存在していないもの
「卒業します。芸能界には残りません」
あの日、推しメンは卒業を発表した、
そして芸能界引退も。
アイドルオタク12年目にして初めての芸能界引退。
この前、加入したばかりだと思っていたけど、
いつの間にか何年も時間が経っていたらしい。
「アイドルとは幻」とはよく言ったものだ。
夜になれば朝が来るように、アイドルにも卒業がある。
それが当たり前のこと。ただそれだけ。
これから先、推しがいない世界線を生きなければいけないし、
思い出すのに記憶のかけらを集めて思い出すしか方法がないのだ。
もし、アイドルに興味を持たず卒業のないバンドマンとかを
応援していたらこんな気持ちにはなることもなかっただろう。
あの日、動画配信サイトでひとつ手前の動画をクリックしていれば
出会わずに済んだのかもしれない。
あと少し、1分でいいからステージに立っていてくれないか。
今日が終われば、明日が来る。
好きだったあの人は、もう目に見えない。
そしていつもの日常が始まる。
次出会うときは、他人で出会いたい。
「存在していないもの」(紅組)
NMB48 5枚目シングル「ヴァージニティー(typeB)」に収録。