ひとり情シス生存ルート/一般職からの異世界生活
一般職から、突如情シスになった人、もしくはスキルや経験が無いけど情シスになりたい人向けの記事です。
中小企業では37%がひとり情シスとのことです。しかも、「少しExcelができる」とか「パソコン得意そう」といった理由で抜擢されてしまい、高度なスキルが無い中で不安や、孤独な思いをしている人が多いという話を聞きました。
2019年は増税、改元、Win7サポート終了。2020年にはコロナショックによるテレワーク対応など、苦労されているのではないでしょうか。
僕もエンジニア経験などなく、ずぶの素人で情シス担当になった一人です。まるで異世界の中、本当にたくさんの方に助けて頂き、感謝しきれません。
僕がどうにか生存できたルートを紹介して、同じような境遇の方や興味のある方に少しでも役立てていただくことが出来れば、お世話になった方々の恩をまた別の誰かに送れて嬉しいので、記事に残すことにしました。
偉そうなことを言うつもりはなく、あくまでも四苦八苦しながら個人的にどのように考えて行動してきたかをお伝えする記事です。絶対これが正解とかではなく、役に立ちそうなものが有れば参考にする程度で見ていただけると幸いです。
(情シス担当は2020年4月時点で2年目を終え、現在3年目)
本で学ぶ
あくてぃぶでぃれくとり??いあーす??
とにかく言葉がわかりませんでした。
Google先生に◯◯とは?と聞くと、さらに謎の言葉が。
とにかくネットやらで色々調べまくりました。
そんな中、短時間で最も身になった勉強は、はっきり言って、本でした。
お店に行く時間がなければ、とりあえずAmazon書店で知りたい知識や高めたいスキルのキーワードを検索し、上位に入る書籍を買います。重要なことは、ICTリテラシーだけでなく、ソーシャルスキルやメンタルトレーニングなど広く学ぶことだと考えています。
最初3ヶ月が正直地獄でしたが、一定の知識が入ると、様々なメディアで学べるようになります。
学び時間が作れないお父さんはこちらで紹介しているので、よければご一読ください。
「学びたいけど時間がない」の問題
ユーザー会のLTに立つ
情報を得る最善の方法は情報を出すことである!みたいな本に影響されて、実際に行動してみました。すると、鬼殺隊柱から修行つめるレベルのチートでした。マジで。
AWSのコミュニティで、5分のLTに挑戦。めちゃ緊張しました。担当になって半年にも満たない素人が、クラウドテクノロジー最前線で働いているエンジニアの方や経営者の前で初登壇。しかも当然喋れる知識もスキルも無いので、AWS関係者の前にもかかわらず、どうにか触ったことのあったGoogleの話。さらに、テンパって10分喋るという黒歴史を残してしまいました。
ところが、とても温かく接していただき、たくさんの方と仲良くなることができました。SNSでたくさんの方と繋がりました。結果、大げさかもしれませんが世界が広がり、確実に学びが加速しました。
会に参加する方法
・知り合いがいれば相談
・利用している製品、サービスのユーザー会を探す
・興味のある勉強会をcompassで探す
・Facebookのユーザー会グループに入る
東京のビックサイトに行く
営業さんを待つのではなく、ベンダーが集まる大規模展示会(ビックサイトでなくてもいい)に出向くことで、必要なサービスや製品の最新情報を得ることができます。定期的にやってるのでネットで探せます。
僕は知識や経験が無い分、足を動かし最新の情報をもらいに行くように努めました。
生の声で説明していただけるだけでなく、僕のやりたいことや現場の問題点を伝えることで、解決策の提案を頂ける場合もありました。
ヘトヘトになるまで会場の各ベンダーに話しかけ(ピントのズレた質問をしてしまい恥ずかしい思いもしました。)、最新の情報をいただいた事で今までの常識では難しかった課題解決の糸口をつかみました。
しないことを決める
・背伸びしない
レベル1でアルテマウェポンを倒せるはずがないのと同じです。
