鏡像

仲の良い後輩が「鏡に映る自分って7倍良く見えるらしいですよ」と教えてくれた。

自宅にある姿鏡は、いつも私を良く映してくれていたらしいが、どうしても信じられない。光の反射が反射して見えるだけで、良く見える道理が理解できない。鏡という性質で片付けられることなのか、材質によるものなのか、各々の願いから良く見えるとされているのか、詳しく調べれば出てくるのかもしれないが、なんだか幻滅しそうで調べてはいない。

姿鏡に映る私は、大抵みっともない。多くの場合、寝起きや寝巻き姿なので当たり前なのかもしれないが、人に会う前だけは確かに良く見えるかも気がする。それは後輩に教えてもらってからそう見えてきた。

髪を整え、着飾り、髭を剃り、あたかも「いつでもそうですよ」と言った白々しい顔して鏡の前に立つ。でも実際は、1/7の人間なので、ボロが出たりミスをしてしまう。何とか取り繕って積み上げてきた好意や信頼といった目に見えないものが失われたとき、この世で1番貧しい顔になっている気がする。

だから私は、今日もなるべく取り繕う。鏡の前の私が本当の自分かであるように見栄を張りながら、7倍の人間性を等倍のような顔して生活する。

理科の教科書には「鏡の中の自分は虚像で、実際の1/2のサイズの鏡があれば全身が映る」と記されてあったことを思い出した。

結局何が何だかわからなくなったので、善い人を演じることに決めた。

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