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頑固な父とのんびり屋の母
父が食道癌を患った。
ステージは軽いが、リンパにも転移しているみたい。
ちょうど、胃と食道の吻合部なので
手術も難しいらしい。
内視鏡検査ではやっぱり難しく、結局手術をした。
手術の次日はICUにいたらしいが、
すっかり元気になったみたいで、
いつ面会に行っても顔色は良かった。
父は多動症だ。(きっと重度の)
そんな父の面倒をみれるのは、
急かされても知らんふりの母だけ。
そして、母は家族の中でものんびり屋だ。
父の手術が終わり、仕事に復帰するまで20日間。
実家では父と母の2人きりだ。
最近、母に電話すると
後ろでずっと姪っ子と甥っ子のはしゃぎ声が聞こえる。
「あれ、みんな遊びに来てるの?」
『ううん、私が遊びに来たの。』
「そうなんだ、お父さんは?」
『しらなーい』
ふうん。まあ、退院日は元気だったし
ラインも返事が来るし、大丈夫だね。
そう思っていたんだけど。
多動症な父、することがない父、商売人の父、
体力がある割に制限がかかっている父。
すぐに畑に行こうとする。
それを母が止める。
初めは大人しかったみたいだけど
もう大丈夫だから!と。
手術終わり、障害として嘔気が残る。
体重はマイナス8キロ。
母は、看護師である私に、父の手術前から
どんな食べ物が良いか沢山質問していた。
栄養価を気にして作るコーンスープ、
口当たりの良いおじや。
料理が苦手な母が、
キッチンを荒らしている様子が浮かぶ。
それでも頑固な父。
味がしない、と言い放し、
父は母のご飯をあまり食べなかったらしい。
『自分で作ってくれるからまあいいけど』
と発する母の寂しげな言葉が胸に刺さる。
大きな、大きな一軒家に2人きり。
腹を立てたところをあまり見たことがない
のんびり屋な母が、
『もう、あの性格は治らん。元々やったんやろうけど、
頑固すぎる。なんせ癌やから。
病気って人を変えるもんやな。』
と、電話越しで速射砲のように話していた。珍しい。
でも分かるよ。
父にではなく、病気に腹を立てていたんだよね。
うまくいってないのは、私たち子供が親離れしただけ。
寂しいだけ。早く治るよ。大丈夫。
お母さん、お父さんは元々本当に頑固だよ、、
年末みんなで帰るからね。