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神栖ワールドユースフットボール 大会開催の挑戦/Insight #16イベントレポート

割引あり

「大会を開催しよう!」
その決断や言葉には、どのような背景や決意があるでしょうか?

今回のインサイトでは、現役の自治体職員である「神栖市スポーツツーリズム推進室」堀 由絹氏をゲストにお招きし、「仕掛け」の本質について語り合いました。


<登壇者紹介>
ゲスト 堀 由絹氏
神栖市産業経済部 観光振興課 スポーツツーリズム推進室 主幹

ゲストコメンテーター  續木智彦氏
西南学院大学サッカー部監督

司会進行 和田タスク
前FC町田ゼルビアスタジアムDJ

タスク:第16回は「神栖ワールドユースフットボール 大会開催の挑戦」です。今回のゲストは堀さんです。

堀:よろしくお願いします。もともと大阪市職員として働いていました。子どもが茨城の高校のサッカー部に入ると決めたので、ケガや食事などのサポートをなるべく近くでしたいと思い、試験を受け直して、神栖市役所に社会人採用枠で入れてもらいました。

タスク:お子さんは、なぜ進路を関東エリアに選んだのですか?

堀:もともとJリーグの下部組織でさせてもらっていました。Jリーグの下部組ってユースに上がるのが第一目標になると思うんですが、上がれなくて。ただ、そういったところでやらしてもらってたので、いくつかお声がけいただいた中に茨城県の鹿島学園さんが入ってて。

関西は学校とグラウンドが離れている、もしくは他のクラブと共用で、コートの半面だけを普段は使っていて、土日だけ一面使えるという環境もある中、鹿島学園さんは学校・グラウンド・寮が、徒歩3分圏内ぐらいに全部立地しているんです。朝練も自主練もできる。

やっぱりユースに上がれなかった以上、人より努力する必要があると朝から晩まで、サッカーができる環境に身を置きたいという本人の希望がありました。

神栖はスポーツの交流人口を増やすポテンシャルがある
@12:50

タスク:神栖といえば「波崎」で通称が通るぐらい、サッカーのイメージが強いんですけども、実際に来てどんな印象でしたか。

堀:スポーツの交流人口増加をめざしている「スポーツツーリズム推進室」に配属になったんです。最初に「サッカーのグラウンドが官民合わせて100面あるんだよね」って言われて… 大阪に住んでましたが、人工芝も天然芝もゼロで土グラウンドが当たり前でした。ボールを蹴れる公園も少なくて。

だから、なんで神栖が100面にもなったのか疑問に思いました。いろいろな方に聞くと、もともと神栖市は海水浴のお客さんを相手にしていたけれど、Jリーグ開幕のときにサッカーに目をつけて、いくつかの民宿さんがグラウンドを作って大会をしたら思いのほか集まった。グラウンドの数が足りなくて、民間の力で増やされ、気づいたら100面になったそうです。

バスケットコートが3面ある「神栖防災アリーナ」もあって、屋内もできるんです。神栖はスポーツの交流人口を増やすポテンシャルがあるし、スポーツ全般に強いんだと思うんです。宿泊施設もノウハウをお持ちだと思います。なので、市としてもツーリズム推進室を作って、PRしていくのが市の仕事なんじゃないかなと。宿泊施設でグラウンドを持っていても、なかなか届きにくいのですが、市を挙げてやることによって、まとめて広報ができる。

タスク:市としても力を入れてることを全然知らなかったです。

堀:公共・民間どちらか一方ではできないと思う。ほぼ民間のグラウンドが多いですし。市の「海浜サッカー場」のA面は国際基準に合致してて、J3のヴァンラーレ八戸は、開幕前の2次キャンプを張って、そのまま開幕戦に出るというのを2年ほどしていただいていて。プロでも通用するような質の高いものを、公共施設で持ちながら、大きな大会は民間と一緒になってできるのが強みなんだと思います。

タスク:スポーツのポテンシャルがある、防災アリーナを含めて。僕らはそれを知らなかったんですよね。もっと広げていく手というのはどうお考えですか?

