高橋優 弾き語りツアー 2023-2024 「ONE STROKE SHOW ~一顰一笑~」栃木公演レポ


「8年ぶりの栃木です!」
───「…高橋優?あ、あのメガネの人ですか?え、チケットあるなら行きます!」8年前、それこそ初めて高橋優のワンマンライブを見たのが栃木だった。私も8年ぶりに栃木で高橋優を見た人の一人だ。そのライブがきっかけで一気に高橋優というアーティストの音楽に引きずり込まれたので勝手にどデカいエモみを抱えて行った。当時の自分に今のことを言っても何ひとつ信じてもらえなそうなくらいこの8年間という時間の中で様々な事があったけれど、8年経っても高橋優は初めて見た時と全く変わっていなくて心の底から安心した。「やっぱりこの人最高だな~!わはは」って。なんとなく「変われ!変われ!」が漂っているこの世界で「そのままでいいよ」「君のままでいいよ」と歌ってくれる本人がずっと変わらずそこに存在し続けてくれていることがどんなに心強いか、どんなに嬉しいか。






01.未だ見ぬ星座
開演のブザーが鳴り、赤チェックの高橋優が出てきてピースしたり手を振ったりして一通りにこにこ挨拶が終わったら旋毛が見えるくらい深いいつものお辞儀。中央の椅子に腰掛けてギターを手に取り、目線を上げて息を吸う。一瞬の静寂から最初の音が鳴った瞬間一気に身体の体温が上がった。fssツアーで聴いた未だ見ぬ星座の最後の力強いシャウトが今でも思い出せるくらい衝撃的に格好良くて鮮明な記憶として残っていたからまたこのツアーで新しい”未だ見ぬ星座”が聴けるのかと、ドキドキした。鬼気迫るCメロもシャウトもfssツアーで聞いた時よりも何もかも増していた。高橋優の進化を一曲目から感じた。

02.陽はまた昇る
可能であれば毎回、何度だって聴きたい。でも今年の風とロック芋煮会で演ってたからもう暫くやらないか…と諦めていた。え、やった、やったよ。まだまだ荒削りの、少し触ったら血が出そうなくらい鋭利な技術云々より気持ちで押して伝えていくような少し心配になる脆さがある当時の歌声も大好きで。それを”今”の高橋優が歌うとどうなるのか純粋に興味があった。 「陽はまた昇るさ」力強いその声と言葉で救われる心が沢山あって、先を照らされる人が沢山いるはずで。それを出来るのはきっとこの人だけだ、なんて割と本気で思いながら聴いていた。

03.シンプル
シンプル~!!!!!!!!おま、お、お、わ、久しぶりだな~~~~!!!!!!!スタオバ以来じゃないか!!!!!!!と、シンプルをシンプルにぎゅっと抱きしめたくなった。ヤッター!事ある毎に「シンプルがシンプルに聴きたい!」と言ってきた甲斐があった。私の人生観をちょっと変えてくれた曲、今したいこと見たいものすぐ会いたい人精神を作ってくれた曲。Cメロの変則的なテンポの手拍子を「ここよくテンポ崩れないで手拍子出来たね!」と早口で褒められた。めちゃ早口になってもブレスがしにくくても変則的なテンポになっても一切言葉が流れない発声と発音が気持ち良い。このツアーに行けば毎回シンプルが聞けるのか、嬉しいな。最高かよ。

04.雑踏の片隅で
ハーモニカの音色で心が軽率に武道館に帰ってしまった。あの時武道館で聞いた雑踏の片隅でと今ここで聞く雑踏の片隅で、同じ曲なのに全く違う意味を受け取った。流石リアルタイムシンガーソングライターの作る曲はいつどの瞬間にもピタッとハマるんだな。目からと耳からの情報量が多すぎて処理が追いつかなくて心がすぐいっぱいになってしまって、ちょっと大変だった。

05.誰がために鐘は鳴る
この曲の薄ら漂う絶望感の中で見える強い光が、言葉と音だけで感じられるこの光が大好きで。他人行儀の世界で”僕”という人間に意味を見出したい。見い出せない。そもそも、それに意味ってあるの?左胸から聞こえるこの鼓動だって無意味に思えてしまう。ギターと声だけという削りに削った構成だからこそ歌詞がいつもよりダイレクトに耳から心に入ってきてカサブタを剥がそうとしてくる。ああ~いつか私も私が今生きてる意味を見い出せたらいいなぁ。闇の中で光に照らされている自分を想像しよう。

