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独断偏見音楽談義番外編・はるまきごはんライブレポ@ / 文京シビックホール 2024.12.8 day2【はるまきごはん1010th Anniversaryワンマンライブ ハンドメイドギンガFinale-新しい旅- 】について語るよ!

はるまきごはんさんの記念すべき活動10周年となった年の暮れ、文京シビックホールで行われたライブ『ハンドメイドギンガFinale-新しい旅-』を見てきました。結論から言うとめちゃくちゃ良くて、円盤化してほしいくらい。おうちで紅茶を、温かいスープを飲みながら見たいよ。よろしくお願いしますはるまきごはんさん。
ここに感想を書けていないけれど、実は同じく今年2月に行われた『はるまきごはん10th Anniversaryワンマンツアー「ハンドメイドギンガ」』も見に行っていて、それを思い出しながら鑑賞しました。当時のそれの再演といった内容であり、より細部を丁寧に描いた豪華な完結版といったライブだった。

そんな記念すべき10年のライブがどんなものであったか、感想をつらつらと述べつつ、振り返ってみようと思う。

会場となった、文京シビックホールにて。

ハンドメイドギンガFinale-新しい旅- 12月8日(日) セトリ

※ライブ中にメモなどはとっておらず、記憶のみを頼りに書いています。
※Twitterに投稿された他の方のツイートを見ていたら、メルティとアスター、エンパープルとゴールデンレイの箇所は逆だったかも?と気づきました。そんな気がしてきたのでそちらを採用、自分がツイートしたものとそこの順序を逆にして記載しています。
※他に「ここはこうだった!」「この曲もあった!」があればぜひ教えてほしい~~……    

1. 僕は可憐な少女にはなれない(1番?歌唱は途中までだった)
2. ラストライト
3. 銀河録
4. ディナーベル
5. コバルトメモリーズ
6. エンパープル
7. ゴールデンレイ
8. メルティランドナイトメア
9. アスター
10. 約束
11. 彗星になれたなら
12. 再会
13. 第三の心臓
14. 蛍はいなかった
15. ゼロトーキング
16. 僕は可憐な少女にはなれない(2番?歌唱は途中からだった)
17. 魔法使いエバ
☆アンコール
MC(ゲストのZLMSメンバーの紹介など)
18. センシティブサマー
MC(これまでの活動についての思い、「アンサー」を歌いたかったことなど)
19. アンサー

……と思ったらスタジオごはん公式から、セトリのプレイリストが出ていたので(感謝!)引用しておく。

どの瞬間も、「彼女たち」はここにいる

ハンドメイドギンガの物語は、主人公「エテル・シアナ」の目線で紡がれる。銀河間を結ぶ「銀河間鉄道」に渋々ながらも乗ることになった彼女の物語が、曲やアニメーションとともに描かれていく。
以下は、特に印象に残った曲の感想を述べてみたい。

