わたしの中の幽霊


「普通に」って言ってしまう、普通に

普通ってなんだよってずっと思ってきたし実際今でもそうだけど、「普通に」って言ってしまう

普通にいちばん懐疑的で、普通が恨めしくて理解できないと思っているのに、「普通に」って言うの、おかしくない?
カギカッコ付けないとどの意味の普通かって分からなくて難しいね、鉤括弧って漢字でこう書くんだって、漢検の勉強してたときに知った   40点足りなくて落ちたけど

普通ってなに?

大学入ってからいろんな人と会って接して、やっぱり普通ってないんだなって思った

他人の話を聞いていても、それはその人にしか分からない生活があって、地獄があって、楽園があって、どうしようもなく憎んでいるけど大事に抱きしめているものもあるって知った、それはわたしの主観では語れないし、測れないと思う

わたしはわたしの中の憎んでいるものってないし、あっても何年も時間をかけて消化できた(と思っている)ものがほとんどだけど、でもやっぱりふとしたところでチラついたり、わたしの行動原理の中にあの出来事が組み込まれてるんだなって思うとき、ある

わたしは私の構成するもの全部肯定してあげたい
自分の好きなところも目を背けたいところも
やましいところも認めてるところもある、
自分のこと嫌いになりたくない、から頑張ってる
自分のこと好きなままでいられるように、
認めてあげられるように

善く生きてるって思いたい
自分が間違ってるって認めたくない、模範解答みたいに生きたかった、そうできるって信じてた、今でもそうあってほしいって心のどこかで思ってる
わたし善くないといけないの、たとえ善くなくても、善いって私が認めなきゃいけないの

『善い』ことって明確な指針はないし、それこそ「普通」と同じ判断基準なんだと思う、世間ってやつ

世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか。」
という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。
(それは世間が、ゆるさない。)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ。)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる。)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)

人間失格 


世間以外にも、たぶんもうみんな実体なんてないと思うの

誰かの言葉や生き方や作品や、いろいろなものから影響を受けて「自分」が構成されていくと思ってるんだけど、もうその「誰か」に触れすぎてると思うの、
そのせいで本来の自分が希釈されてる感じ
それって本当に自分なのかなってたまに顧みる
きっと本来の自分も本当の自分も実体はないから、意味はないと思うけど


「普通」の話だよね、普通の話
やっぱりさっきも書いたけど、普通なんてないし目に見えないし、私たちは幽霊を見てるんだよ
柳の下だけじゃなくて、お風呂だけじゃなくて、
ずっとそばにいてわたしのなかにいるもの
それに従わなくちゃいけないし、怯えたりしてる
その幽霊から逃れられなくて自縛してる
この世界からあなた以外誰もいなくても、
あなた以外が誰もあなたのことを認識しなくなっても、きっとみんな「普通」に囚われたままなんだと思う、普通に



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