06.同じ空の下
ウォーイェェエのタイミング、難しいよね。高橋優の喉がめちゃ良く開いてるのが感じられて耳が気持ちよくなった。「この高い壁の向こうに何があるだろう」で少し上を向く目とか「これだって決めた」でギターの方を向く目とか、些細な所作でいちいちボッと熱くなる。全てを体現して突き進むこの人が言うならそうかもなって思える言葉ばかり。捻くれ人間でも素直に受け取れる。お客さんを見渡す目がきらきらしていてとても良かった。笑ってる高橋優を見て一緒になって笑ってたら前歯が乾いた。

MC & 蛍の光[オタマトーン演奏]
会場のすぐそこにある新生姜ミュージアムに行ってきた高橋優、ひとりでご飯を食べてたまたまライブしてたバンドのCDを買いミーハー魂爆裂してサインまで貰ってきたと。「ほらぁ!サァインまで書いてもらっちゃってさァ!!!!…はは」そこで購入したイワシカさんバージョンのオタマトーン、昨日の夜ひとりでホテルで練習してきたのでぜひここで披露させて欲しいと。「それでは聞いてください、蛍の光…」 ───顔がプロ奏者のそれだった。大きな瞳をスッ…と閉じて長いまつ毛を下に向けて、完全にオタマトーンとひとつになっていた。オタマトーンの絶妙に音痴な「アァア~~」とそれを演奏する高橋優の顔面が面白すぎて泣くほど笑った。呼吸困難になるかと思った。ライブで涙が出るほど笑ったのは初めてかもしれない。「…これ…ビブラートも出来るんですよ…」やってみますね!と言ってもうワンコーラス演奏し始めた時は本気でダメかと思った。

07.Spotlight
直前に披露したオタマトーンの蛍の光が自身のツボにハマってしまったらしく、ぶしゅぶしゅぐしゅぐしゅ笑いながら「だからねwwww毎日の中のwwwちょっとしたwwww良いこととかをwwww」と懸命に曲紹介をしていた。最初、すぐ隣に置いていたけれど「やっぱこれあるとダメだwwwww」とスタッフさんに回収してもらっていた。曲に全集中していたはずなのにどうしてもオタマトーンの「ァァア~~」が脳内で流れて来てしまって本当に本当に悔しかった。次回Spotlightはリベンジさせてほしい。なんだか高橋優も心做しかニチョニチョしていた気がする。

08.靴紐
愛おしそうに丁寧に一言一言、一歩一歩、歩いているように歌っていた。何回聴いても〈愛とか夢だけじゃ生きられないんだなぁ〉の一節が切なくて、それを歌う眉毛が下がった顔もちょっと切なくて、胸がキュッとなった。君とのかけがえのない思い出をあの街に置いてきた彼がいま報われてますように。

09.微笑みのリズム
こちとらこの手拍子毎日練習してんだ!!!!!任せな!!!!純粋にキーが高いし言葉数は多いしブレスも少ないし歌うの難しいと思うんだけど見事にCD音源超えてきてて凄いなと素人耳は毎回思う。頭を少し斜め後ろに引くようにして出す高音とか、よく動く口とか、じっくり見てしまった。高橋優がとっても良い顔で歌うから、それを見るこっちも笑顔になって歯が乾く。この歌詞に何度もコチコチに固まりがちなしょぼい心を溶かしてもらってるんだ。きっとこれから先もそう。いつも本当にありがとね、また練習しとくからさ。

10.HIGH FIVE 
みなさん、一緒に歌えますか?」お客さんの声を聞く顔がいつもの通り”良く”て。その顔を見てたら歌い出す前からちょっと泣きそうになってしまった。突然声が無くなって声が届かなくて声が届いて声が聞こえるようになって、今。愛おしそうに嬉しそうに聴いているように見えた。最後の高橋優の声だけになった瞬間のエコー効果が衝撃的で。とてつもなく大きな何かで全身くるっと包み込まれたような感覚になって思わず自分を強めに抱きしめてしまった。あの感覚をどうやって文字に表せばいいのか、まだ探してるところ。

