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ヴィンテージギター購入ガイド(Fender編)

ここ5年で30本以上売り買いした忘備録。Webや本などで最低限知識を得ているという前提のもと、じゃあ実際どれ買えばいいの?という疑問に的を絞った話 独断と偏見よ

筆者 しらいし https://twitter.com/__mmnr


購入目的を明確に

目的がブレるとほぼ失敗する。自問自答を重ねて目的を絞るべき。目的を重複させるのも避ける。楽器ごとに変えるのはあり。

ケース① 楽器として買う

言語化


ヴィンテージギターには特有の音色が確かにある。しかし必要な音とズレていたら、すぐ弾かなくなる。楽器として買ったのに弾かないっていうのが一番の損。まず必要な音を正確に言語化すべき。

  • 色気がある/クリア

  • 野太い/繊細な

  • 速い/遅い

  • 明るい/暗い

  • ルーズ/タイト

  • 立体感がある/ない

基本的にスペックにて音色は決定される。上記を参考に言語化し、それを楽器店員に伝えて意思疎通を図る。提案された楽器に対して、「もう少し広がりが欲しい」とか「ちょっと明るすぎ」とかコミュニケーションを重ねるとイメージに近づきやすい。下手したら現行ギターのほうがぴったりな可能性すらある。ちゃんとしたお店なら現行も薦めてくれる。

ストラトでいうと、色気が欲しいならブラックボビン(~64)までだし、タイトな出音も欲しいということであればスラブ期(59~62)であろうということになる。

必要な音色を定めた中で、クオリティの高い楽器を探す。ここから個体差や状態を加味した絞り込みを行う。

当たりのギター

「生ドラムに勝てるかどうか」がわかりやすい判断基準。生ドラムのダイナミックレンジと周波数の広さは半端じゃない。

経験的には下記の感じ

  • ピアノからフォルテまで音色音量ともに連続的な表現ができている

  • 変な周波数のピークやディップがない

  • 出力音がでかく感じる

  • プレゼンスが出ている

  • ローエンドも出ている

  • サスティンが長い

個人的には、きれいな個体のほうが印象がよい。弾き込んであると音がひずみっぽいというか、余計な倍音が出てしまって不明瞭に聞こえる。ただ弾いてる感というかリアクションは感じられるので、弾いててテンション上がる。

好みの音のギターを買えばいいと思うけど、好みは移り変わる。高性能のギターを買って、セッティングで好みに寄せるがオススメ

タイト→ルーズにはできるけど、ルーズ→タイトはできない。迷ったらタイトにセッティングできる個体のほうがいい

試奏への臨み方

試奏の際はなるべくMarshall。fenderはある程度音を均してしまうのでクセが見えない。

ペダルを踏まず、素性を確認する。この段階で感動しない楽器を買っても使わない。現行の楽器と比べ、セッティング幅が狭いことは事実なので、あとでなんとかしようとすると詰む。

Volを8ぐらいにして成立するギターはいい個体。手元でローを突いたりハイを突いたりする余地がある。VolはPeakEQで、TONEはローパスフィルターのイメージで使える。

フルオリジナルを避ける

音で考える場合、消耗品を変えたほうが有利に働くことが多い。ポットやジャックで音質がかなり犠牲になっている。

劣化した部分は交換すべきだし、交換できないとストレスを感じて弾かなくなる。であればフルオリを避けてある程度の修理・改造できる余地があったほうが、長く付き合える。

Stackpoleのポットにインパルス通してみたらシグナル削れてたの図

ケース② ファッションとして買う

好きな個体を買う。妥協は絶対にダメ。
コスプレの場合は手放すとき楽。



ケース③ 投機として買う

「ヴィンテージギターは値下がりしない」とか幻想。モズライトを忘れるな。近年の値上がりの要因は主に円安。円高になったら吹っ飛ぶ。

買うにしても余剰資金で、冷徹に王道機種・年代を選ぶべき。ストラト・レスポールが安牌。パーツ交換がなく、塗装状態もきれいなことが前提。最低でもフレットナット交換まで。

安く買う努力を忘れない。同程度のコンデションでも店によって100万近く違うことも稀によくある。特に最近は相場を無視している店も多い。

売るときは委託販売。

上のほうが状態良いのに、下の方が高い。
出典:デジマート(https://www.digimart.net/)

