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東都電波塔・異聞~帝都に響け瑠璃の音

※東都電波塔のパラレルワールド二次創作スピンオフSSです。

あらすじ

―電脳帝都東京、この日、帝都の全領域の通信の一大中継基地を目指して構築が進められていたスカイタワーの完成が目前に迫り、完成を祝う式典が開催されていた。

式典の最後はスカイタワーの機能をアクティベートするための最終パッチがインストールされる予定であった。

予定通り、インストールの進捗バーが99%まで進行したところでソレは起きた。


空が割れ、白い閃光と共に謎のデータの奔流が帝都を襲ったのだ。


突如発生した謎のデータの奔流は各地で様々な姿で人々を襲う化け物を発生させ、化け物に襲われ致命傷を負わされた人は昏睡し目を覚ますことは無かった。

この未知の災害に巻き込まれた、朝ノ瑠璃、七原帝子、田中音緒の3人は突如発生した化け物から必死に逃げたが遂に追い詰められ、逃げ場を失ってしまった。

襲い掛かる化け物、化け物の手が瑠璃の胸を貫いたその時、瑠璃の体がまばゆい閃光を放ち、閃光が収まるとそこには瑠璃の姿はなく一振りの剣が残されていた。

閃光によって数を減らしたものの化け物は次々と湧き出てくる、残った二人にも化け物が襲い掛かろうとしたその時

「玄武!白虎!」

男の声が鳴り響くと周囲を光り輝く格子に覆われた化け物達が動きを完全に静止した。

「そこの二人こっちだ!その剣も忘れるなよ!」

男の声に従って剣を抱えて逃げた先にはサングラスをかけた一言で表すなら、うさんくさい男がが立っていた。

「ここなら大丈夫だ、結界を貼ってある化け物共は入ってこれねぇ」

「あのあなたは……?」

帝子が尋ねると男は気が進まないようだが名乗り始めた。

「名乗る程のもんじゃないが……そうさなA.Dとでも呼んでくれ」

「ちょっとあんたさっきの化け物止めた謎の技といい何者なの、それに瑠璃はどこにいったの!」

音緒に迫られA.Dと名乗った男は語り始める、あの化け物を「ノロイ」と名付けたこと、名前なんてどうでもいいと突っ込む音緒に「名前ってのは大事なんだ、形無きものに式を打ち、形をつけるのが陰陽師だからな。さっきのも陰陽師の技の一つさ」と語った。

「陰陽師ぃ?」

音緒が思いっきり訝しむ。

「それと瑠璃だったか、もうそろそろ目が覚めるんじゃないかね」

「あれ、なんで私無事なの?」

どこからか瑠璃の声が聞こえる

「瑠璃ちゃんどこにいるの?」

「ここ、ここよ!」

声の先を見るとそこには瑠璃の代わりに残っていた剣があった。
その剣から声がしていたのだ。

「「えええええええ!」」

「あれ、体が動かないんだけど、な、なんなの私どうなってるの!?」
A.Dが瑠璃に状況を説明し、なんとか落ち着かせるのに幾ばくかの時間を要したのだった。

A.Dは驚く3人をなんとか落ち着かせると続きを語り始める。
昔の自分ならいざしらず今の自分ではこの事態を収める力が無いこと。
この事態を収めるためには剣となった瑠璃の力が必要であること。
A.Dの見立てではノロイによって昏睡させられた人間は24時間程度で魂を改変されノロイの一部と化してしまうこと。

事態解決の鍵となる瑠璃にA.Dが触れようとすると、その手から煙が上がる。

「ちっ……やはり今の俺では無理か……」

その剣には強力な破邪の霊力が込められている、その力をなんらかの方法で増幅し、拡散すればノロイを消滅させ、ノロイに襲われた人々を救い、ノロイが消滅する際に放出される霊力を使って瑠璃を元に戻せるかもしれないと。

「だが、もう一つの鍵である破邪の力を増幅、拡散する手立てがないんだがね」

「ある…かも」

音緒がはっ思いついたような顔をしながら考えを口にし始めた。

「スカイタワーなら……あれは帝都の全領域の通信を中継するために構築されてるの。あそこの通信制御区画からなら破邪の力ってのがどんなものかわからないけど、荒っぽく言ってしまえばこの世界じゃどんなものでも信号で出来てる、たぶん増幅も拡散も出来ると思う。」

「こっちでも塔……これも縁か。嬢ちゃん達、巻き込んですまんが力を貸してくれ。俺だけでは剣の嬢ちゃんを運ぶことすら出来ん。どうにもならんのだ。頼む。」

大の大人に頭を下げられ、面食らっていたが、少しの間を置いて瑠璃が喋り出す。
「わかった。あんた嘘を付いてるようには見えない。お姉ちゃん、人を見る目には自信があるの、自分も元の姿に戻りたいしね」

