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THE BACK HORN「親愛なるあなたへ」を聴いて

先月リリースされた、THE  BACK HORNのニューアルバム「親愛なるあなたへ」。
何巡か聴いたので、その感想を書き殴ることにした。
書き殴る、という表現を使ったのは、思ったことをそのままひたすら羅列することにしたから。
公式のライナーノーツもまだ読んでません。書き終わったら読む。
ちなみに、音楽的なことはあまりわからないので、感覚的なことばかり書いてます。

今回の作品を私なりに一言でまとめると、「新しいTHE  BACK HORNの到来」というのが一番しっくりくる。
25周年を終えて、新しい時代に突入したんだなってこのアルバム聴いていると強く感じるんだ。
その理由は、このあと1曲ずつの感想を書いている中で出てくると思うので、何度も書くとしつこいし、ここではあえて書かないでおく。


それでは、ここから一曲ずつの感想を。


1.親愛なるあなたへ

この曲は昨年3月の横浜パシフィコ公演で演奏してもらったのを聞いているので、「やっとあなたに会えた!」という気持ちで聴いた。
その時のライブの感想が残っていたんだけど、

バックホーン節全開!のロックナンバーでとっても格好いい曲。
溜めていたエネルギーを放出するような演奏だったし、そういう位置付けにある曲だと思う。
私としては、“希望を鳴らせ“や“シンフォニア“と同じ括りに入る曲だな、と思ったんだけど、他の人はどんな風に感じたんだろう?

という風にノートに書いてる。
ライブでアドレナリンが出まくっている状態の感想だから、あまり当てにできないんだけど、今回音源を聴いてみて、あながち的外れでもないなって思った。

こうやって一年ぶりに聴いてみると、ライブの一回きりでは覚えられなかったところが次々補完されていって、それがとても楽しい。
間奏のベースとギターが合わさるところはもう本当に最高。早くライブで聴きたい。
あと、これはライブで一度聞いているからかもしれないけど、サビのところのコーラスがとっても奥行きを出している感じがあって、好き。
これは、ライブでも同じことを思ったのを覚えている。

この曲はメッセージ性が強くて、THE  BACK HORNが今思うことを全力で鳴らしてくれている曲だよね。
「どんなことが待ち受けていたとしても、前に進んで行こう」って歌うための原動力が「愛」っていいなって思わせてくれるのが本当に素敵。


2.ジャンクワーカー

アルバムの順番が発表された時、「この並びなんだ」って思ったんだけど、実際に聴いてみると“親愛なるあなたへ“からの落差がすごいよね。

イントロがなく、すぐに曲が始まることでパッと世界観が切り替わるのが個人的に好き。
それでいてどこかお経を思い出させる、抑揚のないメロディーがどんどんと深みにハマらせてくるんだよね。その感覚もなんだか気持ちいい。
「あ、私も一緒に落ちていく」っていう、あの感覚がたまらない。

ベースの動きは、なんだか心の奥底で蠢いている自分の鬱屈とした感情を表していて、サビのところのギターは心の中にいる本当の自分の悲鳴みたいに感じる。
不穏な気持ちを引っ張り出されるような、そんな感じがどうしても拭えないんだよね。

でも、落ちきるか、という最後の最後できちんと救いの手が差し伸べられているところがこの曲の特徴でもあるのかな、とも思うんだ。
「とりあえず叫べよ」ってちゃんと教えてくれてる。
そこがなんともTHE BACK HORNらしくて、好き!!って気持ちになった。

シングルの時から好きだけど、アルバムでまた違う印象を得たら、ますます好きになる。
これからもっと聴き込みそう。


3.修羅場

アルバムの曲順を見ていた段階から「これは…」って思っていたけど、実際にアルバムを通して聴いたら、修羅場のインパクト、えげつない。

ジャンクワーカーでも落ちていくって書いたけど、修羅場でまた一つ闇の中に落ちていく感じ。
でも、この曲はやっぱりこのポジションが1番しっくりくるよね。

シングルの時には何とも思わなかった曲の出だしとかが、アルバムで聞いてみると、なんだか違う解釈が出来そうな気がしたりする。
また、ライブに行って演奏を実際に聞いてみて、その時感じた解釈がまた違っているように思えたり、聞くたびに輪郭がぼやけるというか、変わっていく感じがして、自分の中での修羅場のイメージが定まらない。

