「2024年2月の珈琲 CostaRica:ザクザク霜柱」
見事に立ち上がり、太陽の光を浴びて、キラキラ光るその姿は、まるで、歌舞伎役者が見得を切っているかのようでものすごく格好良い。
Costa Rica:ザクザク霜柱
凍えそうなほど寒い夜
闇より黒い土のなか
手を伸ばし足を広げて
地中のすべてを押し上げる
見事に立ちあがりあらわれたのは
キラキラ光るザクザク霜柱
苦みに隠れるすっきりとしたみずみずしさ
ざくり、ざくり。
こんなにも大きな音がするなんて。
こんなにも押しつぶす感触があるなんて。
我が家の庭に立つ霜柱は、それはそれは立派な霜柱なのだ。
こんなに立派な霜柱を、以前にもどこかで見た気がして、記憶を辿ってみたら、思い出したのはどこかの山の登山道だった。
平地に住むわたしが山に登りに行かないと見ることができないくらいの霜柱なのだから、そんじょそこらにある霜柱とはわけが違う。
やっぱり、それはそれは立派な霜柱に違いないのだ。
そんな霜柱が庭のあちこちに姿を現したものだから、こちらも、ちょっとした背徳感を持って、そのひとつをえいやとスニーカーの裏で押しつぶしてみた。
すると、ざくりととても大きな感触が体に響いてきた。
わたしのちょっとした背徳感なんて屁でもない、むしろ、押し返してやるという霜柱の心意気がスニーカーの裏から聞こえる。
それならそうと、そんな心意気のある霜柱なら、こちらもその姿をちょっと観察してみようじゃないかと屈んで、覗き込んでみた。
いやいや、そこには、わたしの想像より遥かに立派な霜柱が、太陽の光を受けて、キラキラ光りながら立っていた。
昨日の夜、「明日は霜が降りますよ。」とは言っていたが、空気中の水分が凍るのと土の中の水分が凍るのではこんなにも様子が違うものかと驚かされる。
降りると立つの違いは大きい。
これは、霜が降りますよと言っている場合ではない。
きっと、この立派な霜柱は、昨夜から今朝にかけての凍えそうなほど寒い夜を待っていたのだ。
そして、闇より黒い土の中から、手を伸ばし足を広げて、えいやっと地中のすべてを押し上げ、その姿を現したに違いない。
見事に立ち上がり、太陽の光を浴びて、キラキラ光るその姿は、まるで、歌舞伎役者が見得を切っているかのようでものすごく格好良い。
そんな立派な霜柱をザクザクと踏むなんて。
押し返された背徳感が戻ってきたけれど、ザクザク、その感触を楽しませてもらったのだった。
2月のCosta Ricaは、甘味と苦味のなかにすっきりとしたみずみずしさが光る味わいでした。
その様子が、土の中から現れる力強さと透き通る美しさを持つ霜柱にそっくりで、「ザクザク霜柱」という名前が浮かびました。