28歳、初めてのコンサータ

・個人備忘録
・服薬を勧める意図はありません。
・症状や薬の効き方は人それぞれです。ここに書いてあることは私の話で、私以外の誰かに適用できる話ではありません。
・今いる環境や近くにいる人間にとても恵まれています。

簡易プロフィール
・幼少期のころから症状があったものの受診に時間がかかり大人になってから診断を受けた。
・程度:ポストが開けれず結果として裁判になった。6年で自転車を4回失くす。


 SNSを見ながら薬一粒で人生が変わるものかと思っていた。

 ADHDの診断を受けたとき、服薬で対処をしようとストラテラを飲み始めた。生活がまともに送れるなら、人に迷惑をかける回数が減るなら、脳内のごちゃごちゃがスッキリするなら、と副作用に耐えながら服薬を続けた。上限量まで頑張った。正直なところ、adhdに係る症状と戦ってるのかストラテラと戦ってるのか分からなくなっていた。
 飲んだ直後から始まる吐き気で全てを吐き戻しても、脳内がスッキリするところか思考を止めてしまう感覚も、悪夢や金縛りで眠れた気がしないのに妙に覚める目も、身体を虫が這うような感覚も、楽しかったことが全く楽しくなくなることも、全てまともになれるならの一心で耐えていた。耐えていた。が、無理だった。心が折れた。こんな思いをするならもういいやと諦めてしまった。私はポンコツのまま生きていきます!!近寄らないでください!!と叫んだ方がマシな気がした。通院を辞めた。

 副作用が酷くて気が付かなかったが本作用も割と出ていたらしい。元に戻ってひどくなる私生活にパートナーからの苦言が増えた。服薬後トイレにこもって吐く私を見て「辛そうだから薬やめたら……?」と提案してきたのはあなただよと思いながらとりあえずごめんねと言うくらいしか出来なかった。思いやりを持った言動にも簡単に八つ当たりできてしまう自身に絶望を感じた。確実に全て私が悪い。
 2年ほどその状態が続いた、やれることはやれる方がやろうと分担していた過去が信じられない。お互いにとって良くないと、話し合って再び通院することを決めた。

 通院を再開し、ストラテラが合わなかったと伝えるとインチュニブが処方された。
 元々血圧が低いことやストラテラのトラウマがあり副作用の出やすい薬は心配だったが、コンサータの処方には登録が必要なので時間がかかる。繋ぎとして一回試してみようとの打診だったから服薬を始めた。血圧が上80台、下50台まで落ちた。普段の買い物で下段のものをとるためにしゃがむと立ち上がったときに起こる程度だった立ちくらみが、事務イスから立ち上がるだけで起こるようになった。ウケる。とりあえず何をしててもふらつくし座ったまま気絶することが増えた。居眠り議員をみると私もこんな感じなのだろうなと思う。
 ただ、脳内が気持ちの良い程度にスッキリしていた。耳がちゃんと聞こえる。いつもとても大きいと感じていたBGMがバックグラウンドミュージックとして役割を果たしている。口元が見えない相手でも何を言ってるかが少しわかる。嬉しかった。少しのだるさや立ちくらみなんてどうでも良くなった。
 インチュニブ初回服薬からの状態を医師に伝えたところ体調によって服薬を減らしても良いから試してみようと基準量が増えた。睡眠に関しても問題があったのでデエビゴが処方された。座ったまま気絶する回数が増えたものの自分の仕事はこなせるくらいの状態が常だったが、2回ほど布団から起き上がれないことがあった。血圧は上70台、下40台まで下がる時がありちょっと面白かった。初めて見る数字すぎる。友人に話したら「仮死状態?」と聞かれてめちゃくちゃ笑った。
 食後一気に血圧が下がっていることに気が付いたので一回の食事量を減らし、おやつを導入したら少しマシになった。人間の身体ってすごい。デエビゴで心配してた悪夢はストラテラの時に比べたら無に等しく個人的には合っていると感じる。

 この頃コンサータカードが届いたと知らせが来たので今後のことを考え自立支援の申請を行った。薬は高い。正直なところ上手くやりくりが出来れば自身の収入でも支払うことは可能だから、本当に助成が必要な人の為に申請をしないでおこうと考えていた。たまたまそのことを友人に相談をしたら「おまえがその助成が必要な人。頼れるものには頼った方がいい」と言われてとても衝撃を受けた。その衝撃で申し訳なさを希釈して申請をさせていただいた。本当にありがとうございます。

 そして最近、コンサータの処方を受けた。
 SNSを見ながら薬一粒で人生が変わるものかと思っていた。身体に合う合わないがあるから仕事先へ新しい薬を試してみる旨を伝えて次の日の朝から服用することにした。期待はあまりしていなかった。夜は普段通りインチュニブとデエビゴを服用し、朝は普段起きる1時間前にアラームを入れてコンサータを飲もうと決めて眠った。二度寝から覚めた時に気持ちよく行動を始めたかった。

