして来年もまた一緒に過ごせますよう、祈りつつ。