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「今日も綺麗だね」にいつまで笑顔で答え続けなければいけない?

インターン先のビルのエントランスで、いつも私に声をかけてくる年寄りの清掃員がいる。

いつも綺麗だ、綺麗だ、綺麗だと、外見を褒めるようなことばかりだったから、まぁそんなこともあると許し続けていたけど、遂に私の働いている会社名や、デスクの場所などを特定し始めてきて、正直毎朝泣きそうなくらいキツい。

強気に出られればいいけど、車内で顔と胸を交互にジロジロ見てくるおっさんとは訳が違う。
会社の人がいるのだ。
それも、私は就活生なのだ。
ここで強気に出て、何か性格に難ありだと見做されたらたまらない。いや、難はあるけどさ。そういうの隠してやってるからさ。
気にしなければいいんだけど、正直ちょっと無理だ。キモすぎる。

あのクソジジイには、悪意がないから余計にしんどい。
ニタニタセクハラしてきたり、外回りで強制的に私を助手席に乗せようとしてくる男とか、個人的なアプローチを社内チャットでしてくるような会社の男とは違う(これで欧州が本社の外資系なんだから終わりである)。
立場を利用しようとか、個人的に親しくなろうとかではなくて、立場なら私の方が利用者だから上だし、多分単純に私の容姿や愛想の良さに好感を持っていて、それで本人すら気が付かないほど歪な方法でそれを伝えてしまっているだけだから、しんどい。
同じビルに通うのはもう一月もないくらいだし、我慢するしか方法はないのだけど。

ニコニコ愛想よく「えー💦ありがとうございます💦」とかするたびに、女の子たちごめんねといつも思っている。
だって、私は私の社会的な栄光のために、罪のない他の女の子が同じ目にあっていく連鎖を断ち切る機会を見逃し続けている。
私だって上の世代の女性が断ち切ってくれなかった苦しみの犠牲者だから、別に上の世代を恨むでも下の世代に申し訳なさを感じるでもないんだけどね。
私は男も女も嫌いだけど、その人の人格の素晴らしさや優秀さではどうしようもできない女ゆえの苦しみや、また男ゆえの悲しみというのは世界からなくなればいいとは思っているから、そこには心を寄せざるを得ない。
私が嫌いなのは馬鹿男と馬鹿女だから。

いつも言ってるみたいに、私は女も、性も、美貌も、若さも、なんだろうと全て使ってのしあがると決めているけど、それは、私の全てが性と同じくらい汚いものだからである。
この学歴だって、汚い金がなければ学費が払えず手に入ることはなかった。「人として」アウトなことをしなければ生きてこられなかった。この頭の良さだって、虐待の果てに得たものだし、言ってしまえば、この命そのものこそ汚い男の精子から生まれてきたのである。
私はすでに汚れ切った体だから、女出そうが枕しようがもうこれ以上汚れることはない。そういう、うらぶれたなげやりな気持ちが、私を強く見せているだけの話だ。
私がここで、「女としてではなく、人として見てほしい!」「女として見てくるやつは許さない!」と心のままに声を上げることは、何より「人として」汚れ切った私自身の否定になるから、それはできないのだ。

でもねー、やっぱり本当はとてもしんどい。
どこまでいっても、「綺麗だね」とか「かわいいね」は、やっぱり暴言以外のなにものでもない。
どれだけ覚悟しようと、慣れようと、やっぱ痛いもんは痛い。

褒められてるんだからいいとかじゃない。
褒められてようが貶されてようが関係ないよね。
理想論すぎるとは思うけど、能力だけを見られるべき職場とか、人格だけが見られるべき人間関係で、容姿に言及すること自体が下品で仕方がないじゃん。

たとえればさ、取引先やお得意様に対して「胸でけー‼️‼️‼️」とか言う?
同じなんだよ。
私はただ実力で掴み取ったステージで、業界や将来への理解を深めるために、夏休みの楽しい思い出全部放棄して、ボロボロになりながら働いてる。
それなのに、毎朝、下卑た男から、なんの悪気もなしに、「胸でけー‼️‼️www」されてるのだ。
マジでつらいし、運良くこの業界最大手の企業にこのまま拾ってもらえたとしても、転職するまで「胸でけー‼️‼️‼️」され続けることがほぼ確定している。

仕事は楽しいし、オフィスには尊敬できる女性も男性も沢山いる。
この業界は天職だと思う。
私はバッドエンドから始まって、逆境の中で歪な力で生き抜いてきた人間だから、世界の困難や係争で利益が最大化する、このダイナミックでギャンブラーな業界をもはや愛しそうになっている。

だからこそ、私は明日も「今日も綺麗だね」もとい「胸でけー‼️‼️‼️」に笑顔で応え続けなければいけない。

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