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高橋優 / 『 HAPPY 』 感想


──ずっと楽しみにしていました、このアルバムを聴くのを。初めて聴いた瞬間のアツアツの気持ちをそのまま残してあります。きっと、あとからどんどん変わっていくでしょうからこれもある種の備忘録と呼べるのかもしれません。


01.明日から戦争が始まるみたいだ
高橋優のアルバムの一曲目という大役を今回務めたのはこの曲でした。軽やなリズムとシンプルな音楽にズシンとくる言葉を乗せて届ける所謂″ 高橋優っぽい ″曲、という印象。本人の言葉を借りるとすれば「 ほんのちょっとの想像力 」だ。常にこれが最後かもしれないと思いながら生きろと言っている訳でもこれが最後かもしれないと思いながらパンを喰えと言っている訳でもないけど、″ 明日が来る ″という当たり前に慣れすぎていないか?今日と同じような明日がやって来る保証なんてどこにもないのに。戦争だけじゃない、急に大地震が来るかもしれない津波が来るかもしれない病気になるかもしれないし今日の帰り道に知らない人に刺されるかもしれない今夜寝てる間に心臓が止まっちゃうかもしれない。明日が来る保証は無いけど明日が来なくなるきっかけは山ほどある。なら、もっと″ 今 ″に対する解像度を上げていかなきゃ、″ 今 ″をもっと全力で愛さなくちゃ。もしかしたら「 なに生き急いでんの? 」とか嘲笑されるかもしれないけれど「 生き急いでナンボ 」なのです。だって、明日から戦争が始まるかもしれないし、今日死んじゃうかもしれないんだから。安心、安全、平和だからこそどうでもいいことで悩む暇があるなんて考えたこともなかった。グーでほっぺたを殴られたみたいだ。もっと生きなくちゃ、今を、と私の中に元々ある刹那的思考がまた一回り大きくなった。ところで、高橋優の「 愛してる 」には独特な味がありますよね。

02.BRAVE TRAIN
ハイ先生、私これ好きです。この疾走感溢れるサウンドに高橋優節が息付く暇も無いくらいぎゅうぎゅうに詰め込まれた曲。口が二等辺三角形になってるでしょ。聞く度にここも、ここも、あっちも、と好きなところが溢れてくる。〈 たぶん安泰みたいな 未来などつまらない 転がり続ける 奇跡を起こして 〉〈 イタイくらいが良い 〉傷付けられたこともそのとき付いた傷もまるめて自分の武器にしていく強さ、まだまだやってやれ!どんどん進め!いけ!!と矢継ぎ早にグイグイ押されていつの間にか自分の力で進んでいけるような気持ちになる。えっと、わたしのレール、ここでいいですか?〈 荒れ狂う展開 フラグ取り返し 大どんでん返し 〉の言葉の羅列が気持ち良すぎて声に出して読みたい日本語のひとつに登録されました。〈 極彩色の花の中 抱きしめ合うみたいな 〉という比喩表現も大好き。ライブで右腕もげるくらい振り上げる準備はしておきますから、右腕だけムキムキにしときますから。

03.キセキ
明日は「明るい日」と書く。今日が終わって、また明日が来る。それが繰り返されるということはすなわち平和であるということ。でもそんな当たり前が不確かなひとが、奪われたひとが、今この瞬間にもこの世界のどこかに沢山いる。そんな時代を生きてく高橋優と私たちの歌だ。前回ツアーのキセキ演奏前のMC で「 本当は毎日いつも隣にいてあげられたらいいんだけど…「 最近寒くなったよね~ 」とか「 あ、ほら、桜が咲いたね 」とか、そういう些細なことを言い合えたらいいんだけど実際そういう訳にもいかないからさぁ、その代わりになるように描いた曲です 」と言っていたけど本当にそんな曲だ。自分より少し大きくてあったかい木漏れ日みたいな存在がずっと横で歩いてくれているような安心感と泣きたくなるくらいの愛おしさを感じる。悲しいことも嬉しいこともこの曲と一緒に重ねていけたらそれだけでいいなと思う。

