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正確であろうとすることが誤情報を見分ける、あとお金も。

様々なSNSに囲まれてい暮らしている私達は膨大な数の情報を日々受け取っている。ニュースだけでなく、ユーザーの暮らしや広告といった様々な意図を持った情報がインターンの海に行き交っており、その中には不正確な情報やデマやフェイクニュースを含む完全に誤った情報も存在する。

そのような「誤情報」に私達がなぜ騙されるのか改めて考えてみると不思議である。まず、第一に知識(knowledge)の問題がある。ある事柄について知識を持たない人は、その事柄に関連した情報の誤りを判定できない可能性が高い。一方で、そこまで真剣に考えていないということもあり得る。たとえば、オレオレ詐欺(特殊詐欺)という詐欺について多くの高齢者は知っているが(知識を持つ)が、いざ巧妙な手口に絡め取られると騙されてしまう。ほかにもスパムやフィッシング詐欺なども、その存在や手口についての知識を持つことは、騙されないことを保証しない。つまり、誤情報に騙されるのは、知識の問題なのか、それとも正確な判断を下そうとする心の働きなのか(モチベーション)という2つの可能性があるということである。

このような、知識かモチベーションか問題に決着をつけるために、Steve Rathjeらケンブリッジ大学の研究者は実験をおこなっい、結果を報告している。この心理実験は事前登録(pre-registration)された4つの実験で構成されている。

論文はnature human behviorに掲載された


著者達が調べたのは、被験者がフェイクニュースをニュースのヘッドライン(タイトル)から判断できるかということである。先にいったように、知識かモチベーションのどちらが誤情報を見分けるのに重要な役割を果たすのか調べるために、いくつかのモチベーションを与え実験した。

まず最初の実験(Study 1)で利用されたのは、最も強いモチベーションである「金」である。被験者はニュースヘッドラインの誤情報を正確に見分けられたら少額(1ドル以下)のお金を与えるようにした。すると、お金をもらえる被験者は何ももらえなかったグループよりも誤情報を正確に見分けられることがわかった(truth discernmentが高い)。しかも、自分の政治的心情(保守vsリベラル)に判断が引きつられる度合い(partisan bias)も弱まることがわかった。

(Fig. 1より抜粋)

次に調べたのは、選好を共有するグループとニュースをシェアしたいというインセンティブである。あるニュースを自分のグループにシェアするときにそのグループが気に入りそうなニュースをシェアする社会的なインセンティブがある。たとえば、Facebookで自分の友人達の好みそうなニュースをシェアすることは友人からいいね・コメントなどを受取る確率をたかめ「友人関係」を強めるかもしれない。そこで実験2(Study 2)では、4つのグループをつくり、自分と同じ政党を支持している人に好かれる記事を選んでください(社会的インセンティブ)と訪ねその正確性を分析した。また、この社会的インセンティブの判断の正解度で金銭を貰えるグループもつくられた。つまり、実験2では

  1. control: 対照群

  2. Accuracy: 金銭的インセンティブ

  3. Partisan: (党派性という)社会的インセンティブ

  4. Mixed: 金銭的+社会的インセンティブ

の4グループで実験されたということである。その結果として、AccuracyとMixedグループの順に正しい情報のニュースヘッドラインを選んだ。逆に、自分と同じ政党を支持する人に好かれそうなニュースを選んだPartisanグループは一番低いスコアを記録した。政党のバイアスにかんしても概ね整合的な結果が得られている。

(Fig. 1より抜粋)

また実験3では、ニュースのソース元(URL)を表示すると、さらに正確性が向上することも確かめられ、先行研究とも整合的な結果が得られている。

ところで、正確な判断をしてください被験者にお願いした場合、被験者はどのようなプロセスで「真実」を見分けるのだろうか?ナイーブに考えてみれば、自分の頭にある「真実」かもしれない。しかし、彼らの実験での判断がかれらの真実への心情を反映しているとは言えない。たとえば、陰謀論者が陰謀論を主張するのは世の中で信じられている真実(T1)とは違う真実(T2)があり、それを彼らが信じているからである。

このような理由から実験1-3では、観測された彼らの判断がT1によるものか、T2によるものか見分けることができない。つまり、ファクトチェッカーの判断(T1)を忖度すれば、自分の信条(T2)と反する判断を下すことが可能なのである。

これを明らかにするために、実験4(Study4)では、誤情報のニュースヘッドラインを見分けてもらう判断をしてもらう前に

  • 多くの人が正確さを重視していること

  • 不正確なコンテンツを共有すると自分の評判が落ちること

  • 実験の最後に判断の正確についてのフィードバックを受けること

を告げる非金銭的介入(non-financial intervention)をうけるグループを作った。

(Fig. 1より抜粋)

その結果として、この非金銭的介入(Accuracy(non-financial))も金銭的グループ(Accuracy)ほどではないが、正確性ある程度の向上が見られた。ただし、検出力の問題で判断できない結果も生まれている。論文ではこれらの結果について、被験者の判断に関連する要素を検討した重回帰分析など含めた詳細な分析が行われている。

単なる1ドル以下の金銭的なインセンティブで正確性への判断が向上することは、誤情報の伝播が私達の「軽率な」判断で増幅していることを示唆しているのかもしれない。

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