『ランガスタラム』監督スクマールさんと撮影監督ラトナヴェールさんへのインタビュー記事大感情訳

2018年4月4日に"The News Minute"(インド南部5州を中心に、インドの諸問題について報道・執筆するデジタルニュースプラットフォーム)で掲載された、『ランガスタラム』の監督スクマールさんと撮影監督であるラトナヴェールさんへのインタビュー記事を大感情訳いたしました…!

記事(https://web.archive.org/web/20181030062933/https://www.thenewsminute.com/article/rangasthalam-director-sukumar-and-cinematographer-rathnavel-making-film-78979)


本日8月5日から『ランガスタラム』日本語字幕版が配信開始。そして、私事ではございますが本日8月5日が誕生日でございまして、配信日と併せて大変嬉しくなってしまいこの素晴らしいインタビューを訳して当日に載せたいと、猛スピードながら出来うる限り丁寧に楽しく訳させていただきました…!


インタビュー記事そのものは『ランガスタラム』の映画製作について詳しく様々なお話をして下さっており、大変興味深く楽しくお読みいただけると思います。その為、こちらの私の訳文も大変長くなっております。ぜひお暇な時に参考程度にお読み下されば幸いです。

記事の内容に沿って訳しております。
また、一人称、敬語の有無などは文章のニュアンスや雰囲気から判断し、主観で使用しております。また、敬称を略しております。
何卒ご了承いただけますと幸いです。


大感情訳ですが…よければ…!


'Rangasthalam': Director Sukumar and cinematographer Rathnavelu on the making of the film
「『ランガスタラム』:スクマール監督と撮影監督ラトナヴェールが映画製作を語る」

80年代を舞台にしたこのテルグ映画は、大ヒットを記録した。

「この映画の撮影を始めたとき、私はラーム・チャランを騙したんだ」とスクマールは最近、『ランガスタラム』についてメディアと交流した際に告白し、皆を驚かせた。
「撮影の3日目に、彼のキャラクター作りの一環として、補聴器をつけるように頼みました。
彼に『ダーリン、うまくいくと思うかい?』と聞かれたよ。私は 『うまくいくよ 』と答えたが、心の奥底では自信がなかった。
しかし、彼は私を信じてくれました。
(彼の)私と映画に対する純粋な信頼が、私達全員を
『ランガスタラム』製作に駆り立てたのです。
ラーム・チャランには申し訳なく思っているよ。」

ラーム・チャラン、サマンタ、アーディ、ジャガパティ・バーブ、その他多数の俳優が出演するこの映画は興行的に大ヒットを記録し、ラーム・チャランとスクマールのキャリア最大のヒット作になる勢いだ。数字だけでなく、80年代のリアルな映像、撮影、音楽、プロダクション・デザインも絶賛され、さらにアンサンブル・キャストの演技、スクマールの脚本と演出も高く評価された。

The idea of Rangasthalam
「ランガスタラムのアイデア」

スクマールは、数年前から田園ドラマの構想を練っていたようだ。
スクマールと『Arya』、『Jagadam』、『1-Nennokkadine』、そして今回の『ランガスタラム』でタッグを組んでいる撮影監督のラトナヴェールは、『1-Nennokkadine』の製作前からスクマールがこの構想について話していたことをこう回想している。

「このような映画を作るのは簡単ではありません。それに、多くの俳優も現代的なストーリーを好む。スクマールが『Nannaku Prematho』を撮った後、彼は私にいくつかのストーリーを話してくれた。
ひとつはグリーン革命を巡る現代的なストーリーで、もうひとつは農村ドラマだった。私たちはそれについて話し合い、最終的に私は彼に田舎のドラマにするよう勧めた。というのも、彼は人生の数年間をラゾーレ近郊の村で過ごし、子供時代の思い出があるからです。
当初、彼はもっと現代的な農村ドラマを作りたがっていましたが、私は時代劇の方がよりその土地の文化を紹介する幅が広がると考え、時代劇を作りたいと思っていました。
今日では、地方でも誰もがノートパソコンと携帯電話を持っている。それに、村を舞台にした時代劇はここしばらくやっていない。その為、私達全員にとって挑戦でした。」とラトナヴェールは語る。

