掌握
空いた缶にぼくのこころが入る余裕があったなら。空いたこころに音楽しか、音楽だけが頼りで生きていたなら。良い歌詞が書けなくて困る。きみはいつだって素敵なフレーズを思い付いてギターを持てば、ぼくのスーパーロックスターだ。
秋になってから、ぼくは大学に行って授業を受けることが苦になった。冬は50年くらい前に建てられた有名な建築家の模型を作った。それだけだ。たった、それだけだ。比べるひとが大きすぎて追いつけない事も、ぼくには才能もやる気も何もない事も、ぼくは知っている。
最近は夢なんて荒んでしまって何になりたいのか分からない。何者にもなれない自分を何者かにしなければならないなんて、人生に怠けていたら置いてかれる。最近はとことんバンドにのめり込んで好きな音楽を聞けばどこにだって飛んでいけるのに、ぼくはぼくが一番好きな「歌うこと」すら辞めてしまいそうです。
ライブなんてもう半年もやっていない。オリジナルバンドを組みたいってただのエゴで本当にやりたいわけじゃない気がする。
でもきみは「それでもバンドをやりたい立派な理由だ」って。
良い歌詞を書かなければと思うほど長文駄文の嵐で、音楽とはまた一歩距離が出来てしまいそう。ぼくもいつかちゃんとして、きみのギターの横で歌う、河川敷とか公園とかで。そんな夢を見てる。夢を見てる。