だから、この曲が1番書きにくい。うまく言語化できない。

ちなみに、初めてこの曲を聴いた時の感想には、こう書いている。

なんだろう、この重さ。
曲を聴いている間、呼吸するのを忘れてしまった?と思うくらい、体が重たい。
だけど、心は重たいのとはちょっと違う。むしろ、苦しい。
なんだろう、人間の隠れた裏の顔、本性みたいなものが全て詰まっていて、“ああ、これが人間の本性か“って絶望して嘲笑っちゃうかのような、そんな感じ。
でも、私、そういう生々しさって好き。生きてるって感じがする。
こんなに人間に絶望しているのに、私も人間で、体の中で血が流れてる、生きてるって知らしめてくれる感じが最高に震える。
ああ、どんなに目を逸らしても、嫌になったとしても、結局私も同じ生き物なんだよね、っていう絶望感。たまらない。

このイメージというのは、未だに持ち続けてはいるんだよね。
でも、なんだか自信がない。自信を持って文章として残せない。

うーん、ツアーで実際に演奏を聴いたらまた解釈が変わるかな。


4.透明人間

さすがにそろそろ…、と思ったけど、全然まだまだダークサイドバックホーンが続いていく。
この『透明人間』は、聞いた瞬間の衝撃がとにかくすごくて、初期の『ザクロ』とか『カラス』を思い起こさせる衝撃具合だった。
歌詞もサウンドもTHE BACK HORNらしさをとっても感じる。
新しい曲なのに、新鮮とはまた違う。
だから、昔のTHE BACK HORNが帰ってきたって、そんな懐旧さを感じたんだ。

なんていうのかな、25周年を経て、いろんな経験値を得た上で原点回帰をしたらこの曲が生まれたんじゃないかって気がするんだ。
だから懐かしさみたいなのを感じたのかなって思っている。

ただ、一つだけとっても新しいな、って思ったことがあって。
この曲、ピアノがとってもいい味を出してると思うんだよね。
ピアノって、神聖な美しいメロディーを奏でることもできるけど、ちょっと音を変えるだけで一気に不気味さを際立たせることもできる。

その、不気味さをとっても上手に醸し出してるんだよね。
ベースやギターの音の後ろにこっそり隠れてて、不穏な空気感をどよどよ出してる。
また、時々前面に出てきたりする。
それが個人的にとっても面白くて、ピアノが聞こえてくると「きた」って身構えて聴いてる。

でも、何回も聴いているうちにこの曲もイメージとか解釈が変わってきそうな気がするな、と思っていたりする。


5.Mayday

まだまだ重たい空気は続いていく。
だけど、しっかりと聴いていくと救いの曲なんだよね。
「Mayday = 救難信号」だから、勇気を振り絞ってヘルプを求めて、ここから這い上がっていこうという曲。
私、そういう曲大好き。

『Mayday』も衝撃が強かった。
一回目に聴いたときは、メロディーがなんだかあんまりTHE BACK HORNらしくない!と思わずびっくり。
なんていうか、最近の流行り要素が詰め込まれていて、今の音楽シーンから影響を受けて、いいところを取り入れた、という感じなのかな、と個人的に思っている。
だから、この曲はとっても新鮮だった。

でも、きちんとTHE BACK HORNらしさみたいなところはしっかりと押さえていて、上手いこと化学反応が起きているという感じがするよね。さすが。
個人的に、間奏のギターリフは『星降る夜のビート』をふと思い出すようなところもあって、中期の頃を思い起こさせる懐かしさもある。

あと、一回聞いたら忘れられない中毒性。
サビのところがずっと頭の中ぐるぐるするんだよね、でもそれさえも楽しいというか、魅力の一つだと思う。
個人的にライブで一番化けそうだなと思っているので、聞けたらいいな。


6.最後に残るもの

『Mayday』からの『最後に残るもの』。
この流れ、完璧だと思う。
最初聴いたとき、「おおっ」って感動した。

Maydayでどん底から這い上がった先がこの曲なんだよね。
生き延びろ!と心の中の声に従って暗い闇を超えた先に、光が差し込んでいて、その時に「あなた」の存在のあたたかさ、大きさに気づくという。
そういうストーリー性を私は感じたんだ。

落ちるところまで落ちていったからこそ、もう上がるしかなくて、その上がった先の希望があなただった。
”あなた”がいてくれるから、また一歩ずつ前に進んでいける。
そう歌ってくれているんだよね。

それと同時に、これからも歌い続けていくから聴いていてくれないか、と決意を新たにする真っすぐさ、それもTHE  BACK HORNらしくて、「ああ、これぞTHE  BACK HORNだ」と惚れ惚れする。
そういうところ、私大好き。
なんていうか、ロマンチックだなって思うんだ。

もう何周もアルバムを聴いているけど、聴けば聴くたびに、この曲を軸にして作られたアルバムなのではないかという気がしてくるんだよね。
正直、その根拠は全くないし、ただの予感というか、第六感がそんな風に言ってるような、そんな気がしているだけなんだけど…
なんでそう思うんだろう?
もっと聴いたら、そう感じる理由が見えてくるのかな。