11.サンドイッチ
み、みんな~~!!!サンドイッチだぞ~~!!!!ワー!!!と心の中の群衆が沸きに沸いた。うおおおお。ブッピッピーッとカズーを吹く時のムニッと余ってる上唇がなんとも言え…う…え…?なに可愛い…?となってしまった。おかしいな。〈「ありがとう」って僕に微笑んだ〉の母さんになった時だけニッコリするのに後なんであんなに目がマットだったんだろう。焼きたらこってなんであんなに売ってないんだろうね。

12.誰かの望みが叶うころ
本当にギターと高橋優の声だけなのか?と疑うくらい途方もない広さと深さを感じた。表現力というか、浸透力というか、見えない気持ちを言葉に現してそれを歌に乗せて伝える力がずば抜けて長けた人だなと改めて痛感させられた。今本人が抱えているであろう感情とか想いが痛いくらい伝わってきて。世間から”綺麗事”と言われて片付けられてしまうようなことを、この人は本気で願っていてその願いの先とは程遠い酷く虚しいこの現実に心を痛めているんだろうな。〈誰かの願いが叶うころ、誰かの明日が灰になる〉

13.友へ
なんだか、ぽろぽろ泣いてしまった。武道館を思い出したりあの頃を思い出したりいろんな過去にぶんぶん振り飛ばされた。ある時から「後悔の歌にしか聞こえなくなった」と個人的に悩んでいた。今回の演奏を聴いていたら、どんなに辛い事が起きても心が引き裂かれるような何かがあっても生きてる自分は「生きていく”しかない”」んだ、と諦めにも似た気付きがあった。それからゆっくりとじんわりと「決意の歌」になった。どんなに後悔しても、苦しくても、悲しくても、虚しくても、今生きてる自分は生きていくしか無いんだと。友へ、の決意だ。

14.はなうた
友への衝撃を処理しきれないまま引き続いてぽろぽろ泣いてしまった。途中でコンタクトが眼球から出ていくくらい。すぐにちゃんと戻ってきた。〈明日はきっと〉 〈生きていけ〉〈また会おう〉〈一緒に〉とか歌いがちな人の〈It's alright ではないよな〉〈生きたいか?生きたいよな〉〈死にたいか?死にたいよな〉が重たくて痛くて苦しくて。全部、生きるのが下手くそな自分に向けられた言葉のように思えて。勝手に、苦しいやら嬉しいやらなんやらでぐちゃぐちゃになってしまった。〈会いに行くよ シャララ 歌いながら〉ああ、高橋優がみんなに会いに行くツアーなんだなぁ。はなうた、ひとりでも多くの人の心に届きますように。

15.(Where's)THE SILENT MAJORITY?
「僕も立つので皆さんも良かったら立ち上がりませんか?」「ここからは”ぶっちゃけタイム”で!」ぶっちゃけタイムの意味は正直よくわからなかったけれど、ギターを背負ってステージ上を歩くその姿だけでもキャパオーバーしそうになっていたら目の前にやってきた。近い近い…と声にならない声を両手で必死に喉の奥に押し込んでたらパチッと目が合って、ギターを掻き鳴らしながら口をガァッと開けてきた。ここで私の脳は1度煙を上げて完全にショートした。ありがとう、すいません、え?なんですか?客席に手拍子を煽って会場を1つの大きな塊にしてからその音の真ん中で身体全部使ってギターをかき鳴らす様がもう本当に最高に良くて前の椅子の背もたれを引きちぎりそうになった。

16.勿忘草
歌い方がとても優しくて。ふかふかのお布団とかほかほかのお味噌汁とか、お出汁みたいな。ふわっとしている中に強い愛が感じられた。高橋優ってこんな歌い方も出来るんだなぁ。

17.キセキ
明日とは「明るい日」と書く。明日が来る、今日になって、また明日が来る。それが繰り返されるということはすなわち平和であるということだ。そんな当たり前を失わないと理解出来ないなんて嫌だ。明日が来るという当たり前のような事が不確かな人が今この瞬間にもこの世界に沢山いる。そんな時代に生きる私たちの歌だ。明日って、希望だ。奇跡だ。