04.はなうた-pray for Akita-
〈 生きたいか?生きたいよな 死にたいか?死にたいよな 〉生きたいよな、死にたいよな、を同じ感情で問いかけてくるところが私が高橋優の歌を聴き続けられるひとつの要因なんだろう。そんなもんさ、変じゃない、大丈夫、とすかさず肯定してくれる所はもちろんだけれど「 ああ、この人もこの両極を行ったり来たりしながら生きてるんだな 」と思えるところ。少しだけ寂しくなる。1ミリも背伸びもしてない想像なんかじゃないこの人の中にあるそのままのまっさらな生きた言葉だから、苦しいくらい心に落ちてきて染み込んできて何度聴いても同じくらい泣けてしまう。ごめん、ティッシュ取って。〈 多分また笑えるさ だけど耐えられない時は会いに行くよ シャラララ唄いながら 〉何度聴いても新鮮に「 高橋優に出会えてよかった 」と思える。音楽で人は救われるよ、音楽で変わることはあるよ、あなたに出来ることは沢山あるんだよ、絶対にあるんだよ。〈 世界中の幸せ集めて あなたの中閉じ込めて 色とりどりの喜びを起こせ 〉

05.現下の喝采
初めて聞いたとき号泣した自分にずっと薄らドン引きしている。闇の中から光を見る人の歌。日常のなんてことないこと、「 当たり前じゃん 」「 普通でしょ 」と他人にも自分ですら流してしまいそうなくらい些細なことをひとつひとつ掬いとって光を当ててくれる曲。1度でも生きるの苦手だと思ったことがある人、普通とか当たり前に疲れがちな人なら誰しも心がちょっと動く言葉が散りばめられているのではないのでしょうか。自分を肯定することが難しいと感じる人の気持ちを知っている人が言い切る「 それでもいい! 」にどんなに救われるか。ライブで一緒に〈 俺たちの歌 〉を歌える日が楽しみで仕方ない。きっと声より涙が出て上手く歌えないだろうけれど、練習はしておこう。ンンン”ッ…… まだまだ今日を大切にすることも自分を褒めてあげることも難しいダメな人間だけど、私の中で輝いているたったひとつの大切なものはずっとそこにいてほしい。誰にも汚させたくない守っていきたい。

06.リアルタイムシンガーソングライター
「 高橋優 」と極太黒マジックででかでかと名前が描いてあるような曲。「 もっと肩の力抜きなよ 」「 もっとうまく生きたらいいのに 」幾度となく無責任に自分に投げつけられた言葉たちを思い出してハッとする。私いまこの人に同じ言葉を投げつけようとしてた、と。「捻くれてる」とか「めんどくさい」とかいう言葉で形容されてしまうこの感覚を研ぎ澄まして削って尖らせて武器にして、現状に満足なんか全然してないしなんならもっともっともっと…と貪欲に転がり続けるリアルタイムシンガーソングライターの背中をずっと追いかけていきたいと決意を新たにさせられる曲。〈 バァバンバァンバァンビィバドンドン ヤァレンソォランソォランソォラン ハァ~ドッコイショッ 〉が好きすぎて時代が時代なら着うたにしてた。わたしは強い人より自分の弱さを受け入れた上で強くあろうとする人が好きだ。傷付いたとき素直に 「イテェ!」と大声で言う人、その傷をずっと忘れない人が好きだ。

07.WINDING MIND
東京うんこ哀歌、沈黙の合図に続く″ 天才たちが大真面目にふざけてる曲 ″である。今までだって秋田弁の曲は何曲かあるけれど今までで一番難解だ。〈 はがいがねくても ほれかっつげ 〉が音的に大好きだけど一番意味が分からないので誰か教えて欲しい。勝手にヘビーなロック、いやヘヴィーなロックだと思っていたのでちゃぶ台を床の基礎からひっくり返されたみたいで、シンプルに脳内大惨事だ。秋田の大地に吹きすさぶ冷たすぎる風とその中で確かに燃える心の炎の熱みたいなものを感じる。他人になんと言われようが思われようが、理想がなんだ現実がなんだ、俺は俺なのだ。君は君なのだ。真っ直ぐ前を見据えている固い意思を…胸を張ってこの道を…や、すいません、やっぱり〈 どん! 〉に持っていかれてしまうんですけど…高音の〈 どん! 〉を聴く度に太鼓の達人のドンちゃん( 赤いほう )が薄らと浮かんでくる。太鼓の達人をプレイしているような気持ちになる。格好良くて気持ち良い転調と〈 どん! 〉も一緒に転調されるだけでもギリギリなのに高速になられたらもう無理だ。ライブでこの〈 どん! 〉がどうなるのかが気になって夜しか眠れない。
?「 もう一回遊べるドン!」

08.雪月風花
爽快でキャッチーなアッパーチューン、前回ツアー中も聴けば聴くほど好きになっていったけどそれはツアー後もずっと続いていて聴く度に自分の中に浸透してくる。独特な日本語を疾走感溢れる音符に気持ちよく乗っけて届いてくると自然と気持ちが高揚してくる。まだまだリアルタイム現在進行形で色んな感じ方をしているところ。本当に、「 きみ 」にはいつまでも傍にいてほしいものです。バンドで聴けるの楽しみだな。

