five realities 〜統合〜 (11)
この地は有数の別荘地で
観光をなりわいにしている
緊急事態宣言
第二波
観光客の収益が望めない今
地元のお客様で賑わっていた
店は好評だった
連日満席で深夜まで仕込みに追われていた
元々装飾に興味がなく
なにも無い方が清掃も楽
飲食店としては
最低限の装飾しかない
殺風景だと
お客様が油絵を持ち込んだ
海に漂う二艘の船
背景にはワールドセンタービル
2001年に崩壊した
ツインタワーが描かれていた
絵画を飾りしばらくすると
オープン当初から
ご来店いただいていたご夫妻が
久しぶりにお越しくださった
ユミさんから貰ったの
この絵は私たちが
ニューヨークに赴任中
友人からもらい受けた絵なのよ
ユミさんの所では眠っていたでしょう
ここに飾られる為にきたのね
それからは
調理器具や鉢植え
必要な物が必要な時に手に入る
そんな事象が起き始めた
物質的な事だけではなかった
必要な時に助けてくれる人が来店する
機械の扱いが苦手な私にとって
SNS配信を思いつくはずもなかった
お店のPRを考え配信の仕方を教わる
インスタグラム
フェイスブック
自分を表現する場を与えられた私は
お店のPRだけではなく
感じた素敵や楽しいを配信していった
どんどんフォロワーが増えていく
配信を見ての問い合わせや
会いたくなったと
ご来店いただくお客様も増えた
孤立無援のこの地で
繋がりが拡がっていく
楽しいやワクワクが増えていく
でもね…
こんなに頑張っても
彼には会えない
なぜなの