千二百文字小説(10/4)
僕には嫌いな人がいる。それは自分だ。
バスの通勤に覗くインスタグラムのストーリー。約30秒経つと切り替わり左端をタップしてもう一度見る。
周りの人たちはみんな自分を着飾っている。誰と行った場所?仲の良い友達?美味しいご飯を食べた?それっていいよね。素敵で綺麗で、例え偽りだったとしても素敵さは変わらない。
画面越しの白い君はいつも笑っている。自分にはそんな輝きがない。誇れることも、仲のいい友達もできない。もし美味しいご飯を食べたとして、僕は誰かに伝えることもできない。
暗い気持ちになる。ああ、ポジティブに考えられていた頃が懐かしくなる。 あの子に好きだって伝えられたらどれだけ楽か。って言えたらどれだけ楽か。あの子のことが好きだって言える自信すらない。究極の中途半端にはもう飽き飽きする。でも変われない。
僕はエゴイスト、詐欺師、横着者。今日はこんなことを思い出したよ。
あの人も、あの人も、あの人も好きだ。一体誰を好きになればいいの?「一人に絞れ」
「失礼だな、相手に謝れ」
「相手が可哀想だとは思わないのか?」
「悩んでいる時点でその人たちは好きじゃない、そうでしょ?」
何も言い返せなかった。その通りだと思ったから。
好きになれる勇気すらないのに、相手に近づこうとして中途半端で自分に言い訳して、いつの間にか逃げてきている。いつまでも逃げ腰だった。
僕はクズなんだと確信してしまった。納得してしまった。
飛んだ横着者だ。
・他の人に奪われたくないか
・触れてみたいか
・その人と一緒にいて楽しいか、落ち着くか
・その人の誕生日を祝いたいか
・あっていない時に寂しいと感じるか
・楽しかった思い出を振り返ることがあるか
えとせとら。
頭に流れてくる。文字で当てはまっていて心で当てはまらない僕の好きは一体なんなのだろうか。
なぜか、僕は自分の嫌いなところをリストアップしてた。
「こんなにもたくさんあったんだ」
嫌いなところがあることは知っていた。でも、改めて目で見てみると、酷である。
でも、知ることができた。驚きがあった。それは確かなんだ。ああ、これだけで十分なんだと思う。嫌いなことをちょっとでも好きになろうとしなくていいんだって思う。よく聞くし。
でも、結局はこんなにたくさん頭で考えたことなんて意味はない。本当に意味はない。悪化するけど元に戻るし、安心するけどちゃんと悪化する。
人は難しいように見えて簡単な生き物だって割り切ったほうがわかりやすい。
最後に心のピースがハマる時がいずれくる。その時がきたら、心は嘘みたいに晴れる。もちろん霧が完全に晴れることはない。でも、重みは変わる。
僕の場合は、ある人に「君ならできるよって」言われたことがきっかけだった。嬉しかった。心の炭酸が湧き出てくるようだった。
自信があるとか、自分を愛せているだとか、どうでも良くなった。
そんな簡単なことだったんだ。
タイトル『意味の意味は無意味』
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