見出し画像

高橋優 現下の喝采 / 感想


 ︎︎ずっと薄目で世界を見ている。ずっと薄目で自分を見ている。ずっと薄目で人生を見ている。ちゃんと見たら、世界の美しさに消えたくなりそうだから。ちゃんと見たら、自分の醜さに絶望しそうだから。ちゃんと見たら、人生の難しさに挫けそうだから…。おい、と肩を掴まれた次の瞬間、思いっきり両頬を両手でパチンと叩かれる。

「 しっかり目を開いてちゃんと見てごらん 」

 ︎︎″ 最新作が最高傑作 ″とはよく言ったもので。初めてこの曲を聴いたとき自然と涙が溢れて嗚咽に近いものが漏れた。全部が心に刺さって強く揺り動かされた。この人の言葉をなぜこんなに素直に聴けるのか、それはまだよく分かってない。
 ︎︎漠然とどこかへ届けと撒いているのではなく、この曲を聴く全ての〈 あなた 〉に届けと歌ってくれているみたいだ。同じ目線に立って歌ってくれているような感覚は今までも何度も何度も味わってきたし、その度に力を貰ってきたけれど今回の現下の喝采は群を抜いて〈 あなたへ 〉という気持ちが強く伝わってくるように感じる。そう感じさせるのは高橋優という人間であり、シンガーソングライターの力なのだろう。
 ︎︎誰もが感じたことがある心の摩擦を言葉に表すことに本当に長けた人だなと改めておもう。日々の中のなんてことないことや「 そんなの当たり前じゃん 」と周りにも自分でさえも流してしまいそうな些細なことを大事に救いとって光を当てて大袈裟に賞賛してくれる。こんな気持ちは「 ダメだ 」と思ってしまう気持ちを一つ残らず「 それでもいい 」「 いい 」「 いい 」「 いい 」と全部肯定してくれる。少し戸惑う。自分を肯定してあげることはいつまで経っても難しいけれど、それでも「 いい 」と言い切ってくれる言葉たちにどんなに救われるか。その存在が、どんなに嬉しいか。

 ︎︎〈 ひとつだけ たったひとつだけ 輝いている君の中で 〉光が一番明るく見えるのは闇の中だ。闇の中から見る光の歌だ。最後に現れる〈 きみ 〉と歌う声で心臓を突き抜かれて少し傷んだ。なんの取り柄もないけれど、夢も希望もよく見えないしよく分からないけれど、そんなわたしの中でも輝いてるものだけは分かる。わたしの中で輝いてるもの、ずっとずっと輝いていて。

音楽に力がないなんて思いたくないと思っていた。でももう、音楽に力が無いなんて思えない。


いいなと思ったら応援しよう!