ウエダアオイさんの【lyric video】「かくしごと(acoustic ver.)」について語りたい
隠し事してますか?煙草吸ってますか?
大人の嗜みですね。
そんなこんなが詰め込まれた曲、ウエダアオイさんの「かくしごと」のリリックビデオについて語りたいと思います。
歌詞の引用
画面の向こうから遠い世界 時間がただただ過ぎていく
おとぎ話に華咲かす
僕より背の低い君 今日は何故か大人に見える
煙でフィルターかかってるのかな
ニコチン アルコール セッ○スなどの
カタカナは身近にありました
「大人になろう」って君は言う この1本は近道なのかな
左手で持った憧れと あの子に言いたくない かくしごと
(間奏)
一本が二本になって 三本、四本 まるで鎖のようだ
大人になれるって聞いていたけど 体しか大きくなってない
ニコチン アルコール セッ○スよりも
1番欲しいのわかるよね
大人になってから気付くこと 憧れは案外不味かった
子供の頃の僕に問う 憧れたあの人になれてるかい
(間奏)
インテリアなった参考書 楽しくなくなった夢の話
無駄に着飾った紙袋 日曜昼下がりの吐き溜まり
チクチクと胸が痛む あの子もおうちに呼びづらい
チクタクと時が進む ため息と煙を吐いていた
「大人になろう」って君は言う この1本は近道なのかな
左手で持った憧れと あの子に言いたくない かくしごと
あの子に伝えたい恋心
煙草のテーマについて
煙草のことが主題の曲で、ウエダアオイさんでは「ココアシガレット」が有ります。こちらは喫煙所での吸えない僕から吸える君への恋心がテーマでしたが、今回はガッツリ吸い始める僕の曲になっています。
今回の「かくしごと」は煙草を吸い始めた僕が
大人になれているのか?
恋心を伝えたい君に勇気を持つためにも大人の階段を登る為の煙草なのか?
逆に煙草吸ってるのがマイナスイメージにならないか?
そして隠したいのは煙草でもあるけど、本当の隠し事は恋心だったという、聞き手にも最後まで隠されていた構図も面白いです。
そもそもココアシガレットの商品が昭和の時代には子供の大人への憧れから作られていたのが、今では大人の禁煙グッズになっているという世相も有ります。
最近読んでいる漫画で「ヤニねこ」というのが有りますが、これも煙草への世間のマイナスイメージを逆手に取って先鋭化させたギャグ漫画になっています。
ねこがヤニ吸うっつーだけの話。 「ヤニねこ」#マガポケhttps://s.magazinepocket.com/ldg?t=2229&tab=1
「1mg | ヤニねこ」 #コミックDAYS @comicdays_team https://comic-days.com/episode/4856001361358821279
いや、ウエダアオイさんはヤニカスにはなってないですよ?必死で吸ってる訳でも、どんどんキツイのにグレードアップもしてないので。ただ世間の風より自分を貫いているだけの生き方なので、人気商売なのでマイナスになる可能性もありつつ、その生き様についていくファンも居る訳で、法に触れない範囲で自由にやられています。
ちなみに、青髪にピアスで酒タバコやるというアナーキストみたいなビジュアルのアオイさんですが、普通の人より遵法精神は強いです。路上弾き語りは警察に注意された瞬間に即中断とか、路上でも自宅でも音量にも気を遣って音楽活動されています。
煙草だって僕の年代(昭和五十年生)だったら中学高校で吸ってる奴等も結構居ましたが、アオイさんは成人後に吸い始めています。ココアシガレットの曲を作った時は非喫煙者の立場での作詞作曲だったのです。
歌詞の内容について語りたい
今回の登場人物は3人、「僕」「君」「あの子」です。僕と君の二人の物語が多いウエダアオイさんの曲の中で、明確に主な登場人物が3人というちょっと珍しい曲です。偶然ココアシガレットも僕と君と(雪駄がよく似合う)あの子、の3人ですが、ココアシガレットのあの子はだいぶ脇役ですね。
