ぼんやり
1.ぼんやり
喋るのが早く、物事をさっさとやっつけがちなので、「ぼんやりしがちで」というと「またまたぁ」と言われることが多い。
その実、相当ぼんやりしている。
ぼんやりというか、全く違うことを猛スピードで考えていて、ふと気づいた時にはその「全く違うこと」も覚えていないことがある。心ここにあらずの頻度がまあまあ高い。心置き場があるとすれば、だいたいそこに置かれていない。
たとえば会議室で、弊社の偉い人が5分にわたって手元の資料と同じ内容を話している。
読めばわかることをしたり顔で話す人は一体なにに付加価値を置いて話しているのか。したり顔。したり。したりとはなんだ。してやったりか。そういえば、「すべらない話」の派生で「許せない話」があるという。「してやったりの話」は聞いててスカッとしそうだし、それでいて小市民っぽいし、ある程度人気が出そうだ。
ふと気づくとわたしは薄暗いホールにいる。何人かのプレイヤーが見守る中、サイコロが転がる。
「してやったりの話」
「召し取ったりの話」
「願ったり叶ったりの話」
「いきあたりばったりの話」
まずい。どれもネタのストックがない。頼む。わたしに当たらないでくれ。
いきあたりばったりだけは見切り発車で喋りだしたらどうにかなりそうな気もするが、終わりどころがわからない。まずい。まずいぞ。
「何か質問は?」の声にふと我にかえると、そこは会議室で、わたしは少しも話を聞いていない。
こんな感じでわたしはしょっちゅうぼんやりしているのだが、会議より妄想の方が忙しいかもしれない。
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