梅雨
君は毎日お花を買ってきてた
ドライフラワーにしてさかさまにして壁に飾る
僕には理由がわからなかったけれど、
そうしてる君は何より楽しそうだった
「きょうは百合のお花を買ってきたの」
百合の花?
「真っ白で儚くて大好きなの」
君みたいだね、
褒め言葉だよ?
僕は社会人になった
やっとのことで内定を頂いて君とお祝いするはずだったんだ
君は自分のことのように喜んでくれるんだろうな
この結果も全部君のおかげだよ
きょうは君の大好きな白い百合を買って帰ろう
きょうだけは君の好きな雨が愛しく見えた
「お花はね、永遠なのよ」
「でもすぐに枯れちゃうじゃん」
「だからドライフラワーにしておくのよ」
「乾燥させるってこと?」
「そうよ、そしたら永遠に綺麗なままでしょう?」
「そうなんだ、いいね、永遠って」
「私たちとおんなじ」
「そうだね、なんか恥ずかしい」
「そんなことないよ」
「花が枯れるまで一緒にいようか」
「うれしい!ずっと一緒にいてね」
「✳︎✳︎✳︎」
ずっと一緒って言ったじゃないか
最後の言葉はなんだっけな
雨に混じって聞こえなかったよ
やっぱり雨は好きになれないな
いろんなことが流れてしまうから
もう、思い出せないよ
僕だけの部屋になった壁にはいまもドライフラワーが綺麗に飾られていた