09.かくれんぼ
〈 悲しみのない場所 〉を初めて聴いたときと同じ感覚になった。会いたいと思うひとと会えるのは夢の中だけで、現実にあるのは自分と一生消えない思い出と死ぬまで付きまとう後悔だけ。自分の中にはこんなに鮮明に居るのに、ああ、どうしてあなたはいないのかなぁ。明け方の部屋を見渡してぽつんと独りでいる彼を思い浮かべて苦しくなる。朝は嫌になるほど来るし季節も勝手に巡るし時間もどんどん進む。ただ、そこにあなたがいない。〈 思い浮かべるだけであなたの気持ち晴れるような 大切にしたい人がいるのなら 今 いるのなら 〉に続く言葉を。残された人は、今日も数え切れない後悔と共に生きている。

10.Spotlight
高橋優のSpot lightで照らされる人がありますように。主人公なんかじゃなくていい、ヒーローでもヒロインでもなくていい、あなたはあなたでいい!このどうしようもない世界を生きてく意味を教えてくれる曲、2023年に一番聞いた曲、2025年もこれから先もわたしが生きてく限りずっと聴いていくしその度に救われるんだろうな。いつだって忘れがちで見えにくくなりがちな大切な事を教えてくれて、等身大の高橋優の曲が大好きだと再確認する。今日という日に、今日という日を過ごした自分に小さな拍手を送ってあげたい。指パッチンは諦めました。

11.オープンワールド
こういうお喋りみたいな曲、大好きだ。かなり好きな曲である、けどなぜ好きなのかというのを具現化するには時間がかかりそうです。音楽という大海原で高橋優が自由に楽しく気持ちよく泳いでるみたいなイメージ。朝起きて珈琲入れて零しながら踊りたくなる。陳腐な感想とは百も承知だけど「お洒落」だ!と思った。こんなに沢山の言葉がごちゃごちゃにならないで音としても意味としてもちゃんと伝わってくるのはボーカル高橋優の強みのひとつと言っていいはず。淡々としたトーンで心のささくれに引っかかるような言葉をたくさん投げかけてくる。しっかりひっかかる。思考する。わくわくしてくる。ライブで聴いたらまた変わりそうで、オープンワールドという名前の通りどんどん広がっていきそうな予感しかない楽しみな曲。

12.青春の向こう側
イントロの歪んだギターが格好良くて痺れる。だいたい、国を代表して戦う者達への曲なのになんでこんな平々凡々の凡の凡の凡みたいな全然スペシャルじゃない人間の心にも響くのだろうかと、不思議で仕方ない。こんなに一生懸命生きてないし壮大な夢も希望もないのに。〈 目の前に立ちはだかる壁を ぶち破れ 「なくても」世界は変えられる 〉聞いた瞬間心臓が落ちて大きく鳴った。高橋優の曲を好きになった” 理由 ”が「 ね、こういうとこでしょ 」とにやにやしながら肩を組んできた。そうです、こういうところです。HIGH FIVEを聴いた時も同じことを思ったことだけど勝者にでは無く敗者に向けた言葉だから聴けるのかなと。理想通りじゃなくても〈 今日 〉を迎えることの大切さ、美しさを歌っているようなその言葉に胸を打たれるのかな。生きているとこんな人生意味あるのかと思うことばかりだけれど、讃えられるような日々じゃなくてもこんな毎日でも愛おしいと思えたらいいな。〈どんな未来が待っていても〉の〈 ま 〉の曇天を払って晴天を突き抜けるような声の出し方がたまらなく好きだ。所々でボーカルの音が割れてるように聴こえたのでちょっと良い再生機器で聴いてみたけどやっぱり割れてた。そんな熱量を早くライブで感じたい、心に触れてアチッとなりたい火傷したい。


──HAPPYと名付けられたこのアルバムに共通していたのは”今 ”だった。「 未来は今と今と今のその続きでしかない 」と昔の曲でも言っていたけど、幸せ=今ということなのかな。今が幸せであれば未来も幸せ、ずっと幸せ。何でもない日を嘆くんじゃなくて讃えてあげよう、愛してあげよう、世界はこんなに輝いてるんだからといつも教えて貰ってる。こんなどうしようもない人間にも未来を思わせてくれる。「 あぁ 幸せだな高橋優と会えて もう何もいらない 」なんて言えちゃうし。

この幸せをツアーで感じられる日が楽しみで仕方ない。この続きはツアーで、また会いましょう


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