見出し画像

P6右肘とサイドベンドについて(マッチアップ編)

この記事では、ダウンスイングで右肘の位置が体に近い「ナロウ」と体から遠い「ワイド」の2タイプにスイングを分けて、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説しています。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

ゴルフを長く続けているんだなと改めて感じる瞬間の1つにゴルフスイングの流行の入れ替わりがあります。ゴルフスイングは、ゴルフクラブを使ってボールを打ち、ターゲットまでボールを運ぶのが目的ですが、時代によって様々な流行が生まれるのが面白いですよね。

どんな時代でも、やはり強い選手のスイングやその選手の得意なショットが一種のトレンドとなり、アマチュアゴルファーだけでなくプロまでもがそれを真似しようとします。

2000年初頭にはXファクターが流行り、わたしがゴルフを始めた2007年ころはスタック&チルトが大流行していました。その後も、ローテーションスイング、モダンリリース、パッシブトルク、デシャンボーによるワンプレーンスイング再燃など新しい流行が次々と誕生しては消えていっています。

しかし最近では、それも落ち着きつつあるのかなといった印象。その背景には、データ分析の進化があるからでしょうか。ショットの分析だけでなく、効果的な体の動きや力のかけ方が科学的に解明され研究が進んでいます。



スイングの動きには相性がある

ゴルフスイングは、スイングの動きや力の出し方をどのように組み合わせるかによって、ショットの結果が大きく左右されますが、欧米にはこの概念を深く掘り下げた【マッチアップ】と呼ばれる考え方を重要視するコーチが多くいます。

ゴルフスイングは様々な動作や力を繋ぎ合わせておこなう回転運動なので、もちろん連鎖する動きには相性があります。打ちたいショットに対して理に合わない動作を混ぜてしまうと、打ちたいショットを打てる確率が大きく下がります。ドローが打ちたいのにフェードやスライスの要素が多いスイングをしていたら、ドローはなかなか打てませんよね。

マッチアップの代表的な例として、スイング要素を「プラス」や「マイナス」で評価し、それらを組み合わせてショットをコントロールする方法があります。

みなさんお馴染みのクラブパスやクラブフェースの向きだけでなく、体重移動や体の回転度数、リリースのタイミングや手の動く方向などを細かく「プラス」と「マイナス」に分け評価します。ドローを打ちたいなら、ドロー要素のある動きを積み重ねればドローを打てる確率がめちゃくちゃ高まるといった感じです。

前置きが長くなりましたが、今回はゴルフの再開に向けて久しぶりに練習したときに気づいた「右肘の位置と上半身のサイドベンドの相性」についての記録です。


気になった右肘のミギーの居場所

ゴルフメディアを見ていると「右肘はある程度離した方が詰まりが解消できていい」や「右肘は腰に当たるくらい引きつけた方がいい」など、正反対の意見が飛び交っているダウンスイングの右肘の納めどころ問題。

個人的に、右肘の屈曲(曲げ具合)とライトサイドベンド(右側屈)は「1つの流れ」として大きな相関関係にあると思っています。

それぞれの肘の位置にあった上半身の使い方を紹介します。


下の画像は通称「P6」とよばれる、ダウンスイングでシャフトが地面と平行になるポジションです。シャフトの高さは同じですが、体に対する右肘の位置が大きく異なります。肘が体に遠い状態を【ワイド】、肘が体に近い状態を【ナロウ】とカテゴライズします。

グリッジ13

①肘がナロウなタイプ

上の画像の右側が「ナロウ」な状態とカテゴライズされます。

これは手と体の距離が近く狭い状態なので「Narrow(ナロウ)=狭い」と呼ばれています。このポジションだけでなく、スイング中に手が体に近いときはどのポジションでもナロウと呼ばれます。

ナロウ=手が体に近い、と覚えておくと簡単ですね。

ナロウに右肘を使うタイプのスイングは、腰から腰の高さの間のスイング(P6〜P8間)で、しっかり上半身の右側屈を使ってスイングするがよいマッチアップといえるでしょう。

普通に考えて、このくらい右肘が体に近いと、かなり大袈裟に右サイドベンドを使わないと、手首を解かない限りクラブがボールに届きません。

ただし、あまりに右肘がヘソに近くなると「ディープエルボー」と言わるスイングエラーになってしまうので注意してください。ディープエルボーはインパクトで効率よくクラブをリリースすることができなくなる動きなので避けるのが無難です。