7.光とシナジー

『最後に残るもの』から流れるように入ってくるイントロがとってもきれい。
これも、なんだか計算して作ったのかな?って思う自然さがあって、ますます『最後に残るものが軸である説』が私の中で大きくなっている。

これはシングル曲なので、以前から聞いてたし、と初めは思ったんだけど、アルバムの中で通して聴くと、また全然雰囲気が変わるよね。
何より、山田さんの声の表現力に改めて驚かされる。
「これがあの修羅場とか透明人間を歌ってた人?ほんとに?」ってつい思ってしまう。
とはいえ、これは毎回どのアルバムを聴いても絶対思うことなんだけどね。

そして、この『光とシナジー』についても、私はストーリー性を感じる。
『最後に残るもの』で”あなた”の存在を改めて感じて、歌い続けていく決意をしたんだよね。
その時に感じる「今の自分ならなんだってできちゃいそう」という無敵感のような、あの清々しい気持ち。
前に一歩進み始めて、テンションが高くなっている、あの感じ。
それをこの曲では強く感じるんだよね。

でも、だからといって『最後に残るもの』の”あなた”と、『光とシナジー』の”君”がイコールになるかといえば、そう言えるような、また違うような、って気がするんだよな。不思議。


8.SUN GOES DOWN

前半のあの闇落ち加減が嘘のように、あたたかい光がスッと差し込んでくるような心地よさ。
私が今回、アルバムのリリースで初めて発表された曲の中で、一番好きな曲。
アルバムを聴いた日から何かと口ずさんでいる。

一番好きな理由としては、どことなく初期のTHE  BACK HORNらしさを少し感じるから、というのと、私の好きな「切なさ」を感じるから。
一番最初に心地よさ、と書いたんだけど、本当にメロディーやサウンドはとっても心地よくてあたたかいんだ。
このままこの心地よさに浸っていたいって思うくらい。

だけど、ふと聞こえてくる歌詞は、どこか切なさがあって、その加減がとっも良い。
思わず体を横に揺らしたくなるようなメロディーの上に、「母の涙のよう」「鉄の雨」「残る温もり」「十字星」と、いろんな言葉が聞こえてくる。

そこから思い浮かべるのは、どうしても「別れ」なんだよね。
”誰か”なのか、”何か”なのか、とりあえず今、想っている相手がここにいない。
そんなイメージがずっと私の中にあり続けてる。
それなのに、この明るい管楽器が鳴り響くようなサウンド。
どういう意図があるんだろう。華々しく天国に送るイメージなのかな。
でも、タイトルは日没。うーむ。

これもライブで聞きたいな。
この私の解釈があっているのか、早く確かめたい。ドキドキしてる。


9.月夜のブルース

タイトルが発表された時から「ブルース!」と楽しみにしてた曲。
だけど、想像していたよりも大人でメロウな感じだった。
この曲は「なんかTHE  BACK HORNの中でも新しい曲だ!」とドキドキしながら聴いた。

この曲もピアノがとても主張しているんだけど、透明人間とはまた全然違う。
不気味さの不の字もない。
ただ、ムーディーな雰囲気を醸し出してくれている。
そして、ドラムのリズムと混ざり合うように鳴り響いているのがとても気持ちいい。
メロディアスってこのことを言うのか、と聴くたび思う。

でも、しっかり耳を澄ますと、ギターやベースもガッチリ基盤を固めていて、そこはいつものTHE  BACK HORNらしさを感じる。
間奏のギターリフはめちゃくちゃ格好いい。
この部分、ライブで聞けたらドキドキするだろうな、と勝手に想像している。

そして、この曲もとっても人間臭くていいよね。
誰しもが人生で一度は感じる気持ちというか、人生の醍醐味である「出会いと別れ」の別れに焦点を当てているのが、また面白い。
こういう気持ちを経て、きっと前に進んでいくんだよね。

とにかく、この曲を聴くとバーカウンターで一人で強めのお酒を飲んでいるイメージに切り替わります。
このイメージから変わること、あるかな?