スクマールは『Nannaku Prematho』の製作中に、共通の友人であるランガからラーム・チャランを紹介された。ランガはスクマールに、「君はラーム・チャランのファン層や、彼が主役の良作が興行的にどうなるかを知らないだろう。」と伝えたと言われている。

二人は映画のために協力することを決め、Mythri Movie Makersがこの映画にゴーサインを出すのにそれほど時間はかからなかった。「2016年10月に私がこの話をしたとき、プロデューサーたちはかなり興奮していました。しかし、私は2017年4月まで撮影を開始する準備はできていませんでした。チャランは2017年1月初旬からフリーでしたが、私は脚本をさらに微調整できると感じていたんだ。
面白いことに、撮影前にチャランとはほとんど会いませんでした。脚本全体を彼にナレーションしたのはたった一度だけだったと思います。
彼はチッティ・バーブのキャラクター設定にかなり感銘を受けたようでした。彼なしではこの映画は成立しなかったでしょう。彼が出演を決める際、自分のイメージやファンがどう思うかを考えなかった事に敬意を表したい。」とスクマールは振り返る。

Finding Rangasthalam
「ランガスタラムを探す」

『ランガスタラム』は、撮影予定地から多くのものを得た映画のひとつだとラトナヴェールは言う。
チームが80年代を舞台にすると決めた時、現実感を出すために背景も適切な設定を選ばなければならなかった。

当初、チームの1人がこの映画をアラク渓谷で撮影することを提案したが、ラトナヴェールはこの案に反対した。
「アラクでは美しい風景が撮れるが、文化を描くのは難しい。私たちがランガスタラムを見つけたのは、コレル湖やゴーダーヴァリ地方の近くを訪れてからでした。この数年間、私たちはゴーダーヴァリ地方が緑豊かなイメージで満たされ、川の美しい景色が広がっているのを見てきた。その地域を下見に行ったときのことです。確か午前11時半頃だったと思います。私達は地域全体に広がる燃え尽きたかのような雰囲気がとても気に入りました。それは、私達がスクリーンで見慣れたものとはまったく違っていたのです。
その後、川辺に何エーカーもの草原を見つけ、その場所からインスピレーションを得て、物語の中でそこを『殺戮の場』に変えたのです。村の入り口にあり、誰もがそこを通らなければならない。多くの人がそこで殺されるので、不気味な雰囲気もする。草原は物語に個性を与えてくれた。今と違い、数十年前の村ではたくさんのお祭りや縁日、民俗芸能、ハリ・カタ、ブラ・カタなどが行われていました。この映画では、対立や感情的なシーンが展開されようとするときに、必ず背景にこれらの要素のひとつがあります。映画の中でそれらをすべて観せることで、観客を80年代に引き戻すことができました。」

この映画が撮影された村は、ラージャムンドリーから車で2、3時間近くかかるところにある。
周辺地域が経済的に発展しているにも関わらず、その地域が何も変わっていないことに、キャストとスタッフ全員が驚いた。

「これらの地域には貯蓄という概念がない。人々は1日に稼いだお金で満足し、将来のことなどあまり考えていない。これらの村の何人かと一緒に仕事をしようとしましたが、彼らは3~4日経っても現れませんでした。」スクマールはこう付け加えた。

Capturing Rangasthalam on film
「フィルムで捉えるランガスタラム」

村の有力者達によって支配される 「社会 」の概念、農民たちにのしかかる借金の重荷、湾岸地域に向かう選ばれた一部の男たちなど、この映画に登場する多くの要素は、スクマールに近しい人々が実際に経験した事件から着想を得ている。
そして、彼は映画の各キャラクターについて多くを書き、それは撮影までのキャストやスタッフ全員に波及効果をもたらした。

「ラーム・チャランとサマンタは、この映画の撮影に入るまで村に住んだことはありませんでしたが、役に入り込むのにさほど時間はかからなかった。
実際、ラーム・チャランはルンギがとても似合っていて、撮影現場に着いた瞬間に彼はチッティ・バーブその人となったのです。
『ランガスタラム』の何が彼の前作と決定的に違っていたかと聞かれれば、それはキャラクター設定に深みがあったことだ。聴覚障害があるキャラクターなのですが、人が言っていることを理解することもあれば、何も聞いていないふりをすることもあります。トリッキーな役柄ですが、彼はそれを見事に演じきった。複数のシーンでラーム・チャランの演技を見た後、セット全体から拍手が起きたことが何度もありました。」とスクマールは明かす。

