独断偏見音楽談義番外編・はるまきごはんライブレポ@横浜 はまぎんこども宇宙科学館 / 2023.10.7 day1【アコースティックワンマンライブ『二番星観望会』 】について語るよ!
※ライブからあまりにも日が経ちすぎていますが(この部分を書いているのは2024年4月……)、見に行った直後から頑張って書いていたようで、なんとか形にしたくて仕上げました。生暖かい気持ちでお読みください……
”観望会”は秋の夜長で
すっかり日が暮れた横浜の夕暮れ時は、急速に深まった秋の気配が漂っていて少しだけ寒い。びゅう、と吹き付ける風に負けずに駅から続く坂道を上ってゆくと、暗闇の中に佇む「はまぎんこども宇宙科学館」の文字が掘られた石碑(?)を見つけることができました。ここが今日の会場です。
プラネタリウムでのライブ。そう発表されたとき、一体どんな演出になるのだろうかと胸が弾んだのを今でも覚えているけれど、それは今日この会場についてもなお同じで。それどころか、さらに高揚していく気持ちを抱えている私が居ました。
会場入口付近に展示されていた光のアート作品に心を和ませ、館内へ進みます。既に集まり集まり始めているたくさんの人、他の企画展と同じように張り出された今日のライブのポスタ-。ちょっとやそっとでは思いつかない「音楽」と「科学」の融合が目の前で起きているのが不思議で、でも不自然ではなくて、昔馴染みの友人同士だとでも言わんばかりの風景として、その二つは美しく溶け込んでいるように感じられました。ライブタイトルにもある「観望会」というテーマが、この二要素の距離をぐっと引きつけて見事に昇華してくれたんだろうと思っています。頭上にぴかぴかと光る宇宙ステーション(?)などもあって、なんだか近未来感があってとっても可愛い場所だな、と思いました。
入口から入って左手側に視線を向ければ、ここ数年でリリースされたシリーズ作品「幻影EP」「ふたりの」のディスクとスリーブ、歌詞カード、特典商品……といったアイテムたちが展示されています。
個人的に昨年の「幻影EP」のアートブックは特にお気に入りでして、こうして展示されているのを見るとなんだ嬉しくなる心地がしました。
開場時刻を過ぎてホール内に足を踏み入れると、辺りは今にも落ちてきそうな映像がスクリーンいっぱいに展開されています。
彗星になれたなら等、これまで発表された楽曲のMVが上映されていて、これからどんな演出が行われるんだろう……!と、どきどきは止まることを知りません。プラネタリウムという場所の特性を活かして、リクライニング可能な椅子を傾けて開演を待ちます。
さて、前置きはこのくらいにして、ライブ本編について触れていきましょうか。
セトリですが、今回あまりきちんと記憶ができていなくて……
そのため、曲順が違っていたり、抜けている曲があるかもしれません。
※マークのついている曲は特にその傾向が強い箇所ですので、あまりこの記事を鵜呑みにしないでもらえればと思います。
自信を持って言えるのは1~3曲目と最後がルナだったことくらいです……(公式様、セトリの発表何卒よろしくお願いします……)
★追記:10月14日、YouTubeにて行われた二番星観望会再現引き語りにて、セトリが判明しました!!!!!ありがとうございました……
はるまきごはんアコースティックワンマンライブ『二番星観望会』セトリ(day1)
1.銀河録
2.カルデネ
☆映像① ナナとリリメイン。ふたりで星座を作る。
3.彗星になれたなら
4.再会
5.夜魔
6.ドリームレス・ドリームス
☆映像② 二番星を見に来たみかげたち。あれ?でも今日は一番星を見に来たんじゃ……と戸惑うみかげ。その後、みかげはナナリリに出会うのだが……
7.蛍はいなかった
8.宇宙分解
9.フォトンブルー
10.第三の心臓
11.Marine Grey
12.八月のレイニー
13.地球をあげる
14.ルナ
☆映像③ みかげの部屋。約束していた「一番星観望会」が雨で中止になったとゆうひが告げに来る。「二番星観望会」はみかげの見ていた長い夢での出来事だった。
これに加えて、何度かMCも挟まれてます。
記憶が正しければ、宇宙分解の前とルナの前にはあったはずです。もう1回くらいはどこかで差し込まれてた気が……
あと今回はバンドメンバーもMCに参加する方式で、和やかな空気で進行されていたのが印象的でした。
