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スイングのタメについて(後編)

皆さんこんにちは。前回に引き続き、ダウンスイングのタメについて私の個人的見解を解説していきます。「そう思う!」「いや違うでしょ!」等なんでもコメントお待ちしてます。

まだ前編を読んでいない方は、こちら↓

前編のおさらい

タメとハンドファーストの関係

前編のポイントは「ヘッドスピードに適した弾道と飛距離の最適化」でした。

飛距離を最適化する上での基準となるのがヘッドスピードです。そのため、一般的なアマチュアがプロと同じタメやハンドファーストを実現したとしても、打球が低く打ち出され、結果的にボールはドロップしてしまう可能性が高くなります。

重要なのは、タメがあるからヘッドスピードが速いわけではないということです。むしろ、ヘッドスピードが速いゴルファーは、打球が高くなりすぎてスピン量が増え、飛距離のロスや縦距離のコントロールが難しくなるのを防ぐために、タメを作っているとも言えます。

また、前編でお伝えした「PGAプロがアドレスからトップまでの間に行う両手首の橈屈量は?」という質問の答えですが…正解は平均で約20度です。これはあくまで平均値で、多少のバラつきはありますが、マイケル・ジェイコブスのセミナーでこのように紹介されていました。


▍理解しておきたいポイント4つ

ここから、タメが大きい=必ずしもいいスイングではない理由を、より具体的に説明していきます。

まず、ゴルフスイングにおいてタメがあるかないで影響を受けるデータには、次の3つがあります。

・ボール初速
・入射角
・ダイナミックロフト

そして、タメの適正値を判断するための要因が2つあります。

・クラブの番手
・ヘッドスピード

これらのポイントを押さえながら、以下の4つの視点から詳しく見ていきます。

【1】ボールへのエネルギー伝達
【2】入射角とダイナミックロフトへの影響
【3】クラブによって異なる見た目
【4】ヘッドスピードによる違い

ポイント①:ボールへのエネルギー伝達

タメが大きいスイングでは、ボールへのエネルギー伝達が増し、ボール初速が上がりやすくなります。ミート率も向上しやすいため、一見、タメが大きい方が良いように感じます。

…が、ここで注意が必要です。必ずしも「ボール初速アップ=飛距離アップ」ではないということを忘れてはいけません。

いくらボール初速やミート率が高くても、最終的に飛距離を決定するのは、スピン量や打ち出し角などの「ランチダイナミクス」が適正であるかどうかです。これが整っていないと、ボールは十分に遠くへ飛びません。

実際にあった話しで、以前、知り合いの女性インストラクターのトラックマンデータを見る機会がありました。彼女は非常にゴルフが上手でしたが、ヘッドスピードに対してドライバーの飛距離が伸びていませんでした。

彼女がもっと飛距離を出したいと言うので、私は「タメを減らしてランチコンディションを改善すれば飛距離が伸びるのでは?」とアドバイスしました。

なぜなら、彼女のヘッドスピードは38m/sと平均的でしたが、タメが男子プロ並みに大きかったため、初速やミート率は高くても、ボールを空気中でキープするのに十分な打ち出し角やスピン量が不足していたのです。

そこで、トップからヘッドをリリースするように(感覚として)スイングし、インパクトでロフトを増やすように(感覚として)練習を勧めました。その結果、スピン量が2000〜2500rpm、打ち出し角が17度近くまで改善され、わずか10分ほどで飛距離が適正に近い220ヤードまで戻りました。

彼女によると、以前、知り合いのインストラクターから「タメを大きくしないと飛ばない」とアドバイスされ、それ以来タメを大きくすることに取り組んでいたそうです。しかし、タメを大きくして飛距離が伸びる人もいれば、逆に飛距離が落ちる人もいるのです。「タメ=飛距離アップ」とは一概には言えない理由がここにあります。

続いて、次のポイントに進みましょう。

ポイント②:入射角とダイナミックロフトへの影響

打球がドロップしないよう、ボールを空気中にしっかりキープするためには、ヘッドスピード(HS)に合った適正な入射角とダイナミックロフトを維持することが重要です。

なぜなら、打ち出し角はほぼダイナミックロフトで決まり、スピン量は入射角とダイナミックロフトの組み合わせでほぼ決まるからです。

ゴルフスイングを正面から見たとき、P6(ダウンスイングでシャフトが地面と平行になるポジション)の手の位置を確認することで、おおよその入射角とダイナミックロフトを予測することができます。

・手元が左サイド
実際に左のイラストのようなスイングをすると、かなり厄介なことになりかねません。入射角が鋭角になりすぎ、ダイナミックロフトが立ちすぎる可能性が高く、最悪の場合、ボールの上を叩いたり、天ぷらショットや空振りにつながるかもしれません。

