「2023年6月の珈琲 Burundi:はしりのライン」
ちょうど、6月の珈琲はなににしようかと考えていた頃だ。
東京で、梅雨のはしりを感じたのは…。
Burundi:はしりのライン
たくさんのモノを抱えた雲は
いく重にも膨らんでいた
次の季節へバトンをつなぐ
梅雨のはしりがやってくる
受けた雨粒を手に天を仰ぐと
夏へと伸びるラインが見えた
しっとりとした甘みが膨らんでいく
梅雨のはしり → 梅雨に先立って現れるぐずついた天気
(気象庁HP天気予報等で用いる用語 季節現象より)
少しもわっとした空気が肌を覆う。
逃れることのできない湿度に、そろそろ、梅雨がやってくることを感じながら、空を見上げた。
そこには、たくさんのモノ(主に湿り気)でいく重にも膨らんだ雲が連なっていた。
もう少ししたら、梅雨がやってくる。
梅雨のはしりを感じたなら、パソコンのキーボードをたたく指は、自然と、この季節に何度も観るアニメの再生ボタンへと伸びる。
そして、今にも雨が降り出しそうな匂いがするなか、アニメは始まった。
1時間もない再生時間の間に、アニメのなかでは、雨が降る日が何度も訪れ、そして、いく日かの晴れの日も訪れていた。
それなのに、わたしが暮らす日常では、雨は降りそうでいて、一滴も降らず、湿り気だけがどんどん増していくのだった。
いっそのこと、ざーっとひと雨降ったなら、この肌のうえでどんどん膨らんでいく湿気の粒たちも流れていくだろうに。
そうと思っていた矢先、ぽつりぽつりと雨が降り出した。
縁側から足を伸ばし、つっかけを引っ掛けて、軒先に出た。
天を仰いで、差し出した手のひらには、受けた雨粒が集まって、ひと掴みの塊となり、こぼれていった。
待ち焦がれた雨が降った。
ひとしきり降った雨のあとには、紫陽花と青空が夏へとのびるラインを作っていた。
梅雨のはしりの膨らんでいく湿気の感覚。
次の季節にバトンをつなぐ雨のあとに訪れた夏を思わせる青空。
この一連のラインを珈琲までで表現するのなら、しっとりとした甘さが膨れていく珈琲がいい。
豆はナチュラル。
甘さは大事だけれど、しつこくなく、雨のあとの青空を思わすすっきりとしたクリアな感じもほしいから、ブルンジの珈琲豆にしよう。
こうして、しっとりとした甘みが膨らんでいく6月の珈琲「Burundi:はしりのライン」が生まれた。