僕が瀕死になりかけた例では、組織のセキュリティポリシーが現行の運用とあっていないといった問題点を見つけてしまった時のことです。
セキュリティを学びながら情報資産の台帳を整理したり、サーバーやシステムの機能要件を洗い出したりとやってみたのですが、途中で通常業務が回らなくなり、体調が悪化しかけたことがありました。
ヤバいと感じ、業務を回し切ることを優先するように切り替え、沼にハマって自分が潰れてしまわない運用を意識するようにしました。
実際、同じような境遇の担当者が、健康上の問題や精神的なトラブルで長期休暇になったり、辞めていったのを何度もみました。
多少の未整備部分は「機器のリプレースのタイミングなどでベンダーに任せる」といった割り切りマインドも必要だと考えています。現在は、支援委託によりセキュリティポリシーを見直し、定期的に修正できる環境を構築しています。
「あり得ない自体が起こったなら、疑うべきは二つだけだ。前提条件が間違っているか、それともあんたの頭がイカれちまったか。それは、案外近い所に、ころがっているのかもしれない」
(出典:サイコパス)
僕が行った具体的な立て直し方は、って言うか、自然とやったことは、いったんICTからはなれ、読みたい本を読んだり、家族とキャンプにでかける。でした。自分の問題を探ってみることで生存ルートが見えてきたように思います。
やらないことリストの本もよく目に付きました。自然と目に入るものを見るようにしました。
で、少し視点が変わったところで、、
・ひとり情シスは一人プレーしない
冒険者は冒険してはいけない。(出典:ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうか)みたいな言い回しになってしまいましたが、各部署にICTリテラシーの高い人に相談し、簡単なPC操作等のヘルプなどの協力者を作っていくと詰み案件が減ることがわかりました。いまは、ひとり情シスが一人で全て対応する必要はなく、一人で運用できる仕組みを構築することが大切だと考えています。
良くある問い合わせなどはマニュアルやQ&Aを作ってグループウェアなどで共有しておくと個別対応が減ります。
具体的に意識することは、自分しか出来ないことと、自分以外でも出来ることを整理し、
・職場内の人に任す
・アウトソーシングを使う
の2点です。
・誰かを責めない
現状が管理面や運用面で悲惨な状況であるなんてこともよくある話です。必ず原因があり、それを突き止めておくことは大切です。しかし、
・他者
・組織の体制
・取引先
・自分自身
を責めても誰も幸せになりません。
どうすれば最適解に近道か?を客観的に考えると解決策が見つかるかもしれません。自分が変えていくと決めていまうと次に進めるんじゃないかな?と思おます。
偉そうなこと言っても、沼にハマっているときはこれがなかなかうまくできませんでした。でも、どうしたらうまいこというかを突き詰めると、色々な失敗をカバーして、仲間を作っていくことが一人プレーしない世界線に乗れる近道な気がしています。
思考を整理する
既に分かりきったことを言っているのですが、考え方の整理が生存のカギになります。
・捨てる
最初にしたことは、
・保存年限が過ぎている書類
・使うかもしれない過去の機器
・参考になるかもしれないカタログ
を捨てることでした。
新しい環境で詰め込もうとしてしまうのですが、逆に軽量化することで、頭の中が整理できます。
必要なものはスキャンし、クラウドにアップロードすれば、全て捨てることができます。
・抽象度を上げる
頑張りすぎると、一カ所しか見えなくなってハマってしまい、気が付けば時間だけが過ぎていた、なんてことってあると思います。
例えば、IaaSといったわからない言葉出ててきたとします。
調べると、上のような説明が出てきました。
この文章を抽象度を上げてみてみると、「インターネット経由のサービス」=「クラウドサービス」ということがわかります。すると、購入する書籍が見えてきます。結果的に、検索能力が向上します。
・傾聴力を学ぶ
業務に使うシステムの要件定義やベンダー(業者さん)とのやりとり、上司への提案全てに必要になると考えています。