手がこれだけ先行しているのにクラブヘッドが大きく遅れているため、この状態からボールを打つことは可能ですが、楽にボールを打つことは難しく、できれば避けたい状況です。

・手元が右サイド
一方、イラスト右の例は、上から打ち込む心配が少ない理想的なP6ポジションです。ここからインパクトに向かって体を大きく左にスライドさせない限り、問題はほとんどありません。むしろ、少しスライドしても理想的な入射角を実現できる、安心できるポジションです。


このように、入射角とダイナミックロフトは、シャフトが地面と平行なとき(P6)の手の位置を確認することで、ある程度予測することができます。もちろん、あくまで「だいたい」の話ですが。

例えば、ドラコンプロのように、8〜9度のアッパーブローでロフトを立て、ロースピンでビッグドライブを放ちたい場合、P6で手があまりに先行しすぎないことが、理想的なアッパーブローでボールを捉えるポイントになります。この手元が体から遠いP6が、いわゆる「ワイドなP6」と言われるポジションです。

P6ってなに?と思った方は、次の過去記事でPシステムについて解説しているのでご覧ください。


ポイント③:使用クラブによる見え方の違い

使用するクラブの番手によって、理想的なインパクトコンディションが変わるため、目指すべきタメの見え方も自然と変わってきます。

基本的に、アイアン(特にミドル〜ショートアイアン)はダウンブローで打つことが求められるクラブです。そのため、P6ではドライバースイングよりもタメが大きい方が、上からボールに打ち込む際に有利になります。

一方で、ドライバーやフェアウェイウッドのような長いクラブは、アッパーブローやレベルブローに近い緩やかな入射角で打ちたいものです。この場合、P6ではタメが小さい方が、理想的な入射角を実現しやすくなります。

つまり、「良い動きをすれば良い球が打てる→真似しよう」という考え方ではなく、「番手ごとに理想のインパクトがある→それを実現しやすい動きがある→その動きを取り入れよう」と考えられると、より効果的なスイングが身につくはずです。


ポイント④:ヘッドスピードによる違い

前編でも触れましたが、タメにはヘッドスピードに応じた適正値があります。

極端な例ですが、一般的なアマチュア女子がダスティン・ジョンソンやキャメロン・チャンプと同じ量のタメを目指した場合、飛距離がアップするでしょうか?

ヘッドスピードが遅い人には、比較的タメが少ないスイングの方が適しています。タメが少ない方が入射角が緩やかになり、ダイナミックロフトが寝るため、打ち出し角度が高くなり、スピン量も増えます。その結果、キャリーが伸びやすくなります。

一方で、ヘッドスピードが速い人には、比較的タメが大きいスイングの方が効果的です。タメが大きいと入射角がより鋭角になり、ロフトも立てられるため、ボールの吹け上がりを抑えることができ、結果としてキャリーが伸びます。

もちろん、クラブ自体のスタティックロフト(デフォルトのロフト角)によって、インパクトの瞬間に適正なダイナミックロフトを得るためのスイングの見え方は多少変わります。


▍適正なタメとアーリーリリースを判断するには?

タメにはヘッドスピードに応じた許容範囲があることがわかりましたね。では、どのようにチェックすればよいのでしょうか?

多くの一般ゴルファーは、Gearsのようなハイテクマシンを気軽に利用できる環境にないと思います(私もそうです)。そのため、手軽にできる方法として、スイングを2Dで正面から撮影し、「手の移動距離」と「ヘッドの移動距離」を観察することで、タメの強さや大きさをチェックする方法がお勧めです!

◆必要なもの

1. スローモーションモードで撮影できるスマートフォンやタブレット
2. 三脚
3. スイング分析アプリ


これらが揃えば準備は完了です。

次に、トップからインパクトまでのダウンスイングを2つの段階に分けてチェックしてみましょう。

1. P4〜P6(トップポジションからシャフトが地面と平行になるまで)
2. P6〜P7(シャフトが地面と平行なポジションからインパクトまで)

ここから、ドライバースイングにおけるタメの確認方法を具体的にご紹介します。


▍タメのチェック方法

①P6の手の位置をチェックしよう

左:HS54m/sのゴルファー
右:HS42m/sのゴルファー

まず、トップからP6のポジションでタメが解けていないか、もしくは強すぎないかを確認します。

・左:ヘッドスピード54m/sのゴルファー
手が右足の前にかかる位置にあります。
・右:ヘッドスピード42m/sのゴルファー
手が右足の外側にあります。

一般的なヘッドスピード42m/sのゴルファーがP6で手がヘソよりも高い位置にある場合、タメが解けていると考えられます。しかし、飛距離のロスが気にならないのであれば、そのままでも問題ありません。