1. 僕は可憐な少女にはなれない
はるまきごはんさん1人のみでの演奏・歌唱。前回2月に行われた『ハンドメイドギンガ』の1曲目が「ラストライト」だったと記憶しているので、お!さっそく構成を変えてきたか!(誰目線)になった。前回の『ハンドメイドギンガ』後にアルバム『おとぎの銀河団』が発売されているので、そこを意識した・収録の新曲もあるのだろうなと予想しつつ聴きに来てはいて、だからこそ1曲目がこの曲だったことで「活動10周年」「節目」の意味合いが強調されているように感じた。
2. ラストライト
前回の「ハンドメイドギンガ」で1曲目だったこの曲が今回はこの位置に。個人的にこの曲っておそらくはるまきごはんさんの曲の中でトップに入るくらい好きで、「はるまきごはんさんの曲でおすすめ教えて!」と聞かれたらこの曲を挙げるくらいには好きだ(実際おすすめしたことがある)。
この曲を聴くときいつも、まばゆい光のシャワーを浴びる心地になる。それはサビでぱあん、と弾けるメロディーかもしれないし、「鋭い閃光が君に突き刺さったんだ」という歌詞かもしれない。とにかく、この曲を聴いている間、私は光の束を全身に浴びているんだと思う。
4. ディナーベル
ほとんどイントロのないこの曲、冒頭のギターの音が流れてきて「やったーー!!」になった。疾走感のあるメロディーがかっこいい曲で、特に2番のあとの間奏のギターの音が個人的にお気に入り。ライブでやったら絶対かっこいいだろうな~~と思っていたので、実際に生で聴くことができて感激した。かっこよかった。
6. エンパープル
これも好きな曲。私はもしかしたらはるまきごはんさんの曲の中でも、ハイテンポな曲が好きなのかもしれない(これ、ディナーベル、ラストライトなど)。これは特にイントロが気に入っていて、ラテン系を思わせる打楽器の音が鳴るのがはるまきごはんさんの曲でも珍しい気がして特に好きなポイントだ。
ボカロPの方の曲って、気に入って色々聞いていると「この楽器はいろいろな曲で使われているな」「このフレーズやリズムもよく出てくるな」とか、ボカロPそれぞれに特徴があって、それを聴けるのが嬉しかったりする。でも、今回のようにこれは今まであまり聴いたことがない!に出会えるのも嬉しいから、新しい音の開拓と曲への採用はこれからもぜひ目撃したいところだ。
8. メルティランドナイトメア
今回の席が1階の最前列、舞台の下手側(舞台に向かって左側)だったのだが、それゆえに舞台上の動きがよく見えるのが嬉しかった。
この曲も始まる前、舞台の照明が落とされていたのだが、むくむくと動く大きな影が……見えた。なので「メルティさん……??!ということはメルティランドナイトメア……?!」というのが予測できておもしろかった。
そのメルティさん、曲が刻む4拍子に合わせて身体を上下に、左右に振る様子が可愛くて、思わずずっと見つめてしまった。おかしいな……私ははるまきごはんさんを見に来たはずでは……???
10. 約束 
ここからは「ふたりの」シリーズ曲の披露となる。この「約束」がそうであったかは残念ながら失念してしまったが、その後の「彗星になれたなら」「再会」はアコースティック形式の演奏だった(昨年のライブ『二番星観望会』を思い出すな~~)。
ナレーションはVTuberのヰ世界情緒さんによるもの。彼女ははるまきごはんさんのライブでナレーションを何度か担当しているが、これに使われている言葉選びが好きだ、といつも思っているから、それを改めてここで記しておきたい。「藍の鐘でまた会おう」という言葉を今回も聞けたような気がするが、それはナナとリリ、ふたりの物語を凝縮し象徴する言葉のように思われた。
14. 蛍はいなかった
「第三の心臓」「蛍はいなかった」は、「幻影」シリーズの曲だ。このシリーズの曲については、過去に曲ごとに感想を綴っているものもあるくらい好きだ。特に「蛍はいなかった」の、特別な感情を抱く相手と特別な時間を二人だけで共有できた記憶をそっとしまっておく、という描写に激重感情が爆発しそうになる。わかる。大切だから自分だけのものにしておきたくて、大切だから簡単に近づけない。そんな気持ちを歌ったこの曲は、爽やかでエモーショナルに仕立てられたギターの音が鳴り響く思春期の青さを思わせ楽曲だ。
座席の位置的に、伸さん(ベース)が演奏中足を蹴り上げるシーンがあって、音楽っていいなあ~~~を視覚からも浴びることができてホクホク。
15. ゼロトーキング
ライブの数日前、はるまきごはんさんが動く大令嬢ちゃんを投稿していて、なんだろう??になったのですが(それがこれ↓)……

