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父と娘の物語、ウエダアオイさんの「1DK」と「いくつになっても」を語りたい

アニメ「ガールズバンドクライ」第10話は家を出てバンドでプロを目指す娘と実家の父親との話でした。一般家庭でミュージシャンとか小説家漫画家目指すとか言ったら親と揉めますよね。兄が小説家プロ志望だったので片鱗の空気感は肌身に感じます。ガルクラは主人公が高校退学から予備校も辞めて…なのでそりゃあバチバチ対立からの良い話でした…という所ですが。
アニメじゃなくリアルな父娘の物語が有りまして!
ガールズバンドクライの10話を観て勢いがつきましたので、春から語りたくて書きかけで燻ぶっていた、ウエダアオイさんの新曲「いくつになっても」と対になっている「1DK」について語りたいと思います。

父と娘の物語
シンガーソングライターのウエダアオイさんは、高校を出てからそのままシンガーソングライターを目指すというロックな選択をされていて、父娘の二人暮らしだったんですが大喧嘩の末に家を出て一人暮らしをしながら音楽活動を続けています。家を出た時の気持ちで作られたのが「1DK」という曲になります。そして意地っ張りな者同士なせいか4年間会ってなかったそうです。 ところがこの春、4年ぶりの再開を果たして、その気持ちで作られたのが「いくつになっても」という曲になります。しかも再会の数日後に大阪プロレスのイベントが有り、娘のライブを初めて観に来た父上に向けて披露されているという、映画化決定!全米が泣いた!みたいなエピソードがあるのです。

「1DK」
2020年の「20(EP)」というミニアルバムに収録されているのが「1DK」という曲で、You Tubeにも動画があります。

JK卒業初めての夏 一国一城主始めました
周りにあるだけコネクト使って 初めて契約駅近1DK
後片付けとかしなくたって 丑の刻に帰ってきたって
誰の雷も落ちてこないのさ
自炊と外食割合3:7 最後の掃除はちょっと言えない
けどまあ 楽しくやってるよ ah
愛娘を崖から落として心配してるでしょ?
大丈夫あなたそっくりの自慢の娘 一人でなんで生きれてない
めちゃめちゃ愛され生かされてます ありがとうあなたの教え
(間奏)
確定申告なにそれ美味しいの?
マネーがあれあれ呼んでも出てこない
カレンダーめくるのが嫌になる 家賃光熱費持っていかないで
お帰りの声も忘れちゃった お菓子の取り合いも無くなった
家ってこんなに静かなんだな
アイスのコーヒー入れなくなったし メビウスの匂いも消えてった
全部の普通がなくなった ah
シクシクきっと今頃枕を濡らしてるでしょ
大丈夫だよ涙もろいところもあなたににたよ
一人のご飯も美味しい二人分の方が作りやすいけど
少し上手になったよ
(間奏)
「いっぺん一人でやってみろ」
耳にタコまだまだ一人でやってると思ってました
一人になって初めてだとか言いたかないけれど
たまたまたまにやってくる業務連絡みたいなLINE
その裏知ってるよ 好きが滲み出てるゾ
いつでも帰ってこいの手紙2段目にしまっています
愛娘はもっと大きくなってから帰ります
大丈夫だよあなたそっくりのやればできる子
一人でなんか生きれてない めちゃめちゃ愛され生かされてます
ありがとうあなたの教え

一人暮らしを始めた頃の気持ちが甦る歌詞の出だしです。大学に入っての一人暮らし、社会人になって家賃や学費を払って貰わない給料での暮らしの始まり、僕の場合は二段階でしたが、アオイさんの場合は一気に自立生活が始まります。「あなたの教え」という父から躾けられた事に感謝しているのですが、歌詞を通して読むと「周りからの愛に感謝する」「一人で生きてるんじゃないんだぞ」って事のようです。実家暮らしの頃は「いっぺん一人でやってみろ」と言われているのですが、一人でやってみてこそ、一人で生きて無い事に気付くだろうという親心もありそうです。我々ウエダアオイファンからすると、実家暮らしだと出てこなかったであろう綺麗事と真逆の名曲、名歌詞の数々を思うと、愛娘を家から出してくれてありがとうございます!と言いたいかも知れません。代表曲と思っている「空」では自分以外皆敵と謳っているんですが、同じアルバム内で周りへの感謝を歌われているこの振り幅が魅力の一つだと思います。世の中ホント単純じゃないです。

