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千二百文字小説(10/15)
月光がフローリングなどに冷たいを与えている。
デジタル時計はひたすらに3を示していた。4では無かったことにほっとしたが、私には少なくとも一握りの恐怖を感じさせた。
「まだ3時か」
せめて4時44分であればよかった。1秒をひたすらに数えて、学校に行く時間まであと4時間27分だと絶望する。
さっきからずっと約30秒ごとに時計と窓を交互に見ている。しかしついに私は痺れを切らして、部屋を抜け出す。
それぐらい重たい頭を抱える。鐘の低い音がする。階段を降りて、踊り場で横になる。冷たい。
熱だけが私を置いて床に吸収されていく。ぼやぼや視界、毛先ゆらり私。
冷蔵庫の前に立ってやっとまともに止まった。いやまだ揺れてる気がする。船酔いに近い。
「冷蔵庫の中にはたくさんのアイスがあったわ。バケツみたいなのに入っているやつ」
私は冷蔵庫を空けっぱにして、その前で涼みながらアイスを食べた。素手で食べた。手に運ばれてくるのは溶けたバニラほとんどチョコチップ。でも、すぐに固まった状態で食べることができるようになった。
私の手は冷たく、赤く、さらに赤く、色は変色して、茄子色になった。
寒いよ。
私は16時49分32.43333..秒に教室で発狂した。
ちょっと前に男の子から「キモい」と言われた。ただ近づきたかった、それだけだったのに。
「いきなり距離を詰められてびっくりした」
「怖かった」
「誰かの僕の噂なんてしないで、僕は僕の耳で直接聞いたことしか信じないから」
「どうしてそんなに無愛想なの?」
ただヤキモチを焼いている姿を見てほしかたっただけだった。あれもこれも嘘。
100回付き合ったことがあるなんてのも嘘。本当は全然ちゃんと付き合ったことなんてない。
まー、あー、んー、友達以上恋人未満?
でも本当の私は絶対に、絶対に、見せられない。怖いのよ。本当の愛って一体どんな……?
偽りの私の夢は私自身に嘘偽りのない愛を伝えることだ。でもそんなことは不可能。矛盾しているし。そう、本当の愛を知らない。でも嘘ばかりついている私に本当の愛を手に入れる日なんてこない。私の嘘はそう。全て私の理想だから。
でも確かにいる。嘘に隠れた私は心の中で確かに助けてと叫んでいる。
眠れない夜に不安定な私も、嘘つきな私もいる。日々のストレスで押しつぶされそうになって、絶望して、耐えられなくなる。
「あえて本音は避けておく。この言葉たちは私が特別に話したこと、本当は秘密だからね。まあ、こんな話を急にされたって、訳がわからないよね。でも約束は守って。秘密だよ」
ずっと考えているだけじゃダメだ。どっちつかずでうまく行かな日があったっていい。それも私だからいいじゃない。ええ、私は。
「ずっと私は嘘に守られてきた。でももう十分なのかも」
「愛は怖いものだと思ってた。でも、本当はずっとそこにあったのかもしれない。ただ、私が目を閉じていただけ」
タイトル『素直になれない』