ひとひねりのグルテン
駅で、別れを惜しむ君まで愛しくて目にとどめておきたいから君がもう振り返らなくなる時まで手を振っている。振り返らなくなるのは君が先でいい。
今日もきみを絡めとるように君に手を振る。
君の指先と見慣れたこまり眉ばかり見ていたら、おばあさまとぶつかってしまった。
「よそ見してんじゃないよっ!!」
と人混みで、鼻先42cmで怒鳴られて、君から目を離してしまったし、君はもう振り返ってくれないし、なのに知らない人たちばかりわたしの方を振り返って見てくる。
みるなみるな。泣いてる人をじろじろと見るな。
なみだかけるぞ。ぶっかけなみだうどん。へいお待ち。
うどん屋の小娘なので、ひとひねりの勇気でうどんはコシが出るしつよいことも言える。ぐるてん。
くぃと顔をあげる。口をいー、と開く。ふつふつ、そろそろうどんが茹であがる。
「人生はよそ見と寄り道のくりかえしでしょ」
って返した
かった
てんぷら、よくばりすぎたかも。
そいじゃまた、うどん屋さんで食べそこねたおいなりさんの上で。