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アニメ「平家物語」のメモ

2022年の冬アニメ「平家物語」について書く。

平家物語は叙事詩であるけれど、アニメ「平家物語」は抒情詩としての側面も描き出されている。ただ事実を述べる軍記物ではなく、ひとりひとりの心情や些細なできごとを掬い取り、平家が滅んでいくその時間のなかにあった、「いま」を鮮やかにに切り取っている。

監督の山田尚子さんがわたしは大好きで、脚本の吉田玲子さんも大好きで、音楽の牛尾健輔さんも大好きなので、とにかくぜんぶ良かった。
全体的なシリアスさはずっと感じつつ、絵の色合いや演出のあたたかさは、当時そこにあった光を切実に描いている感じがして、登場人物がより生き生きと愛らしく動けている。
山田尚子監督の、花を使った演出が好きだ。

原作は古川日出男氏による現代語訳版「平家物語」で、アニメでは、原作には登場しないオリジナルキャラクター「びわ」が主人公として据えられている。びわは作中、語り手や狂言回しのような役割を果たしており、今作は「びわの語る平家物語」ともいえる。平家物語はたくさんの人々によって語り伝えられ補強されていった物語であるから、平家物語の成り立ちそのものをうまく踏襲していると思った。
「びわ」は琵琶を抱えた少女で、物語冒頭父親を平家の人間に殺されてしまう。その後、平清盛の息子である重盛と出会い、まあなんかいろいろあって一緒に暮らすことになる。数奇な運命すぎる。

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