この大令嬢ちゃん、なんと本当に「ゼロトーキング」中に登場してしまったのである。ステージ前方に張られたスクリーンの中で、彼女は楽しそうにぴょこと身体を揺らしながら、音楽を楽しんでいた。
「ゼロトーキング」は緊迫感と重厚感がありつつも軽やかなメロディーが心地よくて個人的に好きな楽曲の一つだ。前回2月の『ハンドメイドギンガ』に引き続き聴くことができて嬉しかった。
16. 僕は可憐な少女にはなれない
「本編」と称した曲の終わりにこの曲が選ばれたのは、どんな意味があったのだろう、とこれを書いている今もずっと考えている。だから、探り探りという感じで以下を書いてみる。
はるまきごはんさんは、アンコール内2回目のMCで「これまでの10年の活動は自己紹介のようなものだった(意訳)」という話をされていたが、この曲に綴られた歌詞は彼の創作に込める原動力や核、背景など様々なものが込められているように思う。この曲最後の歌詞が「風に揺れるあなたの綺麗な声で僕は少しだけ少女になった」という言葉で結ばれるのが、彼が10年で導き出した答えなのかなと思っているが、その「結論」をこの位置に持ってくることが、このライブが活動10周年を冠して行われたものの最後として美しく嵌まる、そんな印象を持った。
19. アンサー
2018年に発売されたアルバム・「ネオドリームトラベラー」からの1曲。2018年当時、私はまだはるまきごはんさんのファンになりたてで、だからなのかはわからないけれど、その世界の終わりを願う内容の歌詞に衝撃を覚えた記憶がある。その後、色々なはるまきごはんさんの曲を聴いてみると、どうやら「世界」に対して少女(もしくはこれを書いているはるまきごはんさん自身も)が良く思っていない、という傾向があるように掴めていった。
この「アンサー」はまさにその世界への破壊願望(と呼んでいいのだろうか)が顕著な楽曲で、特に「世界が嫌いだって顔してる」「世界を壊したいと思っている」など、すごく直接的な言葉選びだ。
この”世界への嫌悪感”とこれまでのはるまきごはんが描いた楽曲に「学校」「クラス」といったモチーフが繰り返し登場することを思うと、はるまきごはんさんはこの、学校という子どもにとってある種世界のすべてとも取れてしまう場所に嫌悪感を持っていたのかな……と想像してしまうのだけど、実際のところどうだったのだろう。私自身は、学校という場における人間社会のシステムにあまり馴染むことができたとは言えなかったタイプなので、だから彼の……そしてこの曲の、すがすがしいまでの世界への破壊願望が、初めてこの曲を聴いた当時、驚きとともに、爽快感さえあった。
「この曲をやりたかった(意訳)」と語ったはるまきごはんさんの口調はどこかはにかむようで、達成感を感じさせたのが印象的だった。

内面のやわさを受け止めて次に進むことにした

「僕らの居ない世界の」に見た、"苦手"を"苦手"のまま受け止めること

これまでの10年ではるまきごはんさんが生み出した楽曲とキャラクターは、自己の内面を見つめていかに自分以外の人間と関わり、世界の理不尽さを受け入れ飲み込み自己の悲しみをなだめ、うまく折り合いをつけられるかという観点から描かれているような印象を受けてきた。今回のライブでは披露されなかったものの、個人的に「僕らの居ない世界の」という楽曲が好きで、これを昔「ネオドリームシネマ」で聴いたときにひどく感動した記憶がある。

私自身、自分の内向的な性格にずっと悩まされてきた。学校のクラスと呼ばれる単位まとめられてに生活を強いられるのがひどく苦手であり、苦痛だった。クラスメイトから、先生から、自分はどう見えているのか。ここで求めれる役割とはなんなのか。いつしかそんな視点から自分を過剰に客観視し、自由に振舞えない時間を長く過ごしていたように思う。

以下に引用する歌詞には、学校で感じる居心地の悪さから内側に向かいがちな気持ちをダイレクトに歌った言葉が使われている。
あの空間に対する苦い意識、学校と呼ばれる場所が苦手だった感情はそのままでよいのだと受け止められるきっかけになったように思う。

僕はきっと昔のまんまで
未だに怖いことが沢山ある
噂話と笑い声
みんなの視線と正義と
話すとキリなんてないのさ

https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/48854.html

そんな自分の世渡り下手さをそっと包んでくれたのがこの「僕らの居ない世界の」であり、はるまきごはんさんの楽曲たちだった。
この10年は自己紹介だと語ったはるまきごはんさんも、何かしらの内面の葛藤をずっと抱えてきたんじゃないか。勝手に想像してしまって、だから私ははるまきごはんさんの作る音楽と世界観に救われてきた一人なのだ。

振り返りの旅、ハンドメイドギンガを経由して向かう11年目

今回のライブ「ハンドメイドギンガ」では、主人公のエテル・シアナをはじめとしたキャラクターたちがこれまでの楽曲を振り返りながら、次の銀河を目指す物語が展開されていった。それはつまり、はるまきごはんさんの10年を振り返る旅であり、ここまでの内面の葛藤と変化、その時そのときがどうだったかを振り返る内容になっていたように思う。

これで「自己紹介」は完了したのかもしれない。11年の始まりになる作品がどんなものになるのか全く想像がつかなくて、少しだけ怖いような気もする。でもそれは、過去に留まりたいがために生じる私自身の迷いであり、きっとはるまきごはんさん自身はもう次の世界を創ることを意欲的に捉えているはずだ。この物語の中に登場した列車の決まりごとで、元居た車両に戻れないように、私たちが生きるこの時間もどんなに惜しくても昔に立ち戻ることはできない。やわく淡い心を大事な宝箱にしまって、私も”次の銀河”に飛びたてるように、はるまきごはんさんの描く世界とともに、明日に踏み出したい。10周年が終わるまもなくの折に、そんなことを願った。



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