堀:いろいろやってます。今日は東京ビッグサイトに出展させていただいてて。この前は「ゲキサカ」さんにPR広告をさせてもらいました。

(記事)茨城県神栖市に100面超のサッカーグラウンドがあるって知ってた?旅館が独自グラウンドを所有する特異スタイルに大いなる可能性
https://web.gekisaka.jp/news/university/detail/?403638-403638-fl

タスク:今回の「神栖ワールドユース」もその一環ですか?

堀:そうです。関東の方たちは波崎を知っていても、関西では知られていないんですよね。大きな大会だったら「J-GREEN SAKAI」ですし、なかなか周知ができてない。ただ、知ってもらえさえすれば、ありなのかなって。成田空港からバスで40分ぐらいで来れるので。


今の自分の立ち位置を知ったうえで課題を見いだして再チャレンジしてほしい
@21:51

タスク:堀さんが神栖ワールドユースの陣頭指揮をとることになったのはなぜなんですか?

堀:いろんな兼ね合いですね。神栖市としてはたくさんの方に知っていただきたいというのがひとつです。あとは息子も高校生なので。昔小学校のときに国際大会に出させてもらったのですが、そのときに変わったんです、意識が。「このままでは全然通用しないから、ご飯いっぱい食べなきゃ、もっと上手くならなきゃ」と、親が見ててもわかるぐらい。世界と、強い子たちと戦うと、一瞬にして子供の意識を変えるのを目の当たりにしてたんです。

高校生って、最終的に進路をどうするか本気で悩みます。大学進学含め、サッカーをまだ続けるのか、続けるにしてもどういった形で関わるのか決めていく段階だと思うんですね。中には選手として海外に出たい子もいると思うので、その子たちに、世界や強豪校の子たちと戦ってもらって、今の自分の立ち位置を知ったうえで課題を見いだして再チャレンジしてほしいという思いが強くて。

タスク:自治体のPRの課題と堀さんの息子さんがサッカーの国際交流をした後の影響というところで、そこを合体させていく。それを実際に催しにしていくってすごいですね。

堀:大会をしたいという思いはみなさんあって。私も市役所の職員としてもそうですし、外から来たから余計に100面っていう多さにびっくりして、「大会ができるんじゃないか」という思いがあったので。夢を語ってると、一緒に共感してくれて「やろうよ」って言ってくれる人が現れるんですよね。

タスク:「他の自治体でスポーツで街作りを推進している情報はお持ちですか」と、チャットをいただきました。

堀:「Japan Sports Week2024」にもいくつか自治体さんが出られてました。沖縄、福島、愛媛など力を入れてる自治体さんはいくつかあると思いますし、「地域スポーツコミッション」としてされているところなど増えていっている気はします。

タスク:神栖ワールドユースはどんなチームが来る予定なんですか。

堀:スペインのマドリード州選抜の子、順天堂大学さんのU-20が出てくださいます。前橋育英高校さん、尚志高校さんなど、私としては強いところとそれ以上に強いところと戦っていただく必要があると思ってて。勝つのもいいんですけど、課題を見つけて、ここから日本代表なり海外に出る子が出てほしいです。

タスク:出場校一覧を見ましたがすごいですね。

堀:全部で16チームです。すべてトップチームで出ていただけます。大会形式は4つのグループに分けて、トーナメントになります。どこの試合を見ようか私はワクワクしてます。

タスク:基本的にトップのチームが来るということで、市役所のツーリズム課は腰抜かしてるんじゃないですか?

堀:びっくりですよね。何をするにも賛否両論あると思ってて、意見を聞くべきだと思ってるんですけれども、こういった機会によしと捉えて、次に進もうとしてくれてる方もいらっしゃって。たとえば、FM鹿島の「かみす放送局」から取材の要望があったり。「市長がプレゼンターをしたらいいんじゃないか」とか、たくさんの方からお声がけいただいて盛り上がってます。

タスク:批判的な意見にはどんなものがあるんですか?