②手がヘソの前のときのシャフトの角度・ヘッドの位置をチェックしよう

左:HS54m/sのゴルファー
右:HS42m/sのゴルファー

次に、手がヘソの前にあるときのシャフトの角度とヘッドの位置を確認します。

・左:ヘッドスピード54m/sのゴルファー
シャフト角が約60度。
・右:ヘッドスピード42m/sのゴルファー
シャフト角が約20度。

一般的なヘッドスピード42m/sのゴルファーが、ここで左のようなシャフト角を持っている場合、振り遅れになる可能性が高くなります。その結果、プッシュアウトや引っかけが出やすくなり、飛距離のロスも大きくなるでしょう。

③シャフトと左腕が一直線になるときのヘッドの位置をチェックしよう

左:HS54m/sのゴルファー
右:HS42m/sのゴルファー


最後に、シャフトと左腕が一直線になるときのヘッドの位置を確認します。

・左:ヘッドスピード54m/sのゴルファー
ヘッドが左足前か、左足を過ぎた位置にあります。
・右:ヘッドスピード42m/sのゴルファー
ヘッドが左足の内側付近、つまりインパクトの瞬間かその直前にあります。


このように、簡単にチェックすることができます。適正なタメを実現できると、入射角やダイナミックロフトが適正化されるため、たとえボール初速が少し落ちたとしても、結果的にトータルの飛距離が伸びる可能性が高くなります。

さらに詳しくチェックしたい方は、使用クラブのスタティックロフトや自身のヘッドスピード、シャフトのキックポイントも考慮し、専門家に相談するのが良いでしょう。


▍タメに影響を及ぼす要素は色々ある

タメに直接的に影響を与える体のパーツは、手首の角度だということをお話しましたね。

しかし、タメに間接的に影響を及ぼす動作もいくつか存在します。例えば、以下のような要素が挙げられます。

1. P4〜P5のウィズ(体幹から手元までの距離)
2. プレッシャーシフト(重心移動)
3. ハンドパス(手元の軌道)
4. シャフト角(シャフトの傾き)
5. 回転のシークエンス(体の回転順序)
6. 上半身の軸の傾き

これらの要素が複雑に絡み合い、タメに影響を与えています。

よく耳にする「手打ちになってる」や「下半身が使えてない」といったアドバイスは、これらの要素を簡潔にまとめた言葉ですが、逆に理解しにくい場合もありますよね。ゴルフスイングの各要素を分解して考えることで、より具体的に自分のスイングを改善するヒントが得られるはずです。


▍タメの大きさとシャフトの相性

タメが強いゴルファーには先調子のシャフト(手元が硬いもの)が合い、逆にタメが少ないゴルファーには手元が柔らかいシャフトが良い、という話をよく耳にします。これは、タメが強いゴルファーが手元が柔らかいシャフトを使うと、シャフトが大きくしなりすぎて、ボールをうまく打つのが難しくなるからです。

個人的には、タメはスイング改造の中でも比較的簡単に変化を出せる部分だと思うので、もしクラブが合わなくなったと感じる場合は、フィッティングを受けてみることをお勧めします。

フィッティングを受けるタイミングについては、以下の2つの方法が考えられます。

1. スイング改造が一段落してからフィッティングを受ける
スイングが安定してからフィッティングを受けることで、最適なクラブを選ぶことができます。

2. スイング改造の途中でフィッティングを受ける場合
この場合、自分が取り組んでいるタスクや今後予想されるスイングの変化をしっかり理解した上でフィッティングを受けることが重要です。何をどう改善したいのかゴールが明確でないと、フィッティングの方向性が定まらず、結果的に時間やお金が無駄になることがあります。

ただし、今のクラブに飽きて新しいクラブを楽しみたいという目的であれば、フィッティングを受けるタイミングはいつでもOKです。新しいクラブを手に入れることで、ゴルフ業界の経済活動にも貢献できますし、楽しみも増えますからね!

また、スイングを大きく変えたくない場合、フィッティングでクラブを調整し、悩みを解消することは全然ありです。むしろ、その方が簡単かもしれません。


▍おわりに

今回は、簡易的なチェック方法をご紹介しましたが、ゴルフスイングにはさまざまなタイプがあり、明確な「正解」や「不正解」は存在しません。上手なゴルファーに共通する動きやパターンは見つかるかもしれませんが、全ての人に同じスイングを当てはめることは不可能です。

こういったブログ記事は、「こうしなきゃダメなんだ!」と盲信するのではなく、「知識として一旦吸収しておく」程度で参考にするのが良いでしょう。いつか、その知識が繋がり、新たな気づきや成長に役立つ日が来るかもしれません。

それでは、また次回お会いしましょう。

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