数学
1.CとP
わたしは個別指導の塾屋であるからして、今日も今日とて高校生に順列やら場合の数やらを教えている。CだのPだのを説明しながら、自分が高校生の頃を思い出す。
壊滅的に数学センスがなかった。そもそも「C」「P」の意味もわかっていなかったし、選ぼうが並ぼうが勝手にせんかい、と思っていた節がある。
結果、数学のテスト用紙があまりにも空白だらけになってしまい、ひげ根のような樹形図を書いて答えを導こうとして先生に呆れられた。
今でこそしたり顔で説明しているが、「男子7人と女子7人を交互に並べる場合」を求めて役に立つ機会がいったいいつ来るのだろう。「男子4人でリレーをする時、4人の並び順は」ちゃんと戦略を立てろ。「questionの文字を並べ替えて」並べ替えるな。
「先生できました」
生徒の声で現実に引き戻された。
はい、よくできてるね。わたしの何倍も、生徒はよくできていると思う。
2.数学とわたし
中高生の頃、「幼少期どこかで激しく頭を打った経験はないか」と自分で訝しむほど数学が苦手だった。クラス分けテストの後、わたしだけ別室に呼びだされ、英国数三科の先生が見守る中、答案を見せられた。その答案を見た時のビックリ感を今でも覚えている。
国語90点。英語84点。数学4点。
4点。
4点?
何度見ても4点だ。
最初の一問しか合っていない。
数学の先生が泣きそうな顔をしているが、泣きたいのはわたしの方だ。(と当時は思ったが、今考えると先生とて泣きたいに決まっている。4点て。)
「お前、どうしたいのよ」
普段鬼として知られている国語の先生が、じゃっかん茫洋とした声で呟く。
咄嗟に「あの…がんばります」と応えたが、なにをだ。なにからだ。その場にいた全員が心の中でつっこんだにちがいない。
その後先生たちのご厚情により、わたしは上のクラスに振り分けられ、数学では未知の言語のような問題ばかりと出会うことになり、それでも必死でついて行きながら、やがて作文と面接だけで高校に合格した。
とっぱらぴんのぷう。