最近の選手だと、GGスイングでお馴染みのジョニー・ルイスがこのナロウタイプです。


②肘がワイドなタイプ

続いて、画像左の右肘が比較的体から離れている状態をワイドな状態とカテゴライズできます。右肘の角度は120度くらいでしょうか?先ほど同じく、スイング中どのポジションであっても、手と上半身の距離が遠い状態をワイドといったりします。テークバックでも「ワイドなテークバック」ってよく聞きますよね。

ワイド=手が体から遠い、と覚えておくと簡単ですね。

ダウンスイングでワイドに肘を使うタイプは、P6〜P8で肩をあまり縦に使わず水平気味に回転して、上半身の右側屈を少なめにスイングするのがよいマッチアップとされています。

ナロウと同様に、ワイドな肘の位置で上半身の側屈を大きく使うとクラブヘッドが地面に早く届いてしまうため相性が悪いです。


クラブによって適正な肘の位置が少し変わる

一般的にクラブが長いほど、右肘をワイドに使った方がいいとされています。

その理由は、長いクラブでナロウに肘を使うと、入射角が過度に鋭角になりますし、インパクトで詰まりやすくなるためです。長いクラブで鋭角+詰まるのは最悪のコンボですよね。

比較的ヘッドスピードの遅いジュニアや女性、シニアだけに限らず、これは一般男性ゴルファーにも言えることです。ちなみに、ワイドタイプのスイングは腰にも優しいので、腰痛持ちや、産後の女性に特におすすめしたい振り方の1つです。


ワイドタイプのメリットとデメリット

メリット①:エネルギーロスが少ない

右肘をワイドに使えると、インパクトまでクラブヘッドを加速させ続けることが容易になります。

というのも、ゴルフスイングには、プロに共通する効率的な動きがいくつかあり、その中の1つに手の高さがあります。意外かもしれませんが、正面からスイングを見たとき、手の高さが1番低くなるのはインパクトではなく、P6の位置なんです。P6で手元が最も低くなり、その後手元はインパクトへ向け上昇していきます。

ダウンスイングの後半では、体の回転と共に左サイドが上昇する動きが起きます。P6は、ダウンスイングの過程でクラブヘッドがボールに向かって下りてくるため手元が最も低くなりますが、インパクトに向けて体が回転し続けると、左サイドが切り上がり、それに伴って手元も上昇します。しかし、左サイドがしっかりと切り上がらない場合、体の回転が止まりやすく、結果的にクラブヘッドの速度も減速してしまいます。

P6でワイドに右肘を運んだ方が、この一連の動きをおこないやすく、結果としてヘッドスピード減速によるパワーロスを防ぐことができます。

メリット②:入射角が緩やかになりアイアンが吹き上がらない

右肘を体から少し離すことで、クラブヘッドの動きが描く円弧がより緩やかな曲線になります。クラブの入射角も鈍角になるため、インパクトが点ではなく、長いゾーンになりやすく、より安定したショットが期待できるでしょう。特にアイアンショットではボールの吹き上がりを防ぐことができます。

メリット③:スイング全体がシンプルかつ効率的になる

ワイドに右肘を運べば、体の正面に右肘を簡単にキープできるため、アマチュアによく見られるインパクト直前の、クラブヘッドの小手先ムーブも必要ありません。たまに、クラブヘッドがまるで自我を持ったかのように暴走している人を見かけますが、それも回避しやすくなるでしょう。

ボールを打つための追加動作が必要なくなるので、スイングがシンプルになるのではないかと思います。(これは個人の主観です)

デメリット:やり過ぎると球が上がらなくなる

ヘッドスピードが遅い、または力のないゴルファーが右肘を体から離しすぎると、ショットの高さが出にくくなる可能性があります。

過度に右肘を体から離し「すくい打ち」になってしまうと、インパクトでボールに適切な圧力をかけることが難しくなります。その結果、ボールを「潰す」ことができないので、インパクトのエネルギー伝達が十分に行われず、ボールが高く上がらない、または距離が出ないショットになることがあります。

特にヘッドスピードが十分でないゴルファーがやり過ぎると、打ち出し角とスピン量が足りず、ボールが上がらない原因になる可能性が高いです。

それぞれのスイングスピードに応じて、右肘の位置を適切に調整することが重要なので、スイング分析に慣れていないアマチュアがその位置を自己判断するのは難しいかもしれません。


ナロウタイプのメリットとデメリット

メリット①:右側屈との組み合わせでインサイド・イン軌道に振りやすくなる

ナロウタイプは、右側屈をうまくマッチアップさせる(組み合わせる)とクラブパスをニュートラルに近づけることがでいます。

ナロウタイプは、右肘を体に引きつける方向やタイミングによって、クラブパスがインサイド・アウトにもアウトサイド・インにもなりますが、ほとんどの場合、肘を引きつけた勢いのままインサイドからクラブが降りてくるケースが多いのではないでしょうか?