堀:海外の人たちが来ることに怖さがあるようで。ポイ捨てなどモラルの問題もあると思うんですけど、「市がやるんならちゃんとしてよ」というのは、もちろんその通りだなと。

タスク:神栖市の外からは、評判とか何か問い合わせなどありますか?

堀:茨城新聞の記事がYahoo!ニュースで取りあげていただいたことによって、一気に知れ渡った感じがあります。「スペイン語を話せるので何か協力できないか」とありがたいお問い合わせをいただいたり。市を挙げてといっても、主催ではなく、あくまで実行委員会がいて、注目度はあるもののたくさんある大会の中の一つにすぎなく、淡々とやっていたんです。

ところが、中学校のサッカー部の先生から「これだけのチームが来るなら、うちの中学生に見せたいし協力したい」と声をいただいたんです。今回の趣旨は「強豪と戦える機会創出」ではありますが、記事は特段に打ち出している内容ではないのに、それを汲み取っていただいて。どうせなら一番近くで見ていただきたいなとボールボーイに協力していただくことになってます。

スペインの子たちにも、「単純に強いから呼んだんだよ」ではなく、来るからには神栖や日本の文化を知っていただきたいので、大会前日には波崎高校で国際交流を行おうとしています。


神栖に来れば常に対戦相手がいるという状態にできれば
@52:50

タスク:これだけの規模だとお金がかかると思いますが、運営費はどこから捻出しているんですか?

堀:市からは助成金が出ますが、大会にかかる費用からみれば微々たるもので…。スポンサーを募集させていただいたり、来年もっと大きくしたいので、クラウドファンディングもさせていただいてます。どこかが儲けるとかというのが、本当にないんですよね。メインスポンサーもとってないです。

タスク:続けていくにあたり、第1回は非常にプレッシャーですね。

堀:もうかなりですね(笑)。1回目に参加していただけるってすごい事だなと思ってまして、1回目って得体がしれないじゃないですか?そこに参加して協賛していただくって、感謝してもしきれない思いがあります。

タスク:2回目の開催も?

堀:大きくしていきたいです。ポテンシャルがあると思うんで。各国とつながりのある方からも「来年の日程が決まったら聞いてみる」と声をかけていただいて。国が違うと休みの期間が違ったりするので、慎重に日程は決めていくのですが、いろいろな国にアプローチして大会ができればと思います。

タスク:個人として、神栖市として今後やりたいことはありますか?

堀:コロナ以降、繁忙期にお客さんが戻ってきているものの、閑散期は戻ってきていないので、民間の力が必要です。今回も、スペインの子たちの受け入れを「できる限りやるよ」と言ってくれる方たちがいる。市だけが率先してやっても意味がないので、みんなで試行錯誤しながらインバウンドを増やしていきたいなと思います。神栖に来れば常に対戦相手がいるという状態にできれば、常に閑散期も来ていただけるのではと思います。

私個人としては、責任というか、みんな一緒にやってくれてるので、手伝っていただく方が集まれば集まるほど怖くはなりますよね。

タスク:子どものサッカーを一緒に近くで応援したいとこから始まり、神栖のPRをこんな形でサッカーと絡められるのですね。續木先生、堀さんのエネルギーはすごいですね。

續木:大会を通して、選手になりたい子が出てくるんだろうけど、参加したことによって、スポーツが言語や宗教の壁を越えることに気がついたり、異文化交流・理解が深まったりするところにスポーツの可能性がある。人材育成の視点で見ても、スポーツツーリズムが役割を担っている部分があるのでは。人が巻き込まれていくのも面白さだし、スポーツの魅力がそういうところにも隠れていると感じました。可能性のあるイベントになるんじゃないかと楽しみですね。

今日は堀さんをお迎えしてお届けしました。最後に本日の率直な感想を聞いてもいいですか。

堀:本当にみなさんとつながっていくのが楽しいですし、ドキドキです。

タスク:大成功を祈っております。今日はありがとうございました。次回またお会いしましょう。


次回の案内と「The Blue Print」のお知らせ

タスク:次回は8月9日(金)20時〜21時です。タイトルは「進化する大学サ
ッカーの意義と役割」です。
https://insight-240809.peatix.com/

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