18.雪月風花
この曲は弾き語りでどんな風になるんだろうと思っていたのだけれど、想像以上に化けていた。あの疾走感はライブで腕を振り上げながら聴くしかない。まだまだ生まれたての赤ちゃん曲だから、お客さんのリアクションを探りつつ…みたいな雰囲気はあった。いい感じ!とにこにこしてた。高橋優らしい言葉と心地よいギターの音色でどんどん気持ちを上げられていった。〈今日を迎えられてよかったな〉

19.虹
上手袖で一人のスタッフさんがめちゃ沁みながら聴き入っているのが見えてそっちに気を取られた。そういう顔になっちゃうよね、わかる。”高橋優”というアーティストが持ってる強みを全部を見せ付けられるようなこの曲でいつも圧倒される。圧倒され過ぎて脳が処理しきれなくて少し笑いが込み上げてくるくらい。す、すげえ…となる。もう毎年熱闘甲子園のテーマソング「虹」にしちゃおうよ、ね? いいよいいよ。何度聴いても純粋に心が高まって新鮮に”好き”という感情が湧き上がる曲のひとつ。

20.明日はきっといい日になる
ソーーーーハッピー。みんなで「明日はきっといい日になる」「いい日になる」と何度も繰り返していく内に「あっ!待って、なんか本当に明日いい日になりそう!」と思えてくるから不思議だ。お客さんの歌声を聴きながら一人一人の顔を見回って丸くて大きい目をへの字にしながら嬉しそうに笑う一連の表情の移り変わりが愛おしくて、私は、きっとものすごく気持ち悪い笑顔でいたと思う。

21.(アンコ)プライド
ツアーTになって身体の厚みが感じられる高橋優になって戻ってきたアンコール一曲目がプライドだなんて、ちょっと待ってよ全然心の準備出来てないよ。じわりじわりと脳に熱が入ってくるような、曲の盛り上がり方が好きだ。そっと語りかけるようなAメロBメロと、サビで一気に開放されるあの感じがたまらなく好きだ。高橋優が過去の自身に当てて書いたみたいな歌詞が大好きだ。何度聴いても1番初めに聴いた時と同じくらいの衝撃を受ける。渾身の〈さぁ、始めよう〉で新生姜ホールが上下左右に少し伸びたかもしれない。

22.(アンコ)ピーナッツ
最後の曲です。みなさん今日はどうもありがとうございました、また会いましょう!高橋優でした!」リーマンズロックの〈生きていけ〉で終わるライブ大好き人間なので始まった瞬間は正直少しだけ寂しく感じたけれど「またこうして皆さんと会えた時を想像しながら作った曲です」と始まったピーナッツ、だいぶ良かった。すごく良かった。すいませんでした。最近ピーナッツ終わりにハマってると思ってたけど会えない期間を経てやっと会えたから、また会えますように。の気持ちが強いが故になんだと。誰よりも直接会うことに一途で真っ直ぐな人だから。高橋優にまた会える日まで頑張らなくちゃな~!と単純脳みそ人間はとってもとっても元気になった。来てください、ピーナッツも柿の種もあげますから。


【一顰一笑】 まさにその名の通りだった。曲ごとに人格が変わるような、ころころと変わる高橋優の表情を見るのが大好きなのでこのセトリを弾き語りという極限のシンプルさで見られたのは本当によかった。[シンガーソングライター高橋優]の原点と今を見たようなライブだった。中身はゴリラなので何度も座ってる椅子から転げ落ちそうになったし何度も座ってる椅子を破壊しそうになった。

ザワつく会場を飛び出して、ホッカホカの顔で見上げた高い冬空が澄んでいて星がキラキラしていて本当に綺麗だった。鼻の奥がツンとする寒さの中で身体と心は最高にポカポカしていた。普段は恥ずかしくて言えない「ありがとう」を高橋優の綺麗な旋毛目掛けて精一杯に声に出して飛ばしてみた。0.0003gくらいは届いたかな。ああ、なんだかよく分からないけど私、自分が思ってたよりも高橋優のことが好きみたいだ。


高橋優 弾き語りツアー 2023-2024 「ONE STROKE SHOW ~一顰一笑~」 栃木公演 12/17


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