右肘を体に引きつけ肩を縦に回転できると、体の前に手の通り道ができクラブパスをニュートラルにコントロールすることができます。

メリット②:速く体を回転できればボールを強く潰せる

右肘が体に近いと、クラブがインパクトエリアに到達するまでの距離が短くなるため、体全体をより速く回転できれば、十分なエネルギーをクラブヘッドに伝えることができます。

ただし、右肘がナロウだと下半身と上半身を連動させ、タイミングよくクラブをリリースしなければボールを潰せないため、ワイドほどミスの許容が大きくないので、それなりの練習が必要になります。


デメリット①:上半身を右側屈させないと事故る確率が上がる

先ほど、ナロウ肘は右側屈との相性がいいと紹介しましたが、逆に右側屈を使わず上半身を水平に回転させた場合、ヘッドがアウトにブレやすくなるためシンプルにそのままアウトからクラブが運ばれるか、それを避けて他のスイングエラーに繋がる可能性が高いです。アーリーリリースやキャスティング、手元の浮きなどに注意しましょう。

デメリット②:スイングスピードの減速

ダウンスイング初期で肘をナロウに体に引きつけると、クラブのラグ(タメ)を長く維持でいないので、ヘッドスピードを最大限加速することが難しくなります。

GEARSなどの3Dモーションキャプチャーによる計測では、ほとんどのプロゴルファーがトップからダウンスイング初期にかけて右肘の角度を広げていると確認しています。今回、詳細は割愛しますがこれがラグを維持するための重要な動きなので、肘をすぐたたんでしまうとヘッドスピードが上がりづらくなるのです。

ナロー肘は、その他にもフォロースルーの左肘の引き(チキンウィング)や、
ハンドルドラギング(Handle Dragging)など、さまざまなスイングエラーに繋がりやすいので、広い視野を持ってバランスを見ながら取り組むことが大切です。一概にナロウだけが悪い動きという訳ではないですが、もしあなたが上に挙げたようなことに悩んでいるのであれば、右肘を少し離したり、引きつけるタイミングを調整することで改善を試みてもいいかもしれません。



個人的なおすすめ

わたしはワイド推しです。

男女問わず、現在ドライバー240ヤード以上飛ばない人は、気持ちワイド目に右肘を使えた方がいいのではないでしょうか。

ナロウ肘にすると入射角が鋭角になりやすいというのもありますが、ナロウ肘自体が普通に難易度が高いテクニックなので、自分のものにできるまで時間と根気がいりそうです。



もしワイド肘にしたいなら

もしP6でワイド肘にしたいなら、トップポジションを見直すとより簡単にワイド肘になれます。ポイントは下の画像を参考に以下の2点です。

①腰の動かし方
②正面から見て手が隠れない

ナロウ肘を習得したい人は、ダウンスイングのハンドパスや手首の使い方のマチアップを調べてみると、相性のいい動きがあると思います。

グリッジ23

個人的に、右腰側に少しスペースを作るけど、リバースピボットや左軸にならないように気をつけています。

スタック&ティルトやGGスイングは左軸っぽいトップを推奨していますし、左軸が悪いわけではありません。

ただ、わたしは腰の開きが早い+下半身が左へ横移動してしまうので、左軸のトップを作るとインパクトで鬼詰まりしてしまったり、ミスったときの保険がかけられないという理由で避けています。


おわりに

先日、松本タスクさんの著書【クラブの力学】を読みましたが、やはりキネティクス的にもワイドの方がいいのでは?と個人解釈しました。

ゴルフスイングには、今回ご紹介したように動きの相性があるので、その関係性を見抜けると、また違った楽しみ方が増えるのではないでしょうか?

とはいえ、ゴルフスイングに正解・不正解はないので、自分の目指す目標を達成するツールとして、目標に合ったレベルのスイングを習得すればいいと思います。

わたし個人としては、効率的でミスにやさしいスイングを極めていきたいと思っています。


報告:老後の生活を左右する怪我をしてしまったため、ゴルフはしばらくお休みになりました。悲

いいなと思ったら応援しよう!