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千二百文字小説(10/14)

 僕は腹がたった。この退屈な世界に。

 何をしようにもやる気が出ない。一番になるために準備を始めたいのに、一向に始められない。簡単に後悔してしまうことを想像できるのに、なのに、僕の体は一向に動こうとしない。

 意味のわからない退屈が永遠と続く。何か面白いこと起こんないかな。ああ、矛盾している。さっきから一歩も動いていない僕の元に一体何が起こるというのだろう。

 他人任せなことを言えば、誰かに一発ぶん殴られれば少しはやる気が出るかもしれない。はたまた、いきなりすぐ横で勉強会でも開かれたら勉強をせざる終えない空気になってやれるかもしれない。でも、そうはならない、それら全ては僕が動かなければ始まらないからだ。まるで頭と腕と足が鎖で繋がっているようだ。どうしてやる気が出ないんだ。

 急に、何かにムカついてきた。どこの誰だよ。僕にぐーたらの魔法かけたの。表にでろ、僕から一発ぶん殴ってやる。そしてこう言うんだ。

「時間を返せ」

 一人で何考えてんだろ。カッコ悪い。僕に魔法をかけたやつの手の中で踊らされているようで、さらに癪で、腹が立ってきた。

 すると僕はよっと言って起き上がった。そしてへへと笑う。お前に勝った。意外とあっさりしている。

 机に着いたのはいいものの、僕が作るものはどれもゴミばかりだ……自信無くすわ。もう何も作りたくない。ゴミしか生み出せない僕になんの価値があるっていうんだ。そしてこの時間になんの意味があるんだ。退屈だ。でも作ることを諦めたばかりなんだ。

 願うなら、一回でもいいから僕の作品をべた褒めしてほしい。そしたらその後、僕の創作で面白くない所たくさん言ってくれていいから。そして作り直した努力の分だけまた褒めてほしい。

 でもそんなこと起こるはずがない。なぜならまだ何も完成していないのだから。いつまでも作る気になれない。何も出来上がっていない机を見るのが怖い。だから机の前に座るのだって嫌だ。

 また、見えない何かにムカついてきた。どこの誰だよ。僕にやりもしないのに怖くなってしまう魔法かけたの。僕がお前をゴミ箱に入れてやる。だが、悲しいことに、それは僕自身だった。どっちつかずで、矛盾ばっかで、どうしようもない僕のことが嫌いなんだ。

 あ、そういうことか。僕は唐突に理解した。喉に引っかかって飲み込めなかったことが腹の底に落ちた。僕が自分自身を嫌う分、理想も膨れ上がっていったんだ。

 僕は、一番になりたい。たくさんの人に信用されるようなヒーローになりたい。こんな彼女と付き合ってみたい。活発な子で、優しくて、笑顔が可愛い子……。

 理想が大きければ大きい分、それが叶わない今の自分が醜くて哀れで、いじめてしまう。嫌っていたのはずっと自分自身だったんだ。

 大好きだよ。今までありがとう。今までの君が今の僕を作っていて、これからを作っていく。

 こんな僕でもいいじゃん。結構ナイスガイかも。


タイトル『パーフェクト・アイディア』


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