ウエダアオイさんの【lyric video】「自業自得(acoustic ver.)」について語りたい
暑かった夏から、ようやく秋の気配がしてきたこの頃、曇り空や湿気のような不穏な風を感じる曲を聴いてみませんか?
ウエダアオイさんのリリックビデオ「自業自得」アコースティックバージョンがYouTubeに公開されました。
第一印象
すでに配信では何度か聴いていたのですが、改めて動画化されての印象は「不安感と秋の気配」でした。イントロで短調の急かされるようなリズムから始まり、ざわつく不安感を感じました。歌詞の内容や細かいメロディーやギターテクについて聴く前の印象で、近いものとしては、幼少の頃に怖さを感じて苦手だった「小さい秋」が近いでしょうか。あの暗い曲調に「虚ろな瞳」という歌詞が、3歳ぐらいの頃にとんでもなく暗い曲だと刷り込まれました。
こちらの「自業自得」、事前の印象では恋人との別れが、己の自業自得でもありながら、相手は相手でせっかくの自分を振るなんて自業自得だよ!みたいな歌かと思っていたんですが、今回のリリックビデオで随分と印象が変わりました。
もっと深い凄みというか、蜘蛛の巣に掛かった獲物の気分とでもいうようなホラー感が快感に変わるようなヤバイ魅力が秘められているんじゃないか、ということを語りたいと思います。
歌詞について
君に彼らを語る資格はない
僕の資格語られる義理も無い
君に人生かけたつもりもない
君の思い通り??馬鹿にすんじゃない
惚れた腫れた抱かれた廃れた 何味も自業自得
そのつもり人生博打 二十余年
若造と笑い捨てるな 青い景色溺れていたいの
正論の講釈 耳が痛いの
(間奏)
僕に彼らを語る資格はない
黄昏時愛語る義理もない
僕の人生かけたつもりもない
僕の思い通りになんてならない
誰かの腕しみったれた夜 量産涙で同情誘う
二兎追うものはなんとやらって そんなつもりは無いの
信じてよ
(間奏)
誰かの腕しみったれた夜 量産涙の効き目は切れた
脱兎のごとく逃げ出す君の 唇優しく噛んで愛囁くの
ちゅ♡
今回も素直に読み解けない、歪な解釈が出来てしまう味わい深い歌詞です。
純愛でも清らかな交際でもない男女の事を、他人がとやかく言えるもんじゃない。全て解って溺れているんだという「自業自得」がストレートな解釈になると思います。
実際、僕自身が時間もお金も無い上に禁酒生活を強いられるような人生を送っているのも、就職や結婚の選択の「自業自得」だからね…とはよく思う事なので、自業自得という単語は僕の人生に常に貼り付いていると感じていたりします。
この歌で出てるく自業自得も、パッと読んだだけでは付き合っても別れても失敗しても自業自得だという意味に読めますが、もっとメタ的な解釈で面白みが出てくるかも知れません。
アオイさんのラブソング聴いても、アオイさん自身の生き様を第三者目線で見るように、ウエダアオイさんの歌詞に出てくる「僕」はウエダアオイさん本人で「君」は歌詞の中での現在や過去の彼氏として読んでいるのですが、もう一つの読み方として「僕」を聴き手が自分自身として感情移入するパターンが有ります。結構アオイさんの曲でも、「空」「しんじゅく」「うぉーあいにー」「何者」「おーべいべ」とかで、そういう感情移入して聴くことも多いです。
そしてあまり無かったのが、「僕」をアオイさん、「君」が聞き手の僕自身というパターンです。今回最後になって、脱兎のごとく逃げ出すところを絡み取られて、「ちゅ♡」で終わるところがカワイイポイントでもあるのですが、アオイさんがファンの我々に「逃がさんでぇ!」と不敵な笑みを浮かべて歌っている様子を思い浮かべる事で、既にハマっているファンには毒が回ってむしろ快感なのかも知れない…という解釈をしてしまいました。
ハッキリ言ってそこまで沈んで聴く事が出来たら、危険なおクスリやアルコールにトリップするのと同じ効果をシラフで合法的に体感出来るのではないかと思うのですが、言ってることがヤバくなってきたのでこの辺で。
ギターと歌唱の表現力
先程は短調で暗い曲のように言いましたが、実際はラテンのサウダージを想起させるような哀愁味のあるカッコイイ曲調で全編通しています。ベースがぐるぐる動きながらの一人二重奏のような出だし、サビでの開放感、間奏での静寂感と様々な展開に、ベースのスライドも要所で入ったり、歌唱も歌声に感情表現を盛り込まれています。これはギター弾き語りとして盛りだくさんで難しいと思いますが、トッピング全部乗せラーメンみたいですごいのです。
そういうつもりで一回聴いてみてほしいものです。
もし気に入って中毒性のあるハマり方になったら自己責任で…いや自業自得でお願いします。