10.タイムラプス

この曲も『光とシナジー』同様、シングルで聴いていた時とはまた少し違った印象を抱くんだよね。
ライブでも一度聴かせてもらっているけど、その時は、とにかく「スケールが大きくて雄大な曲」と思ったのを覚えている。

修羅場でも出てきた、ライブで聴いた後の感想ノートには、

結果としてバラード曲が続くところの最後の曲だったんだけど、フィナーレという言葉が相応しいくらいに、とてつもなくスケールが大きくて、奥行きがすごい曲だった。
この曲もライブで聞くのは初めてだったけど、音源とはやっぱり違う。
バラードなのにとっても骨太なロックな曲だった。

スケールが大きいと言ったけど、もう本当にその感想しか出てこないくらいに壮大で素晴らしい演奏だった。
皆さんの音が、声が、優しくかつ強く夜空の下に響きわたってた。
松田さんの力強いドラムが印象的でよく覚えてる。
また、暗くなりきった野外のステージというのがとてつもなくこの曲と相性が良くて、これ以上ないシチュエーションでの演奏だったな、と振り返って思う。

って書いている。
だけど、このアルバムの中では、ますますそのスケールの大きさ、雄大さを強く感じるというか、とてもインパクトを残すポジションにこの曲を置いたな、という感じがしたんだよね。

それは、きっとアルバムのラストに向けて、前に進んでいくと決意した曲を持ってきたかったからこそだろうな、とも思うし、
『SUN GOES DOWN』や『月夜のブルース』が別れを受け入れようとする曲なんだとしたら、この『タイムラプス』は別れを乗り越えて前を向く、前に進んでいく曲だから、このポジションしかなかったんだろうな、とも思う。

だからこそ、シングルよりもアルバムのほうが雄大に聞こえるんだろうね。
全てを包み込んでくれるような、器の大きさをこの曲から感じる。

ちなみに、光と影シリーズの中では、この曲が一番好き。
その理由はここでは書かないけど、この曲にいつも助けられてる。


11.明日世界が終わるとしても

最初に聴いたときは、「清々しさ」という言葉がふと浮かんだんだけど、何度も聴くたびに「疾走感」という方がしっくりくるようになってきた。

この疾走感は、『アサイラム』の『パレード』に近いのかな、と勝手に思っている。
あと、『運命開花』の『カナリア』にも似たような印象を感じる。
この2曲はとっても好きなので、この曲ももれなく大好き。

なんだろうね、このTHE  BACK HORNの背中を押してくれている感じ。
THE  BACK HORNは背中を預けられる曲を作るの、本当に上手だと思う。素晴らしい。
THE  BACK HORNが背中を押してくれるなら、頑張ってみようかなって自然と思える。
現に、ここまで18年ずっと支えてきてもらった。

この曲、Cメロのところでピアノとボーカルだけになるんだよね。
それがなんだか新鮮というか、ふと我に返るポイントになっている。
歌詞としては、同じ歌詞がほかにも出てくるのに、そこでいつもハッとなる。

その部分の歌詞が、「明日 世界が終わるとしても 俺は希望の種を撒くだろう」なんだよね。
その歌詞を聴いていると、THE  BACK HORNが伝えたいことはきっと一つだけで、「希望を歌い続けていく」ってことなんだろうなって思うんだ。

そして、それをずっと何年も歌い続けてきてくれている。
言いたいことはたった一つだと、その一つを軸として、芯として、歩み続けてくれている。
そう思うと、本当にTHE  BACK HORNの存在に感謝するんだ。

この曲は、私のそんな思いをひしひしと痛感させられる。



好きに書き散らしていたら、この時点で6980文字も書いている。
自分でもびっくり。
でも、書きたいことは全部残せたので、とっても満足している。
このノートを書いているとき、とっても楽しかった!
THE  BACK HORNへの愛がますます深まって、やっぱり私のヒーローだなって改めて感じたよ。

さすがにこれ以上書くと長くなってしまうから、簡潔にまとめようと思う。

私なりにこのアルバムをまとめるなら、25周年を経て、進化と原点のバランスを取ったアルバムなのかな、と思っている。
昔のTHE  BACK HORN×これからのTHE  BACK HORN、みたいなイメージかな。
だからトータルでいえば、新しい作品だな、って感じたよ。

なんだか不思議だから面白いよね、今までと同じTHE  BACK HORNであり、とはいえ前と同じTHE  BACK HORNでは決してない。
だけど、きっと、これから26年目…と続いていく中で、これからのTHE  BACK HORNを語る上ではかかせない作品なんだと思う。
このアルバムを聴かずに、これからのTHE  BACK HORNとは向き合えない、それを強く感じた。

そして、私はこの作品が大好きだから、この作品を胸に、一緒に生きていく。
心強い相棒ができたような気持ち。

10月に発表されてから、この作品を聴くのをずっと待っていた。
だから、今、本当にうれしくてずっと聴いている。
これからまたいっぱい聴いたら、各々の新しい一面とかも知っていくんだろうな。
ライブに行ったら、また印象が変わったりするんだろうな。楽しみだ。

来週、京都公演に行くので、それまでにたくさん聞きこもうっと!


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