 服薬の結果はものすごく良かった。この喜びを全人類に聞いてほしいというくらいに感動した。   

 1度目のアラームで服薬に成功し2度目のアラームが鳴る、前に目が覚めた。不思議なくらいスッと身体が起き上がった。身体が軽い。頭も軽い。いつも通りの準備を始めると信じられないくらい早く終わった。時間がある。タイヤの空気が抜けきってベコベコなまま使っている自転車のことを思い出して空気をいれた。自転車ってタイヤに空気入れるとすごく走りやすいんだね。
 早めに向かった仕事先でも驚くことがたくさんあった。インチュニブで聞こえるようになった耳がさらに聞こえる。電話越しの会話が聞きとれる。凄すぎて興奮した。それに、今何を済ませると後から楽になるかを考えるだけでなく実行できた。実行に移すまでにある障害物がいつもより少ない気がした。舗装された道路でキャリー引いてるときみたいな気持ちよさが嬉しい。日中の眠気も全く感じない。昼休憩に眠ってしまうとその後覚醒まで1時間ほどかかっていたのが全て無くなった。快適だった。そして、ありがたいことにインチュニブで下がった血圧はコンサータによって少し上がった。
 服薬初日にして私のポンコツステータスが一度にマシの方向に動いた気がした。帰ってから嬉しくて少し泣いた。ハイになっていた部分はあると思うが、本当に全てに感動して1日を過ごした。
 密かな夢だった「夜しっかりと眠れ朝スッキリと起床。日中に大きな問題がなく元気なまま帰宅する」が初めて実現した日。絶対忘れないと思う。

 それから2週間ほど休薬の日を作りながら服薬を続けているが気付いたことがある。
 まず1つ目に、脳内のごちゃごちゃ具合と視界のごちゃごちゃ具合が同じ程度だと落ち着く。今まではとっ散らかった脳内でとっ散らかった部屋に住んでいたから気が付かなかったが、脳内がスッキリしているからか部屋のごちゃつきが気になる。開けたら閉めるが出来なかった人間が棚を閉めるために立ち上がるようになった。まだ部屋はお世辞にも綺麗とは言えないが、飲みかけのペットボトルやティッシュの量が激減した。
 そして2つ目に、一度意識を向けて出来たことは休薬していても意識が向きやすい。「やるべきこと」までの道のりが道なき道じゃなくなった感覚。近道できるアンダーパス、川を横断できる橋、信号機、道標などの設備が一気に整って、「やるべきこと」に向かいやすい環境になったように感じる。知らない場所へ行くより知っている場所へ行く方が迷いにくいし、行くまでの道が整ってる方が向かいやすい。こちらもまだ完璧だとは言えないが、洗い物は先に済ませた方が楽だと気付けたのはとても大きい。
 3つ目、無意識で行ってしまう行動や視覚から外れたものへの注意はあまり改善されない。悲しい結果。手に持っていたスマホを知らない間にその辺りに置いてしまったり、洗濯機や電子レンジなど使ったあと少し時間が空くものの存在を忘れたり。これに関してはApple Watchに頼ることにした。別の方法や手段を考えるのが容易になったと感じる。iPhoneを鳴らしてくれる機能とタイマー機能への感謝を忘れない。
 4つ目、効果がある分もっと早く受診できていたらと考えるようになった。「今までの人生なんだったんだろうな」とふと頭を過ぎる。「今の環境の良さは過去の自分のおかげだろうが」と自分で尻を叩ける強みはあるが、それでもどこかで考え続けてしまうのだろうなと思う。

 周りからの意見について。
 顔色がいいと言われた。嬉しい。テキパキしてるねと言われた。嬉しい。今日なんかすごくない?と言われた。嬉しい。陰気なポンコツから陽気なポンコツになったね!と言われた。まだポンコツではあるらしい。

 副作用について。
 コンサータ服薬後11時間以降の頭痛と吐き気、手の震え、疲労感がある。たまに動悸。どれもコンサータの効果と比べたら仕方がないと思える程度に感じる。つまり、コンサータの効果なく上記の症状があったらとても嫌。普段から食事にあまり関心がないので忘れていたが、食欲も落ちると思う。お腹は空くが何か食べたいと言う気持ちがさらに無くなった。完全栄養食を検索する手が止まらない。
 大事なことを忘れてた。趣味がつまらなくなった。のめり込んでいたものに対しての熱量が減った。好きな気持ちは変わらないが物足りなく感じる。ただ、課金が減った。生活を正す目的ならありがたい変化だが、少し慣れない。

 ここまで読んでくれた方、ありがとう。

 さいごに今後の目標について記しておく。
 私の最終目標は服薬をやめても困らない、人を困らせない程度に生活が行えるようになることだ。その土台を作るために薬に頼る選択をした。いつか服薬なしに「夜しっかりと眠れ朝スッキリと起床。日中に大きな問題がなく元気なまま帰宅する」を達成できるように努めていきたい。

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