例えば、営業さんが「このシステムを導入すれば効率化がはかれる」とか「ハードウェアの保守が終わるので、前回と同等のリプレースだとこの費用で大丈夫ですよ」なんて事を教えてくれる場面があります。不安なので、ついついベンダーさんに頼り切ってしまうこともあるかもしれません。
でも、冷静に考えてみると、内製化できていなかったり、エンジニア不在により俺、召喚。といったロジックがあるはずです。
専門性の高いプロから見れば、はっきり言って、カモである可能性もあります。
つまり、営業さんの本音部分を知る必要があるということです。
それでは、ベンダーの言うことは全て疑い、極力かかわらず、困った時だけヘルプを頼むべきなのかというと、やはりアドバイスは必要だし、専門的な部分は頼る必要があります。
ここで傾聴力が必要になるんじゃないかなと僕は思っています。
話をよく聞き、本音部分を意識します。担当者の本音を掘り下げると、お互いメリットのあるルートを検討することができます。例えば目の前の収益化以外に「事業デザインのアップデート」があったとします。モデルケースになるような組み立てを逆にこちら側から提案できれば理想的ですが、まずは「一緒に成長したい」といった考えを伝え、営業さんは今までどのようなことに取り組んてきたか?どのような実績があり、興味があるのか?を意識した上で、いまの課題や予防策をフィードバックすることから始めると、信頼関係を築いていくことができるんじゃないかなと思います。
これらが出来れは、実はべンダーロックイン(一業者の寡占的な状態)を防いだり、本当に必要な要件を定義する能力を身に着けるために役立つと考えています。
・勝手に師匠をもつ
どの業界でも変態(リミッターが壊れてしまい、一定の枠組みを超えてしまっている。例えるなら、ガフの扉を開いたエブァ初号機)が存在します。
もし見つけたら、どうにかコンタクトを取り、ひたすら観察し、考えを近づけます。要するに真似をします。(ロールモデル)
「想像もしていなかった概念」や、「存在意義すら理解出来ないツール」に出会えます。なぜなら、原因には理由があるので、必ず考え方や習慣が裏側にあるからです。真似をすることが最高の学びになります。
ゴールを持つ
半年くらいたつと、何となく組織のICT環境がわかってきます。
すると問題や改善案が出てくるはずです。
(理由は、知識が乏しいまま一人情シスとなって困っている人がいる組織なので、そもそもエンジニアが不足していたり、組織のICTに対する理解度が低い可能性が高いため、改善もしやすいから)
そこで、
・自身の生産性を上げる
・モチベーションに左右されなくする
ために、自分なりにゴールを作ってみます。
いつでも変更可能で、提出用でも報告用でも無く、あくまでも自分用にすることで、
・プレッシャーにならない
・自由にいつでもアップデートできる
といった運用が可能になります。ここは、ゲーム感覚でいいと思います。
・設定値
遠慮することなく、理想とするゴールを設定します。
とても自分のスキルでは実現は難しく、まわりの同業者さえも構築出来ていないゴールでもいいです。
いつでもアップデート可能なので、現在考える、最も理想的であるICT環境をゴールに設定します。
・マップ作成
ICT機器には必ずリプレースといった大きなイベントがあります。そこの計画を事前に作り、行動することで組織の環境をより最適化することができます。一年前からやらなくてはいけないからする。では無く、理想の環境を構築するタイミングにリプレースを利用するといった考え方です。そのための自分用のロードマップを作り、行動しながら修正していくようにします。
このロードマップはマインドマップとの複合的な役割になります。正解はなく、とにかくイメージを自分なりに表現し、ゴールまでの材料を入れ込みます。
・上位目標を設定する
迷子にならないために、一つ重要なことがあります。
最上位目標を勝手に決めることです。
ちなみに僕は「業務ストレス低減」を上位目標にしました。