さらに、今回の会場「はまぎんこども宇宙科学館」は投影できる星の数が世界で最多だそうで、ギネス記録に登録されているらしいです!その数、7億個!!すごい。
アコースティックな音と空気に浸る
今回の見所としては、使用楽器や歌い方等がアコースティック仕様にアレンジがかなり利いていたことや、MCにバンドメンバーの皆さんも参加されていたことだなと思います。
これまでのはるまきごはんさんのライブは、はるまきごはんさんが表現したいものを強く描き出すことに重点が置かれていて、自身もそれを表現するストーリーテラーの一員に過ぎない、といった印象を強く受けていました。
だからこそ今回のライブは良い意味でそれらが裏切られて新鮮に映りましたし、奏でられる音楽に親近感が湧くような気持ちになりました。
ナナとリリの楽曲、みかげたち4人の楽曲。「ふたりの」「幻影EP」はそんな特徴が歌詞等に強く反映されています。ですが、今回はそれらの世界観の中に没入する感覚に加えて、自分たちと同じ世界で起こった出来事として聴くことができたのは私だけでしょうか。
MCでは今回のライブを準備するにあたっての裏話などが聞けたのも嬉しいポイントでした。樋口さんの使用している打楽器(?)に使われている木の実の名前がわからない話、手元の照明を自分たちで点けたり消したりしている話、伸さんのベースに貼ってある演奏用の目印が演出の一部と同化して判別が付きにくくなってしまった話……会場の規模感と相まって、どこかアットホームな空気感があったのも楽しめた要素の一つ。
ナナとリリ、みかげたち、ライブを観に来た「私」。それぞれが交差した夢の中
ところで会場に入って自分の席に辿りついた時、フライヤー(あれの正式名称がわからない。ので、今回は便宜上こう呼ばせていただく)の存在に気づいて、それをそっと拾い上げたのではないでしょうか。
フライヤーには今回のライブのキービジュアルであるみかげたちのイラストが描かれていて、そのイラストの下にはこう書かれています。
実はこれ、映像と一緒に流れていたナレーションの一部分で……その中に「小高い丘」とありますが、お気づきでしょうか。
この記事の冒頭、「私は駅から続く坂道を上ってゆくと」、と書いているのです。「小高い丘」に辿り着くためには、どんな道を歩いて行くか。低い書から高い場所へと続く道を行くのではないでしょうか。
ひとりぼっちの寂しさを希望に紡ぎ直す物語
はまぎんこども宇宙科学館最寄りの洋光台駅から来た人にはわかると思うのですが、駅から科学館までに行くには坂がありました。
みかげたちの歩いた道が、自分の歩いた道を似ていると気づいたとき、まるでみかげたちの歩いてきた「小高い丘」が、今日のライブのためにはまぎんこども宇宙科学館を目指して歩いた自分と重なるような感覚がごう、と迫ってくる。
はるまきごはんさんの描く世界というのは、「メルティランド」など、どこかこの現実から遠い世界だったりで物語色が強いように感じるのですが、描かれているテーマというのは読み解いていくと実は身近で、忘れたくない童心のきらめきがぎゅっと詰まっているように感じます。
大人になると忘れてしまいそうになるけれど、本当は忘れたくない大切な思い出がある。世界は秘密で作り上げられているのなら、正しさとは何?特別なものじゃない、ありふれた愛が欲しかった。
そんな切実で胸に迫るメッセージが、可愛らしくもどこか寂しい音とキャラクター、色使いのアニメーションで展開されるはるまきごはんさんの作品たち。
もちろん今日のライブに登場したナナとリリ、みかげたちもそんなはるまきごはんさんの手から生み出されたキャラクター。彼女らの楽曲が発表された頃、物語ならではの世界を楽しむ一方で、彼女らに自分自身を投影しながら聞いていたのを思い出します。世界の正しさ、周囲からの視線、進むべき将来への迷い。瑞々しすぎる不安定に揺れ動き戸惑う心を、彼女らを通じ受容・昇華してもらえるから、私ははるまきごはんさんの作品が好きなんだろうと思っています。
仕事はできるほうじゃないし、学生時代だって友達は多くなかった。躓きながらで傷ばかりを振り返ってしまう人生だけど、ナナやリリ、みかげたちもそれぞれの場所でそれぞれの寂しさや葛藤を抱えながら生きている。小高い丘へ至る道を振り返ったとき、そんなことを考えたら胸に灯りがともる心地がしました。
小高い丘の上で行われた”観望会”は、物語が紡ぐ夢と現実を生きる私たちがそっと交差する一晩のやさしいひとときであったのだと思っています。