瑠璃が切り出すと帝子と音緒も続く。

「瑠璃ちゃんは大事な友達だもん。瑠璃ちゃんを助けるために手伝うよ」「親友を見捨てるなんて出来るわけないじゃない!」

「すまん。いや、ありがとう。恩に着る。身を守るために俺が嬢ちゃん達に戦う力をくれてやる。短い間だがよろしく頼む」

4人は瑠璃を、帝都を救うためスカイタワーを目指す。

登場人物、設定紹介

朝ノ瑠璃
七原帝子、田中音緒の親友、二人のお姉ちゃん的な存在。
ノロイに襲われ剣へと姿を変えてしまった。
この事態から帝都を救うための鍵となる存在であり、まだ力の制御が出来ない半人前の破邪の宝剣

七原帝子
天然な所があり、二人には可愛がられながらも音緒からは良く突っ込まれている。
A.Dの占術で瑠璃との相性が最も良かったことから、剣となった瑠璃を振るう事となる。宝剣の扱いについての知識はA.Dから拡張プラグインとして受け取りインストールしたが、まだ剣となった瑠璃を上手く扱えない半人前の宝剣の使い手。

田中音緒
瑠璃と帝子が天然気味なため、突っ込み訳に回ることが多い。
機械、プログラム全般に造詣が深いことから、陰陽術への適性が高かったため、A.Dから陰陽術を拡張プラグインとして受け取りインストールしたことである程度の陰陽術を行使できるようになり、半人前の陰陽師として3人をサポートする。

A.D
陰陽師を名乗る三人を救った謎の男。
正体は東都電波塔世界の稀代の陰陽師、蘆屋道満
元居た世界の問題を関係のない世界に持ち込んでしまったことに責任を感じ事態解決に奔走する。協力を快諾してくれた3人に身を守るために知識と力を式に変換し、拡張プラグインとすることで帝子と音緒の2人に渡した。
蘆屋道満の魂はスターツリーで遥を救う際に消失しているため、ノロイに含まれた蘆屋道満の情報が奇跡的に結合して姿を成した蘆屋道満の残留思念体である。ノロイが起源にあるため破邪の宝剣である瑠璃に触れることが出来ない。
知識は生前と変わりないが魂がないため、霊力の容量と出力が低く生前のような術式の連続行使や強力な術式の行使が行えなくなっている。

七星宝剣(式神)
瑠璃が変化した剣
瑠璃の危機に反応して、瑠璃の体を依り代にノロイと共に溢れ出したオリジナルの七星宝剣と陰陽師の霊力が反応して東都電波塔世界の七星宝剣の式神として顕現した姿。七星宝剣として顕現できたのはオリジナルの七星宝剣の魂と瑠璃の魂が並行世界の同位体であるため。
能力は全てオリジナルと同一であるが、オリジナルが現存しているため魂そのものは顕現出来ず魂は瑠璃のままとなっている。
瑠璃が魂となっているためまだ力の制御が出来ず、鞘から迂闊に抜くと力が暴発する危険性がある。力を制御するには使い手の帝子の力が必要となるため、帝子と瑠璃の心が一つにならない限り鞘から抜けない封印が施されている。しかし、七星宝剣の力が強力すぎるため鞘から漏れ出る霊力で低級のノロイであれば抜刀することなく消滅させることが可能である。

ノロイ
突如帝都に流れ込んできた謎のデータの奔流の総称。
正体は東都電波塔世界のスターツリーで電子化し両断された関東平野に蠢く魑魅魍魎の成れの果て。
電子化され七星宝剣に両断されたことで消滅しきらなかった一部が量子化し並行世界の狭間に転移した。元居た世界と相似した状況が発生したこの世界と結びつき白い閃光(オリジナルの七星宝剣と陰陽師の霊力)と共に帝都へと流れ込んだ。
七星宝剣のオリジナルに両断され量子化した際に元の性質は崩壊し、侵食と増殖を繰り返す悪性腫瘍のようなデータと化している。

電脳帝都東京
電脳世界に存在する東京。
東都電波塔世界から見た並行世界の一つ。スカイタワーの構築完了がスターツリー完工直前の状況と相似した結果、それに引かれたノロイに襲われることとなった。この地に生きる人々は電子生命体であるため、技術をプラグインとしてインストールして行使することが出来る。陰陽師の知識と技術を帝子と音緒にわせたのもこのため。


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