20年
20年
高校
✳︎
チャイムがなった、ああもう次の授業かと思う。私は窓際の席で、窓から差し込む秋の光に包まれうとうととしていた。
ただただ心地よかった、、
『今すぐかえりなさい』
耳元で先生の声
一瞬で全てが理解できた、何が起こったかも、今すぐ私は走り出さなくちゃいけないということも。
荷物を積める手に迷いはない。教室を横切った時、一番後ろの友達が見えた、ほんの一瞬、ほんの一瞬だったけど友達は全てを理解してくれた、そんな気がした。
担任の先生に何かできることはあるか、そう聞かれた。でも首を横に振ることしかできない。
頭の中では、早く早く早く、、、ただ早く家に、それだけが駆け巡っていた。
電話。姉はただ早く帰ってきてと泣きながら電話越しに言う。その時初めて徒歩で帰れないことに、私は絶望した。
学校から駅までの間にタクシーが一台。だが、タクシーに乗る勇気も、知らない人と会話する気力も私にはない、
公共交通機関の正確さに初めて憤りを感じ、早く早くはやくはやく、、、
気持ちは今すぐにでも飛んで行きたいのに、今だったら脇目も振らず走り出したいのに、そんなはやる気持ちなんぞつゆ知らず、一定のリズムを刻む電車は、ただ日々を繰り返す。
ただ座ることしかできない体は、涙を流すことしか、内にある気持ちを処理することができない。
時刻はお昼前、大阪一の繁華街もなぜか閑散として、電車の中の人影も少ない。
いつの間にか早く早くとはやる気持ちも萎んで、大きな悲しみが私をすっぽり包み混んでいた、私が大きな涙の塊になったみたいに。
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阪急電車。ガタンガタンと揺れる電車の中で、また秋晴れの光が電車を柔らかく照らし、私のことも温かくつつんだ。
家の帰り道、ずっと涙が頬を伝っては溢れて、私の涙袋は本当に涙をキャッチする。
私の視界はピントの合わないレンズのように、ゆらゆらゆらゆらと揺れていた。
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なぜ一時間半もかかる学校にしてしまったのか。なぜ毎日学校に頑張って行っていたのか。
なぜもっと一緒にいようとしなかったのか。
最後の言葉は『行ってらっしゃい』。
最後に一瞬だけ見た項垂れているその姿に、声をかけることはできなかった、