正解は無いのですが、組織の状況を見て、どういった環境を整備すれば本質的な問題が解決するかをイメージしました。
そして情シスしか出来ないこと、情シスでは出来ないこと、をイメージしたうえで、ICTを利用する人が幸せになるような整備をゴールにしました。
これで分岐路で瞬時に判断出来るようになり、間違っていたならそこでアップデートすればいいだけと割り切りました。
決定権者にプレゼン
ひとり情シスにとって最も重要になることが伝えることだと考えています。この記事も、本来の目的は勝手に誰かに恩を送ることなのですが、伝えるといったトレーニングの延長線上にnoteを書いてたりします。
上司にプレゼンの機会を交渉し、承諾をもらえれば15分程度で説明できる資料を用意しました。
・伝えるべき要素
・クライアントのメリットと実績
→〇〇を導入した際には〇〇のメリットがあり、このような評価をいただいている。実績を踏まえ、この提案では〇〇が可能になり、(営業先でクラウドにアクセスできるなど)、顧客拡大に繋げることが可能になる。
・お金(必要な予算と効果)
〇〇といった問題があり、最悪のケースで、〇〇円規模な損失が発生する。〇〇を改善できれば〇〇リスクを回避できる。
・決定権者が社会的に評価される理由
→〇〇案件に対して改善することができるだけでなく、SDGsとしての取り組みにも組み込むことができ、組織の社会的評価が上がる。or 同業種の組織では未だ整備されていない。先行事例がほしい社長の方針とマッチングする部分もある。など
・スライド5枚
説明資料は最小限にし、言葉で伝えるようにします。これはLTを含め、数々の失敗から学んだことなのですが、詰め込むと伝わりません。(このnoteは必要な人に届けるため多少詰め込みましたが、)
細かい部分は質問に答えるようにし、小学生に説明するつもりで作るのがベストだと思います。(例えば、オンプレとクラウドの違いは、タンス貯金と銀行貯金といったイメージ)
質問に適切に答えることができるように手持ち資料(費用対効果などの根拠資料)を別途用意し、プレゼン後にはメールなどで詳細資料を提出します。
・A3用紙1枚
5分で説明できるA3用紙1枚の資料も用意します。
上司によっては、紙でないと無理といったかたもいらっしゃいます。そうでない場合は説明後に渡すようにするのですが、急きょプレゼン時間がもらえなくなるといったイレギュラーにも「5分だけお時間いただけないでしょうか」で対応できます。
実際には、ICT機器の仕様以外に上位目標に関連する「業務環境による生産性」、「労働者の離職率と業務環境の相関関係」の資料や「精神的な原因による病気休暇の統計データ」、「労働者が長期休暇となった場合と経費損失」などの資料も用意しました。
書籍やYouTubeなどでプレゼンの勉強をすることをおススメします。LTの経験が一番生きるところだと思います。時間対効果が最も大きい部分なので、プレゼン準備には時間をかける必要があると考えています。
一緒に頑張りましょう
ゼロからはじめ、昨年
・物理サーバーをHCI仮想サーバーに統合
・基幹系DaaS導入
・公式ホームページリニューアル
・パブリッククラウド導入
など、大規模リプレースを無事終える事ができました。同業種では県内初となるような構築ができ、取材や事例紹介をしていただく機会にも恵まれました。たくさんのまわりの方に助けられながら、自分なりに設定したゴールに、どうにかたどり着いたところです。
今年、コロナショック、またはギガスクール構想という、国家プロジェクトに関わらせて頂いく中で情シスの活躍の場が一層増えると感じました。
今も走りながらゴールを再定義し、ロードマップをアップデートしている最中です。
もともと経験や技術がほとんど無いにも関わらず、普通に情シスを務めている方が世の中にたくさんいることを知りました。不安や重圧を感じているのであれば、どうかひとりで悩まず、運用可能な環境づくりを目指して一緒に頑張りましょう!
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