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[連載短編小説]『ドァーター』第十六章

※この小説は第十六章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひ読んでください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすくしてあります。


_________登場人物紹介_________

茎崎二十二くきざきにそじ……今作、ドァーターの主人公。
茎崎乙枝くきざきおとえ……二十二の実の娘。茎崎家の長女。
茎崎巴枝くきざきともえ……二十二の実の娘。茎崎家の末っ子。
茎崎鏡花くきざききょうか……二十二の妻。

_________本編_________

第十六章 あなたの

 静寂が降ってきた。

 誰も彼もいきなり笑い出した僕を気持ち悪がって、ついには逃げて行ってしまった。そこには恐怖はない、ただ気色が悪くて、僕を見たくないのだ。僕がどれだけ、醜く非道な悪魔なのか気がついたようだった。僕は腕を広げて道路の真ん中で倒れている。青い空に、大きな雲が見えた。日差しはちょうど雲に隠れていて、視界には入らない。ちょっとだけ傷ついてしまった。僕は本当に化け物になったんだなと改めて自覚させられた。

「あー、解毒薬渡せなくなってしまった」失敗した。もうどうしようも、信用がなくなった僕に街の人たち1300万人を救うことはできない。解毒薬をすでに飲んでしまった人は辛いだろうな。僕は犯罪者だから、真っ当な善人にはなれない。その時だった。

「あら、二十二。もう詰みなの?」頭をやっとの思いで上げて見ると、そこには一葉が立っていた。

「何しに来たんだ?助けてくれるなら大歓迎だぞ」

 冗談で言ったつもりだった。しかし、彼女からとんでもない言葉が返ってくる。「いいよ?」彼女の髪がサラサラと靡いている。「え――?」僕は意表をつかれて、体が痛くても飛び起きた。

「無料で助けてあげるよ」彼女は素朴な表情で言った。「な、何が狙いだ」一葉のことだ、何か、言葉の罠があるはず。「別に何もないよ。好きな人を助けたくなるのは当然だと思わない?」一葉は首を傾げて言った。「まあ、確かにそうだが……」

「じゃあ終わりー」彼女はトランシーバを取り出し、終了を伝えた。すると、あっという間に、解毒薬は運搬され、1300万人全員を救うことができた。

 まさかこんな終わり方は予想もしていなかった。簡単に始まって、簡単に終わった。最初から僕を助けるつもりだったような気すらしてしまう。何もかも、意味がなかったような気がしてしまう。

 事件は幕を閉じた。それから一葉はよく僕の家に来た。そして僕は自然と一葉の機嫌をとるようになった。彼女の不満を無くし、お願いを遂行していれば、街の人たちが苦しむことはないと考えたからだ。しかし、何度かまた街が破壊されかけたり、乙枝が殺されそうになった。

「スーパーに行ったら、冷たい態度取られた!」や、「さっき二十二、乙枝と話しをしに行っていたでしょ!この浮気者!」など、メチャクチャな理由がほとんどだ。

 僕の心はついに限界に到達しそうであった。何度も降りかかる無茶振りに全て答え、絶体絶命の危機に瀕した街を必死に守らないといけない。つまり、必死に一葉を説得しないといけない。このループが永遠と続く。僕は自由を再び奪われた。部屋の中に水が浸水してきて、溺れているような感覚に陥る。

 僕は彼女を地獄に堕とそうと思う。僕の腹の底で黒い何かがうごめくようだ。

「お前のことが大嫌いだ」僕は一葉にそう伝えた。一葉はこれから不安定になって、暴れ狂い、街を破壊し尽くさんとするだろう。でもそれが狙いだ、あえて不安定にすることで、一葉の異常なほど繊細な思考を掻い潜る。そして、彼女に最後を告げるのだ。

 のはずだった。彼女から返ってきた言葉は予想外だった。

「知ってるよ。どうやらやっと私を殺す決心がついたみたいだね」彼女は冷たい表情を僕に向けた。「でも、本当にいいの?私はあなたにとって大切なムスメだよ?」

「え――どういう意味だ」

 一葉が隠し続けてきたこと、そして妻の鏡花がずっと秘密にしてきたことが、ついに明らかになろうとしていた。そしてこの真実によって、娘たちのイメージが180度変わってしまう。

 ついに、あの地獄のような、事件の真相が告げられる、その真実を僕はまだ知らない。

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最後まで読んでくれてありがとう!

_________お詫び_________

前回のドァーター第十五章ですが、昨日のうちに投稿できていなかったことをこの場を借りて謝罪申し上げます。本当にすみません😢
ルールに従い、今日中に5作品執筆し、投稿したいと思います。🙇

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