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あったかくなってしあわせになりたい

お風呂にはいってカッターで腕を切ったら経血がでてきた。あったかいのがしあわせだとおもってた、しあわせなんて知らないけどあったかいのがしあわせだとおもってた。血はあったかいからリストカットを、する、理由は血を出すためではないけどいまはほんとうにしあわせになりたくて、あったかさを得るために腕を切って、そしたら経血がでてきた。全然あったかくなかった。経血がすごくつめたくてびっくりしたし、すごくさむい。すごくさむい。経血がでたのに生理はおわんなかった。生理はおわんなかったけど、セックスは人間なのでおわんなくてよかったともおもった。でも腕からでてるのは紛れもなく経血でなんで、なんで経血がでててそれですごくさむくて、全然あったかくなんないからわたしはしあわせになりたいのに、しあわせになれなくて、さむくて、どうしよう。だってわたしはしあわせになりたいだけなのに。あったかくなってしあわせになりたいだけなのに。ずっとつめたい経血が腕を伝ってずっと、腕から離れてくれなくて腕のまわりをぐるぐるつめたくして、あったかくなんないわたしのからだはしあわせじゃなくて、どうにかしなきゃいけなくて。だってみんなしあわせになりたいだけなんだよみんなしあわせに、なりたいんだよ。みんなあったかくなるとしあわせなんだよ。だってみんなしあわせになりたいもんね。みんながしあわせになりたいようにわたしだってしあわせになりたいんだよ。だからあったかくなりたいんだよ、だから腕を切ったのに。出るのは経血ばっかりですごくさむい。ほんとはあったかいことがしあわせなことかなんてしらないしあわせなんて、しらないけどあったかいことはしあわせかなあって思って、だからあったかくなりたくて、カッターなんてもう刃をしまっちゃって、生理はおわんない。ずっとずっと、わたしはずっと生理といっしょ。セックスなんてしたことないけど、生理だし、人間だし、しあわせになりたいだけなのに。あったかくなんなきゃだめだ。だってしあわせになりたいもんわたし、だからお湯を出してあったかいあったかい、それで、あったかいのにしあわせとは思わなかった。あったかいのにしあわせになんない。あったかいのはしあわせだとおもってたよ、わたし、しあわせじゃなかったよ、経血はつめたくてお湯はあったかい、でもわたししあわせじゃないよ。みんなもそうかなあ。あったかくてもしあわせになんないのかなあ。あったかいのはしあわせじゃないのかなあ。わたし、ただしあわせになりたいだけなんだよ。あったかいしあわせがほしいだけなんだよ。あったかいのはしあわせかわかんないけどしあわせになりたいんだよ。経血がずっとでてる。わたしはずっと人間で、セックスをするかわからなくてもずっと人間でずっとしあわせじゃない。しあわせになりたいだけなのに。お風呂を出る頃には血はとまってて止血の必要もなくて赤い細い線はずっとあって、見るたびにその赤い線はあって、もうつめたくない腕があって、赤い線はきっとそのうち薄くなるかもしれないけど、薄くなってもずっと消えないかもしれないけど、でもあるだけで、ほんとは消えてるかもしれないよ。経血がでたことも忘れるかもしれないよ。お風呂を出ると誰か知ってる人がわたしの前にいて、赤い線をみながら視線をはずして、そうだよね、あなたもしあわせになりたいんだよねわたしとおなじように、しあわせになりたいんだよね、だってわたしもしあわせになりたいんだよ。そうなんだよしあわせに、なりたいんだよ。しあわせがわかんなくてもしあわせになりたいよ。包帯なんてないから血はとまっててもちょっとこわいからなんて、絆創膏を散らばせて、適当に貼ったらゴミが沢山できたよ。この絆創膏を包んでたゴミに包まれたらあったかくなれるかな。しあわせになれるかな。赤い線は消えたけど、消えないよなにも。消えないけどあるかもしれないけど、忘れちゃってもあるかもしれないけど、それでもね。あったかくなってもしあわせにはなれなかったけどわたしもみんなもしあわせになりたいだけなんだよそうだよ、そうだよね。いいよ。しあわせになりたいもんね。赤い線の上に貼ったばかりの絆創膏をゴミ箱に捨てたよ。

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