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人間の形
部屋の隅から虚しさが溢れてきた。
本当は胸の真ん中に空いた虚構を孕む穴からやってきた。
娯楽を求めて電子が動かす板の中を探すけれど、どれも酷く他人事で夢中になれるものはなかった。
道路で死んだ猫を思い出す。
内臓が飛び出した猫は蟻に運ばれて輪郭だけがそこに残っていた。
もうそれは猫の形をした跡で、猫じゃなかった。
魂がないものは何かの形だけが残って、元々の形に戻ることはできない。
人間の身体という殻の中に閉じ込められて、どこへも逃げることができなかった魂がいつの間にか死んで、
私の本体もここから死んでしまった。
死体を動かして、他人から生きていると思われている。
寂しさと虚しさが、ただの肉の塊の身体を更に無意味で無価値なものにする。
もう、死んでも逃げられないかも。
生きてるか死んでるか誰にも分からない。
この世界の虚構を胸に孕んで、