おめでたき人①「皆既日食」
前回の記事、ずむや苦労話②で少し触れたが「機会ロス」という言葉でおもしろい話を思い出した。昔、大平がアルバイトをしていた店の店長の話だ。
その店長は直前に元々の店長が飛び(雀荘じゃなくても店長が飛ぶことはある)、新たに就任したばかりだった。熱意に満ちた人物だったがやや短気で、当時私は学生であったが、今思い出しても芋の煮えたも御存知なさが頻繁に見え隠れする、非常に怪しい人物だった。
そんな店長がある日、どや顔で店に現れた。店長会議で得た紙ペラを引っさげて、非番なのに現れた。待望のニューシングルかのように。みんなこれを読んどいて~、という訳で我々は交代で読んだ。ふむふむと紙ペラを店長に返すと…
「大平さん、ここに書いてる機会ロスってのの意味ほんまに分かってんねやろな?」と聞くので「売り場にあれば売れたはずの商品を、品切れとかで売り逃すことでしょうか?」と答える。
「ちがうで!!土日はメーカーが休みやろ?土日に足りなくなりそうなものは金曜のうちに発注しとかな、火曜日まで来ーひんいう意味やで!」
それを聞いた大平が思い付いた言葉は今でもはっきり覚えているが「皆既日食」だった。すなわち、こう。
図1:部分集合の皆既日食
突然、場を夜が支配しはじめた。店長はさらにまくし立てている。私はというと唯一思いついてしまった反論が明らかにふざけているため、手も足も出ない。店長はおそらく部分集合も皆既日食も知らないだろうし、仮に知っていた場合は火に油、という万事休す状態である。
おそらく、店長会議の場で「機会ロス」の意味が分からなかった店長のために、他店の店長が分かりやすい例えを出して教えてくれたのだろう。しかし店長はそれを唯一の回答だと勘違いしていたのだった。
さして間違えてもいないのにこっぴどく怒られてしまった。今はどこでどうしているのか、この店長を「おめでたき人・第1号」としたい。