撮影監督ラトナーヴェルが『ランガスタラム』製作中に直面した多くの挑戦の中で、重要なことのひとつは、この映画をよりダイナミックで艶やかに見せることであり、これには多大な努力を要した事だった。

「フレームが燃え尽きたかのように見える撮影は難しい。しかし、この映画のリアルな外観を実現するためにはそれこそが重要なことだった。このようなスタイルには、通常の照明スタイルは十分ではありません。また、この映画はセリフ中心の脚本であり、従来のスタイルにこだわるとやることがなくなってしまうので、私のチームは撮影にかなり懐疑的でした。
そこで、私は映画の90%近くをジンバル(1つの軸を中心として物体を回転させる回転台の一種)で撮影することにしました。片隅に座ってズームレンズを通してすべてを見るのではなく、ストーリーを捉えるためにアクションの真ん中にいる必要があったんだ。」とラトナヴェールは言う。

撮影監督が行ったもう1つの重要な変更は、会話を撮影するためにクローズアップショット、肩越しショット、ミディアムショットを使用するという伝統的なショット分割方法を変更したことだ。

「この変更を行わなければ、いくつかのシークエンスで扱う俳優の数が多すぎて、そのすべてを撮影するのに時間がかかったことでしょう。
私達はその代わりに、押しつけがましくならずにすべてをリアルタイムで撮影する長回しを採用しました。このような場合、俳優のボディランゲージを制限することはできません。彼らが感情をリアルに表現する自由があるとき、撮影はそれを補完しなければならない。それが、私が単なる撮影監督ではなく、スクマール監督の演出チームの一員であるように感じる理由です。彼(スクマール監督)と一緒に仕事をしている間は、彼と同じように考えなければならない。登場人物の心理に入り込む事は大いに助けになりました。」

The people of Rangasthalam
「ランガスタラムの人々」

この映画における撮影の心理的側面について、彼はこう語る。
「ジャガパティ・バーブの役を例にとると、彼は村で一番の権力者で誰よりも上の存在だ。だから、彼が話をするときは他の誰よりも少なくとも4~5フィート高い位置なんだ。
彼の家が台座の上にあるのも同じ理由で、「権威」を意味しているのです。ジャガパティ・バーブのシーンを撮影するときは、ハードライトを多用しました。夜のシーンの場合、ジャガパティ・バーブは常に光源の近くにいます。そうすることで、そのキャラクターを別の次元で表現することができるんだ。」

それぞれのキャラクターは、衣装や色調の面で重要な表情を持っています。
ラーム・チャランのキャラクターは無邪気だがタフであるのに対し、サマンタまったく違う表情をしている。

「ラーム・チャランには30色近い茶色を使い、彼のタフさを際立たせた。そしてサマンタには、ノーメイクで赤と茶色の日焼け下地を塗って2トーン暗く見せるように説得した。サマンタはうまくいくかどうか不安に思っていたようですが、撮影に来たらすっかり気に入ってくれました。彼女は太陽の下での撮影が好きではないので、彼女の撮影の多くを早朝や夜遅くに撮影しました。」とラトナヴェールは付け加えた。

監督も撮影監督も、80年代ルックを作り上げたプロダクション・デザイナーのラーマクリシュナとモニカを賞賛している。
「彼らは素晴らしい仕事をしてくれて、私の仕事をとても楽にしてくれました。」とスクマールは述べ、「2人は舞台全体に命を吹き込んでくれました。特に、80年代ルックを披露するための物件を手に入れるのに役立ってくれたんだ。」