値段の決まり方

アメリカの実売価格ベースで決まる
(実売価格USD+送料USD)×為替に税金を足したものが仕入れ価格
仕入れ価格×1.5ぐらいが店頭価格のイメージ。
同じ機種なら基本的に古い年代ほど高い。レスポールは別。

カスタムカラーは上乗せ。キャンディアップルレッド・オリンピックホワイト・ブロンド・レイクプラシッドブルーはカスタムカラー二軍で1.3倍ぐらい。その他のカラーは1.5倍〜レア度によって決まる。

60年代のストラトのカラー比率
(https://reverb.com/news/the-vintage-strat-market-by-the-numbers)
カスタムカラー 二軍
カスタムカラー 一軍

キレイなものからの減点方式で最終的な値段が決まる。フレットナットで80%、パーツ交換や塗装ダメージで70%、リフィニッシュで半額ぐらい。ここらへんは店によって見解が分かれる。

リペア内容とか〜なり大雑把な減点率イメージ

基本的な鑑定スキル

フルオリジナルと説明されても信用してはいけない。だれも保証できない。

ブラックライト

必須。タッチアップやリペア痕を見抜ける。オーバーラッカーもこの作業で発覚することが多い。光量の強いやつを持っていく。自分はこれ使ってる(アフィとかないよ)念を入れるときには普通のLEDライトも。違うニュアンスで視えてくる。

ニコイチ

ネックとボディの接着面に整合性があるか。ネックジョイントプレートとボディに整合性があるか。年代ずれも多々あって、「Fenderは適当ですから〜」みたいに説明されることあるけど、売るときに買い叩かれる材料になる。


整合性の取れている例。ボディの塗装やシムの跡が一致する
この写真を見た後に上のTweetを見ると、、

はんだやり直し

ハンダヴァージン?信用するな。いくらでも偽装できる。あくまでも参考程度に。「気を使って運用されてきた個体なんだな」ぐらいの認識にとどめておいたほうが吉。

オーバーラッカー

塗装が荒れているビートアップな個体は、ほぼオーバーラッカーと考えて過言ではない。ヘッドトップのみオーバーラッカーというパターンもある。

あとウェザーチェックに層がある場合(縦に入ったチェックと横に入ったチェックが交錯している)もある。

音に影響がない薄さの場合もあるけど「オーバーラッカーがなければもっと音がよいのでは」という疑念が生まれてしまうので、おすすめしない。

ヘッドトップだけオーバーラッカーの例。本来デカールは完成の段階で貼られるが、画像ではデカールの上にクラックが走っているため、オーバーラッカーと判断。

リフィニッシュ


塗装ハンドル痕、治具痕、ネジ穴への塗装の侵入具合、他個体との質感の違い、アンダーコートの具合等で見定める。リフを買う場合、そもそもボディが他社製というのもあり得る。だから安い。

同じスラブ期だけど左はリフィニッシュ
下地の黄色の隠蔽力やトップコートのニュアンス等全然違う


ファクリフなら再塗装作業の通し番号が入ってる。

ファクリフの刻印 ネックにも同番号が入る(出典 guitarhq.com)


ケース年代違い

許容できる場合とできない場合がある。
60年代中盤までケースは別売りだったので、例えば63年にブラウンケース(赤い内装)がついていてもおかしくない。61年でロゴ無しブラックケースは許容できない。

指板修正

指板の残り=楽器の寿命という面もあるので、なるべく指板修正されていない個体を薦める。ネックの反りを指板で吸収しているパターンもあるので、1F付近と21F付近の指板の厚みを両側から確認するとよい。

あとスラブ指板を平らにしてるパターンもある。弾く分には嬉しいけど、売る時買い叩かれる。

フレットがオリジナルなら指板修正はないし、フレット交換されていても1F側と21F側のドットマーカーの色に違いがないなら、指板修正されていない可能性がある。

トラスロッド

なるべく回されていない個体を優先する。リリーフのちょっとした調整ができるぐらいがベター。締め込んでいる個体はネック強度が怪しい。最終的に指板を削って対応する必要が出てきてしまうので、それはそれでリスク。
逆ゾリはNG。一生悩む


有料部分の概要


ここから先は有料設定にしてみた。安く買う方法を紹介しているので、これから楽器を買う人からしたらお得過ぎる内容。あとおすすめのお店も書いておいた。しばらく1000円にしておく。

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