4年間の隔絶
一人暮らしでシンガーソングライター活動を始めたウエダアオイさん、コロナ禍の影響もあったとは思いますけど、父上とは本当に4年間会わなかったようです。僕自身遠方に転勤して5年ぐらい実家に帰って無かったので案外有り得る話なのかも知れませんが…。
ところがこの春になって、父上と会って居酒屋でお酒を酌み交したようです。個人的には河島英五さんの野風僧を思い出します(お前が二十歳になったら 一緒に酒でも呑みたいものだ ハシゴハシゴで明日を忘れ お前の二十歳を祝うのさ)。さらに情報筋から、大阪プロレスのイベントでのリング上ライブを観に来ると聞いて、ウエダアオイさん新曲を作られました。

「いくつになっても」
ライブ中は気になってリング上から探しながら歌っていても見つからなかったようですが、歌い終わって無事?発見して指さして呼び掛けてしまったようです。シャイな父上は逃げ去られたらようですが、愛娘の立派な姿を観られて納得だったのではないでしょうか。ステージ案内で歌唱力お化けみたいな紹介されてたようですし。Twitterで直接観られた方の撮影動画を拝見しましたが、堂々とした歌い上げっぷりでした。
そして新曲としてライブ初披露のあと、You Tubeでの初披露がこちらの配信「リビアナイト#4」になります。27分頃から歌われています。

僕にとっての音楽は 口に出せない夜を語るもので
僕にとっての音楽は 味気ない日々を消化するものです
あいにく天才とは場違いで 努力背負って生きてます
あなたによく似た意地っ張りと 人様の愛に生かされてます
泣いた数 増えるピアス 入れ替わり肺汚す煙
夢に見た僕とは違うかな それでも愛してくれますか
いくつになっても あなたからすりゃクソガキだろうけど
一つ言わせて 出会ってくれてありがとう
(間奏)
「明日やろうは馬鹿野郎」苦手な言葉の一つです
生意気なクソガキ掲げましょう 明日は明日の風が吹く
いくつになっても あなたからすりゃクソガキだろうけど
月並みな言葉並べさせてよ「ありがとう」
(間奏)
久しぶりに目にしたあなた 相変わらず大きな背中
口の利き方も忘れちゃったけど
涙は会いたかったみたい 涙は会いたかったみたい…
いくつになっても あなたからすりゃクソガキだろうけど
いくつになっても 照れくさそうな愛で包んでくれよ
いくつになっても あなたからすりゃクソガキだろうけど
背中丸まっても あなたの教えを忘れないから
愛してくれてありがとう
めちゃめちゃ愛され生かされてます

初々しかった高卒すぐの一人暮らしから、シンガーソングライター暮らしの積み重ね、ピアスに酒に煙草と、世の中の上品なお嬢様像とは違う生身で戦っている姿が現れています。「クソガキ」ってあんまり女の子に言わなさそうですが、父から見た娘は大人になっても小さい子供みたいなもんだって事でしょう。
そして1DKの締めと同じく「めちゃめちゃ愛され生かされてます」でアンサーソングとして強い結びつきが出来ました。そして曲調としては明るい歌ですが、泣き所もあって不意打ちを喰らいます。
自分の父親を思い出したり、娘や息子が居る人は思い出すんじゃないでしょうか。失恋歌では嘘や失望が多いですが、家族愛にも満ち溢れるウエダアオイさんの多面性を追って行きたいです。

※ 続編の妄察書きました


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