「No title」
大好きな彼に呼び出され、待ち合わせのお店の個室。
彼の顔がさすからいつも個室だ。
「悪い、遅くなった」
『ううん、大丈夫』
「めちゃくちゃ忙しくてさ」
『そんなに忙しいなら別の日でよかったのに』
……と言いつつ、私のために時間を空けてくれるのが嬉しい。
「で、今度はなに?浮気でもされた?」
『あー、アタリ』
彼が大好きで仕方ない。
気持ちを伝えて振られて会えなくなってしまうくらいならといつも別の人と付き合っては別れ、を繰り返しているこじらせ女子なのだ。
「男見る目ないんだよ、お前」
『そうかなぁ』
彼じゃないなら誰でもいいと思ってるからだろう。
「マジで真剣に男選んでるわけ?」
『一応…』
「付き合ってって言われてすぐ付き合うからだろ。たまには自分から好きになった男と付き合えよ」
そんなの、分かってるんだけど。
『……分かってるけどさ』
一番好きな人とは付き合えないもん。
無理でしょ?剛典は。
『……でももう別れたから』
別れてって言ったらあっさりしたものだった。
「〇〇って、本当に俺のこと好きだった?」って。
結局毎回言われるのがその言葉。
当然だと思う。
だって、私が一番好きなのは剛典なんだから。
「それがいいな」
『しばらくは誰とも付き合うの、やめようかな』
「極端すぎるだろ(笑)自分から好きになった男と付き合えって俺は言ってんの」
『分かってるよ』
でも私は一番好きな人とは結ばれない運命なんだもん。
「分かってねぇわ、全然(笑)」
『分かってるってば』
絶対私とじゃ無理なくせに、無理なこと言わないでよ。
私が好きだって言ったらきっと引くくせに。
『そういう剛典だって、女の子と長続きしないくせに』
「そうだよ。だから俺も自分から好きになった女としか付き合わないって決めたんだよ」
『いつ決めたのよ』
「さっきだよ」
さっきって(笑)
「だからお前は俺と付き合えよ」
は?
え?
え?
ねぇ、それって…
「お前だって、俺じゃなきゃダメだろ」