いのち
"ああきれいだな"
重い心と重い足取り、川沿いを歩く。
水面に差し込む、ぼんやり柔らかい一本の光。
"やさしい香りだな"
3月のはじまり、自転車で街を駆け抜ける。
一瞬体を包んだ微かな甘い香り、出会った春。
わたしは、今日も生きている。
わたしは、今日も生かされている。
きっと、こういう一瞬の、
見逃してしまいそうな小さな命たちに救われて、
今日も生きることができている。
そんな事を思いながら、
日に日に街を包みゆく
甘くやわらかな春の香りに思いを馳せて
私は今日も街を駆け抜けるのです。