ラトナヴェールは、村全体があらゆる意味で違う姿にみえるようにしたいと望んでいた。

「色調は、脚本が要求するものと一致している必要がありました。明るい黄色や青や赤はどこにも出てこない。すべてがとても静かで素朴、そして淡いアースカラーでなければなりませんでした。空でさえ、他の映画で見るような青には見えません。ラーマクリシュナとモニカがハイデラバードにセットを造ったとき、それは素晴らしいものでした。しかし、驚いたことに2回も雨が降ってしまい、ここでの撮影は厳しく燃え尽きた雰囲気を出す必要があるため、M90シリーズのライトをかなり持ち込まなければなりませんでした。」

『ランガスタラム』は全編レッド・ヘリウム8Kカメラで撮影された。
『ランガスタラム』はこのカメラで撮影された数少ない最初の映画のひとつだとラトナヴェールは言う。

「このカメラは、我々が目指していたビジュアルを撮影するための素晴らしいダイナミックレンジ(録音・再生が可能な最強音と最弱音との間の範囲)を与えてくれた。いくつかのシークエンスは極端に光量の少ない、状況で撮影しなければならなかったので、レッド8Kは非常に役立ちました。」と彼は言う。

『ランガスタラム』が大ヒットを記録したことで、スクマールは次に撮りたい作品についてもかなり興奮しているようだ。

「今は、アーンドラ・プラデーシュ州やテランガーナ州などの様々な地方を舞台にした農村ドラマを作りたいより多く撮りたい気分です!
真面目な話をすると、『ランガスタラム』のストーリーを説得力を持って伝えることができたのはとても嬉しい。人々は私達の努力を高く評価してくれたので、私達のいくつかの失敗も見逃してくれたのです。」とスクマールは言う。

ラトナヴェールは、すべてを整理してこう語る。

「ゴーダーヴァリ地方には多くの素朴な美しさがあり、私はその美しさに恋に落ちました。
この映画をゴーダーヴァリの人々に捧げたい。
私達は映画を通して土の香りを再現しようとしました。その点で成功した事を願っています。」




以上となります…!
勉強も兼ねて訳しておりますので拙い部分が多々あると思いますが、ご指摘下されば都度直して参ります!

また、訳文の中にある「数十年前の村ではたくさんのお祭りや縁日、民俗芸能、ハリカタ、ブラカタなどが行われていました」の「ハリカタ」「ブラカタ」とは何だろうかと訳しながら疑問に思いましたので少し調べてみました。

ハリカタ"Harikatha"(「ハリ神の物語」)とは、テルグ語とタミル語ではハリカタ・カアラクシェパム(「ハリ神の物語に耳を傾けるために時間を費やす」)とも呼ばれています。
語り手が伝統的なテーマを探求するヒンドゥー教の伝統的な談話の一形態であり、物語、詩、音楽、演劇、舞踊、哲学からなる複合芸術。歌や音楽、語りによって物語を語る人はハリダサと呼ばれているそうです。
アーンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州、マハラシュトラ州、カルナータカ州、そして古代のタミル・ナードゥ州で最も普及しているとの事でした。

ブラカタ"Burra Katha"はBurrakathaとも表記され、アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナ州の村で演じられるジャンガム・カタ伝統の口承話芸。一座は主役1人と共演者2人で構成される。祈祷、独演、舞踊、歌、詩、ジョークで構成される物語エンターテイメント。題材はヒンドゥー神話の物語(Jangam Katha)か、現代の社会問題である。1930年代初頭から1950年代のテランガナ反乱期に人気の芸術形式となったとの事でした。

スクマールさんとラトナヴェールさんの貴重な『ランガスタラム』についての様々なお話を訳させていただき、大変楽しくとても勉強になりました。
また、より強く『ランガスタラム』の良さを噛み締める事ができました…

そして、『ランガスタラム』はまだ映画館にて上映中でございますし、これから上映される映画館もございます…!お近くに上映されている映画館がある方はぜひ鑑賞されてみてください…!

『ランガスタラム』日本語字幕版配信ありがとうございます…!ですが、ぜひ円盤も…!円盤も…何卒……心から願っております……!(願)

『ランガスタラム』を気になっておられる方、これから映画館でも観られる方、配信で観られる方、今まで何度も観られた方、これから『ランガスタラム』を観る皆様の映画体験がより良いものとなりますように…


『ランガスタラム』…………最高……………………………



お読み下さり、誠にありがとうございました…!



パン粉

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