大人になりたい僕は、時間が過ぎていくのに大人になる方法がわからない焦燥感に駆られています。そこへ君が「大人になろう」と煙草の誘いがありますが、大人だから吸えるものを吸ったら大人なのか?大人ってなんなんだという命題が有ります。喫煙、飲酒、性交、どれも大手を振って許されるのは大人になっての事なので、それをすればもう大人!とも言えますが、中身はどうなんだって話はオッサン連中が挙って「中身は中学生と変わらん」と言ってるので、大人は行動なのか身体なのか中身なのか、はっきりしません。
純粋だった子供の頃と中身が変わらないと言いつつ、はっきりと拭えなくなる穢れのようなものがあるのは確実じゃないかと思います。
「一本が二本になって 三本、四本 鎖のようだ」面白くて好きな歌詞です。
そして答えは人それぞれの一番の肝の歌詞は
「ニコチン アルコール セッ○スよりも 1番欲しいのわかるよね」
の部分ですが、これははっきり言って全然分かりません。聴く人にもよりますし、同じ人でも境遇や年齢によってどんどん変わります。
「金」「名声」「愛」「エロス」「家族」「健康」「長生き」すごくたくさんの1番大事なものに溢れている大人の世界。若いうちは金が大事、一生大事な人も居れば、選挙に出て名声に走る人、歳を取ると健康しか興味無くなる話、老人になっても性犯罪で捕まる人、四十代で性欲が激減する人、答えは聴く人それぞれですね。
子供の頃の僕が今の僕を見たら…すごく微妙ですね。喜ばないだろうな、とは思います。憧れのあの人には程遠い姿、それでも出来る限りでギリギリ生きている自分を肯定しないとやってられない。そんな気持ちは子供には分からない…としたら、それも大人なのかも知れないですね。
軽快な曲なのに歌詞について考えれば深みに沈んでいきそうですが、最後に歌詞のトリックがあって、曲調だけでなく歌詞も軽くしてくれます。
ずっとあの子に対して喫煙が隠し事だと思っていたら、あの子への恋心が隠し事だったというオチの構造で、五十絡みのオッサンの重さから、二十代喫煙女子の恋心というキュンとした軽さに引き戻してくれています。
煙草を吸うことで大人になって、子供じゃなくて大人2ステップアップした自分として恋心を伝えたい、と思いつつ喫煙を隠したいのは、昭和の価値観で女性が喫煙なんて…、という意味でもなく、現代的な禁煙嫌煙の思想に対するマイナスイメージでもなく、禁煙したからって大人になれるかどうか分からないよ?という潜在的な疑問が付きまとっているから。だからこそ、喫煙そのものにはもう引け目も遠慮もなく堂々と吸っていく道を選んでいるウエダアオイさんのシンガーソングライターとしての姿勢ごあったりします。
ギターについて
今回の曲調は、今年春からのリリックビデオシリーズの中でも特に軽快な曲になっています。ストロークは跳ねるリズムでミュートもあまり挟まず、ベースラインを複雑に辿ることもなく、最近の奏法の中では比較的シンプルなのかな…というところで、やっぱり爪弾きの利点を活かしてストロークから流れるようにアルペジオに入っていきます。アルペジオノパターンもゆったり印象的ナパートもあれば、高速アルペジオもあって飽きさせない構成で何度も楽しめます。特に高速アルペジオは、コードチェンジによって自動的にハンマリング・オンとプリング・オフが混ざるので音色が豪勢になりますね。
まとめ
今回も素敵なウエダアオイさん直筆イラストが添えられています。歌詞の中では僕(ウエダアオイさん)に煙草を勧めてくる大人ぶった君が、絵ではアオイさんになっています。僕はずっと酒専で煙草はやってないんですが、ウエダアオイさんに直接勧められたらちょっと吸っても良いかも知れませんね。どうせ寿命の残りも少なくなって来たことですし。
冗談はさておき、沼にハマりそうなテーマを軽快に歌い上げる楽しげな曲「かくしごと」をリピートしていきたいと思います。
十年、二十年後に聴いたらきっと「一番欲しいの」は別の答えになっていると思うので、長く聴いて振り返るのが楽しみです。
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